第三章 エピローグ
――翌朝。
俺達六人は例の……エンデュケイトが出現した、一部屋だけのダンジョンへと、再びやってきていた。
もちろんここのことは報告するつもりだが、ギルドや衛兵なんかの手が入る前に、いろいろと調べておきたいこともあるしな。
そんなことを考えながら足を踏み入れる。
そこそこの広さがあるとはいえ、それでも一部屋だけのダンジョンだ。
俺の『傾向限界突破』を使いさえすれば、あちこち調べるのにはそれほど苦労はしないだろう。
さて、フリゲイトやエンデュケイトのこと、他にも……『ここに黒い金を集めていた奴』のことなんかが、少しでもなにか分かればいいと思ったんだが……。
……
…………
……………………
「ふーむ……どうにも特に変わったようなはモンは無かったか……」
タンジョンから外に出ると、そんな愚痴の様なセリフが口をつく。
「えと……ここにあったお金も、全部真っ白になっちゃってましたね?」
「こ、硬貨も紙幣も、も、模様なんかが無くなっちゃってたみたいだな……」
まぁそんなワケだ。
収穫がゼロ……とまでは言わんが、決定的とでも言えるような『何か』を見つけることは、残念ながらできなかったってワケだ。
「んにゃ……でもでも手持ちの紙幣なんかを調べてた時には変なところは見当たらなかったしー? やっぱりエンデュケイトの出現には、『汚れたお金』だけが関係してるみたいってカンジ?」
「魔術で繋がってる他の金には影響はないってことだな。とりあえずま、そこが分かっただけでも良しとするか」
欲を言やせめて、ハクが感じたぞわぞわ……つまりフリゲイトが今回の件にどう関わっているかっても知りたかったとこではあるんだがね。
……しかし『汚れた金から生まれた魔物』か。
しかもそいつが『強欲の化身』ってのは、随分と皮肉がきいてる話だぜ?
当たり前の話だが、魔物ってのは普通魔素から生まれてくるからな。
こういった話は過去に聞いたことも無いが……。
……それも、フリゲイトの仕業なのか。
それとも……もしかしたら他の『七大魔王』も同じように、『特殊な条件下』でのみ出現するっつうことで――。
「――あ! イルヴィスさん達、ここにいらしたのですわね!」
「っと、……マッフィーノ? お前こそどうしたよこんなところに」
確かにこの場所のことについては、昨日軽くは話しておいたが……。
「わたくし、皆様のことを探しておりましたの! 今回の……エンデュケイトのことで、改めてお礼をと思いまして……お部屋にはいらっしゃらないようでしたので、あちこち探し回っていたのですわ!」
「あーそいつはわざわざ悪かったな……つーか、礼を言うのは俺たちの方だ。あの蘇生屋たち、マッフィーノが手配してくれたんだってな? ありがとよ……っと」
いかんいかん。
つい、またいつもの調子で、マッフィーノの頭に手を伸ばしそうになっちまった。
どうにも最近、こういったスキンシップに対する抵抗感みたいなもんが薄れちまってるっつーか……。
「――あ、あの? イルヴィスさん? こ、これは……?」
……あ。
どうやら俺の右腕は、無意識のうちにマッフィーノの頭を撫でちまっていたらしい。
「いやすまんマッフィーノ、こいつはなんつーかその……つい癖ってやつでな?」
「もー! またおっちゃんってば他の女の子にも手を出してー!」
「お前も、人聞きの悪い言い方をしてくれるなって、頼むからよ……」
ただでさえ、おっさんの評判はアレなんだぞ?
本当に今回のことで名が知れちまった時……『街を救ったセクハラ野郎』、なんて面白半分に新聞の見出しを飾っちまうようなことでもあれば、おっさんもう街歩けんからね?
「あ、いえ! ……こほん、わたくし不快に思って指摘したわけではありませんのよ? ただちょっとその、びっくりしてしまいまして……どうぞお気になさらないでくださいましね?」
「そうかい? そう言ってもらえるとおっさん、ホント助かるよ……」
いやホント、マジで気をつけねぇとなぁ……。
シズレッタにも払いのけられなかったとはいえ『勝手に撫でるな』って言われちまったし……今回はマッフィーノの寛容さに救われたね。
「……にゃふふ。でもでもー、ほんとーにシズりんたちみーんなが生き返れたのは、マッフィーのおかげですなー?」
「あぁそうだな。しかしあの短時間で、よくあれだけ人数の蘇生屋などを用意できたものだ」
「ふふっ! 実はこういうこともあろうかと、あらかじめ事前の手配などは済ませておいてありましたの!」
「え!? じゃあマッフィーノはエンデュケイトが出てくるって分かってたってこと!?」
いや完全に言葉のあやってやつだろうが……。
だいたい、もし本当にそうなら今回の事件も――。
「――ふふん! えぇ、もちろんその通りですわ!!」
………………は?
急に冷水を浴びせられたように、思考から熱が奪われていく。
『わかっていた』……? そいつはつまり――。
「あ、そうですわ! お礼ついでというわけでは無いのですけれど……この場所なら人目にもつきませんし、皆さまにも見ていただきたいものがありますの!」
そんな混乱する俺をよそに、マッフィーノが胸元のボタンを外し始める。
そして……。
「――っ!? マッフィーノ、そいつは一体……!?」
「うふふ、昨日も申し上げましたでしょう? あれはわたくしの、『冒険者としての目的の一つ』です、と!」
胸元から除く白い肌とは対照的の……真っ黒な宝石。
まるで埋め込まれているかのように存在するそれが、ことさらに不穏さを掻き立ててきやがる。
あの、タールのように暗く黒い色はまるで――!
「イルヴィスさんたちのおかげでとうとう手にすることができましたわ! ――この……『邪君エンデュケイト』を!」
皆さんのおかげで無事、第三章もエピローグを迎えました!
今後の更新……つまり第四章のの予定なども、近いうちに活動報告に上げる予定です!
改めて、ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました!




