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第9話 管理

3/19 誤字修正しました

 見えない壁を砕いたという確かな感触。

 が……『よしこれで』とそう思ったのも束の間、がくんと身体から力が抜けていき、思わず膝をついちまう。


「……っはぁ、はぁ!! ……クソっ! ここで時間切れかよ……!」


 思った以上に消耗が激しい……!

 考えてみりゃあ、俺とまったく同じ力をもった奴とばかすか撃ち合ったようなもんだ、こうなっても何ら不思議はねぇが……!


 だがまだだ……!

 まだこのまま倒れちまうわけにはいかねぇ……!


 ……だってのに、なんで動かねぇんだこの体は……!!

 霞んでいく目に映るのは、一歩づつこっちへと近づいてくるメイズ。


 膝をついたまま、せめて形だけでもと体制を整える。

 落ち着け……! 少しでも時間を稼ぎながら呼吸を整えろ……!

 焦る俺とは裏腹に、メイズはそのままゆっくりと俺の頭へ手を伸ばし――。




「……よくがんばりましたね、えらいですよ。いいこいいこ」


「……………………は?」




 ……と、まるで子供をあやすように頭をなでてきた。

 そしてその瞬間、あれほどダメージを受けていた体が嘘のように、ふわり軽くなっていく。


 ……いかん、頭が追い付いてないぞ。

 とりあえず――。


「…………あーっと、こいつはつまりその……どういうことだ? これも管理の一環とかそういう……」


「ふふ、いいえ。そもそも……管理とは強制であってはならない。管理とは押し付けであってはならない。そして管理とは……支配であってはならないのです」


「……! ひょっとして――」




「おっちゃーん!!!」

「おじさまー!!!」

「にゃふー! オジサーン!!!」


「――のごぉ!!!??」


 湧いた疑問をメイズへ問いかけようとまさにその瞬間、飛びかかってくる三人を受け止めきれず、そのまま下敷きになるように倒れこんでしまう。


 ……いや前にもあったぞこんなん!


「お、おっちゃん大丈夫か……? い、痛いとことか、く、苦しいところとかはないか……? もしあるならスライムを……」


「……つい今しがた傷みが増えたところで、現在進行形で苦しい思いをしているところだ……」


「えぇ!? どこが痛いんですかおじさま……!? ハクがたくさんなでなでしてあげますからね……!?」


 いやまぁなんつーか……。

 ……はぁ、まぁいいか。俺が心配をかけちまったせいってのもあるからな。


「よっと……! とりあえずま、全員無事みたいだな?」


「あぁ、私たちは大丈夫だ。……イルヴィスも、無事でよかった、本当に……」


「悪かったな、心配させちまって。……しかしあれだぜ? ちょっとばかり気恥ずかしい上に月並みな言葉になっちまうが……最後の一撃はなんつーかこう、『お前らの力が湧いてくるぜ!』みたいな感じになってな?」


「え? おじさまそれって……」


「いや、小説だったり物語の中だったりじゃあよく聞く話だがよ、ホントにあるもんなんだなぁ、ああいうのってのは……」


「にゃー? ひょっとしてオジサン……」


先程のあれ(・・・・・)に、気付いていなかったのか?」


 ……ん?

 さっきのあれ? っつーと……。





「――たとえどれだけ正しい法を敷いたとしても、たとえどれだけ正しい道を説いたとしても……それそのもの(・・・・・・)だけでは単なる言葉の羅列にすぎず、何の意味もありません」


「! メイズ……?」


「『規律』というものは人々が順守すると誓うことによって、初めてその意味を持ちます。そしてそれは自分のためだけでも、誰かのためだけでもない……自分も他人も尊重し、共に生きていくという『結束』の証なのです」


「結束の、証……」


「そして――そうやって結ばれた絆が折り重り、より良き未来へとむかって、大きな一つの道を築いていく。それが規律の……『管理』のあるべき姿だと、私は思っています」


 この感じ……以前にも覚えがある。

 そういえば、この白い部屋も見ようによっちゃああの時(・・・)の……。


「傷つくことも、その覚悟をも尊重し、お互いがお互いを本当の意味で信頼し合う、強い『結束』の意思。……だからイルヴィスさん、それ(・・)は貴方に力を貸したのです」


 メイズがそう口にした瞬間、どこからともなく飛んできた俺の冒険者カードが、レベルクレストの上でくるくると回り始める。



「――強い信頼で結ばれた者たちが、共に一つの道を歩まんとする時……その《覚悟の分》だけ、皆の力を束ねることができる」



 そして……あの時と同じように、カードに文字が刻まれていき――。



「それが私……戦女神ジエム(・・・・・・)の《結束と管理の恩恵(ギフト)》――」




「『アルティメット一致団結』……!」




 俺がそう読み上げるとすぐ、まるで『すでに役目は終えている』とでも言わんばかりに刻まれた文字が消えていく。

 『ウルトラ相思相愛』の時もそうだったが、あくまでも一時的な力で――。


「……って、うええぇ!!? 今メイズさん自分のこと『ジエムさまだ』って言わなかった!?」


「はい言いましたよ」


「え、軽い……あれ!? そういうもの!? そういうの言っちゃっていいやつなの!? ボクがおかしいの!?」


「いやまぁ落ち着けって……俺も頭がまだ追いついてないんだからよ」


 あと最近はいろいろありすぎて、ちょっとマヒしちまってる感があるなこれ。


「しかし……この国(シルヴァーネ)の冒険者ギルドのトップが、まさか戦女神サマだったとはねぇ……というか、雰囲気もずいぶん変わって見えるっつーか……」


「おや、先程も申し上げたはずですよ? ――私、演技は得意なんです、と」


 ……………………

 …………

 ……



 その後、俺達は再び一瞬にして、元の住み慣れた部屋へと戻ってきた。

 ……ホントに、女神様ってのは何でもできるんだな。


 さっきのあれ……『リフレクトペイン』だったか?

 あれも『契約の証』である女神の紋章が必要ないっつってたが……。

 そりゃ必要が無ぇはずだよな、だって本人なんだもん。


 『特殊な力をもった友人』ってのも、他の女神のことらしいしよ。

 っつーか……。


「ではハクさん? 指先にほんの少しマナを込めて、先程と同じように作ったこの小さな『リフレクトペイン』をつついてみてください」


「え、あ、はい! えっと……えい!」


 つん。

 ぱきーん。


「あ、ほんとにわれちゃったね?」


 えぇ……?

 おっさんその魔法にアホほど苦しめられたんすけど……。


「にゃふふ、なるほどなるほどー! つまりさっきのアレも、オジサンが『アルティメット一致団結』でウチらの力(・・・・・)……つまり『マナ』を束ねて使えるようになれば、簡単に壊せるように作られてたってことですかなー?」


「その通りです。ですから申し上げたのですよ? 『あなたの力では』この障壁は破れません、と」


 ……いや確かに言ってたけどさぁ。

 あれそういう意味だって捉えらえる奴いる? いないと思うねぇ俺は。


「そんで……お得意の演技まで披露してまで、あー……ジエム様は何が目的だったんです?」


「ふふ、今まで通りで構いませんよ。まずは……試すような真似をして申し訳ありませんでした」


 ぺこりと頭を下げるジエム。

 ……いいのかね、心の中とは言え呼び捨てにしちまっても。



「……私も自身の目で見極める必要があったのです。『スーパー大器晩成』や『夢幻の箱庭』という大きな力を持ち、さらにはエンフォーレリアやリーズシャリオを救った……イルヴィスさん、貴方という人物を」


「おっちゃんを?」


「はい。私達は女神ゆえに、世界を見通す『目』を持っています。いつ、どこで、どんなことが起きているのか、その全てを。……ですが、心の中まで見通すことはできません。ですから……」


「あのような手段をとってでも、イルヴィスの本質(・・)を知る必要があった。……ということか」


「ええ、その通りです。そのうえで私の力……『アルティメット一致団結』を託すに値する人物かどうかを見定めるつもりでした。……とはいえもっと、恨まれてしまうかとも思いましたが……」


「ま、うちの子らはみんな人が良いからなぁ」


 ……しかし私も(・・)ときたか。

 やっぱりあの時の少女は――。


「じゃ、じゃあ……もしおっちゃんが、じ、ジエムさまの提案にのって『勇者』になるって言ってたら……な、なにかされちゃってたのか……?」


「いいえ、その時はそのまま『勇者』として活躍していただくつもりでしたよ。もちろん、むやみに管理下に置いたりなどはしませんでしたが……『アルティメット一致団結』は託さなかったことでしょう」


「しかし託すっつてもよぉ、もう消えちまってるみたいなんだが……」


 改めて冒険者カードをくるくる眺めてみるが、やっぱり恩恵(ギフト)の欄に『アルティメット一致団結』の文字は見当たらない。


「それに……今回は特別な状況だったが、仮に私たちのマナを全て合わせたとしてもイルヴィスの力と比べると……」


「にゃーん、ざんねんだけどー、ちょーっと力不足ってカンジ?」


「今は確かにそうかもしれません。ですが――」

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