番外編 ワールズレコード025:属性
「……ほんで? なんや言い訳があるんなら聞いたるけど?」
「……いやその、ほれ、俺もこっちに帰ってきたのは翌日でな? 向こうを出たのも昼過ぎで、タイミングが無かったっつーか……」
「ほぉ~? イルヴィスさんは電話っちゅう文明の利器があることも知らへんようやねぇ~? それとも~? そのお宿さんには、備え付けの電話なんかもあらへんかったんかなぁ~?」
「いえ、ありました……」
俺の部屋での宅飲みの翌日。
アルティラ達とデルフォレストへ向かう前にと、朝一から冒険者ギルドにおもむき、フーのヤツに小言でつつかれながら事の次第を伝えたりしているんだが……。
なんつーかこう、もう少しね?
もう少しだけ優しくしてくれても、おっさん罰は当たらないと思うんすよ?
「……まったく。確かにギルドを警戒しぃ言うたんもウチやけど、せめてウチにはちゃんと報告せんかい」
「いやホント悪かったって……。その内埋め合わせはするからよ、な?」
「はぁ、まぁええけど。 ……ウチかて、一緒に飲むの楽しみにしてヘんかったわけやあらへんのに、ただでさえ最近は機会も減って……」
「……? 悪ぃ、なんだって?」
「なんでもあらへん! もう……!」
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ワールズレコード025:属性
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「そ、そっか……、あ、アルティラさん達、アンリアットから離れちゃうんだな……」
「ああ、色々とばたついてて挨拶も出来そうにないってんでな、よろしく言っといてくれって頼まれたよ」
マッフィーノから届いた手紙やチケットを確認した後、アルティラの現状なんかを含むその辺のことをうちのヤツらにも伝えておく。
「……おっちゃんやっぱりさみしい? ほらほら、ボクのことぎゅーてしてもいいよ? それとも膝枕させたげよっか?」
「ありがてぇけど気持ちだけもらっとくよ。……つか、なんで俺が膝を提供する側なんだよ、普通逆だろうが」
いや、仮に逆だったとしても絵面的には相当アレだが……。
「あ、それならハクがお膝を貸してあげますね! んしょ……はいおじさまー? ここにあたまをのせてくださいねー?」
ハクがポンポンと膝を叩く。
いやいやいや、そいつはむしろもっとヤバいっつーか……。
「しかし……となればやはり、『フォルフレアの光を浴びればよい』というのはフリゲイトの虚言だったということか……」
「にゃうーん、ざんねーん……。 でもでもー、確かにフォルフレアはつよーい『光』の属性をもってるからねー? そういったモノが解呪に使われることって、実際少なくなかったりするんだけど……」
「っと、そうなのか? 俺は魔術なんかとおんなじで、『属性』とかってのにはあんまり明るくねぇからなぁ」
知識としちゃあ、冒険者をやってく上での必要最低限……ってなぐらいか?
「ぞ、属性学か……。あれは……うん……」
「むしろかるーい気持ちで手を出すとー、大変なことになっちゃうってカンジ?」
「? えと、大変なこと……ですか?」
「にゃっふっふ……ハクちー気になっちゃう? んじゃんじゃ、まずは属性ってものが『どういうものか』は置いておいてー、だいたいどれぐらいの種類が確認されてるかは知っておりますかなー?」
どれくらい、か。考えたことも無かったな。
ふーむ……。
「えっと、『炎』とか『水』とかはよく聞くけど……確か、『大気』や『海』みたいなのもあるんだよね? ひょっとしたら、500種類ぐらいはあるんじゃない?」
「いやいやお前、それは言い過ぎだろー? 俺はせいぜい多くても100……いや、思い切っても200種類ぐらいだと思うがね?」
「しかしトリアの鋭さは時折侮れぬものもあるからな。今回は私もトリアの意見に乗るとしようか」
「えっと、ハクもたくさんあるんじゃないかなって思います! 小説なんかのお話にもいっぱい出てきますし……えへへ、三対一ですねおじさま? 負けませんよー!」
「お、そうかい? そんじゃ俺が勝ったら肩もみでもしてもらおうかね?」
そんな感じで、それぞれが思い思いの意見を並べていく。
「にゃふふ、どーやら意見は出そろいましたなー? それじゃー結果発表の前にー……ネルネル! どらむろーるかもん!」
「うえ……!? えと、ど、どるるるるるるる……」
なんだよその無茶ぶりは。
あーほれ、ネルネのヤツ真っ赤な顔で律儀に応えて――。
「にゃん! 正解はー……なんと! 約26000種類でしたー!」
「え」「え」「え」
……え?
「に、にま……?」
「にゃふふ! 26000、だよー? あ、でもでもー、あくまでも『今判明してるモノ』だけに限った話だけどねー?」
「ふえー……多いんだねぇ……」
「その上さらに増える可能性まであんのかよ……。文字通り桁違いっつーか、どんぐりの背比べもいいとこだったな俺ら……」
「そ、その辺りはやっぱり、ちゃんと学んだりしてる人じゃないと知らないからな……。わ、分かりやすく『炎属性』なんてまとめられてるモノでも、火炎、炎熱、延焼、発火、灼熱、発熱、他にも……」
いや丁寧に並べてくれてるとこ悪いんだがおっさんの脳みそじゃあ覚えきれんぞ……。
そりゃ20000種類も越えてくるはずだわ。
「でもさ、なんでわざわざそんなに細かく分けられてるんだろ? さっきネルネも言ってたけど、『炎属性』ってまとめちゃったらダメなのかな?」
「お話に出てくる精霊さんなんかはそんな感じですけど……でも分けられてるってことは、やっぱりその必要があるってことなんでしょうか?」
「にゃふふ、もっちろん! まず前提としてー、前に魔力の話をした時、『魔素や魔力から生まれた炎は厳密に言えばホンモノの炎とはちょっと違う』、なんてお話をしたでしょー?」
「そういえばそんな話をしていたそうだな。たしか……魔術による性質変化といったか?」
「にゃふー! クーよんそのとーり! んでんで、同じ『火を起こす』って結果にたどり着くのにもいろんな『道』がありましてー。直接魔素や魔力を炎に変化させるだけじゃなく、対象の温度をあげたり、小さな火種を広げたり……」
なるほどなぁ。
つまりその『道』一つ一つが、それぞれ別の『属性』だっつーことか。
「ほ、他にも例えば、も、魔物の肉体なんかも魔素によって作られてるんだけど……。あ、あれも魔素が『肉体構成系』の属性をもつことによって、か、形作られてるんだ……」
「えっと……『おにくー』とか『ほねー』とか『おめめー』とか……そんな感じの属性になってるってコト?」
「う、うん……。まぁ分かりやすく言えば、そ、そんな感じだな……」
ほぉ、つまりおっさんらがダンジョンで採取した素材で旨いモンを食えるのも、全部『属性』のおかげってことか。
いやいや、足を向けて寝られんねホント。
……属性ってヤツがどこかにいればの話だが。
「にゃふふ! よく、特定の属性をもった攻撃を受けると大ダメージ! もしくは逆に、傷や体力なんかを回復しちゃうよ~? なんてカンジの魔物がいるでしょー?」
「あ、ハク知ってます! えと、ゾンビさんみたいな魔物さんには、回復魔法とかが逆効果だって!」
「うむ、有名なところだとサラマンダー系の魔物には炎属性の魔法は吸収されてしまう、などといった話もあるな」
「アレは魔物が魔素から体を構成する際、肉体構成系の属性とは別の属性を同時にもつことで起きる現象なんだよねー?」
「ま、まぁ、厳密に言うともっと複雑になっちゃうから……も、魔物図鑑なんかじゃ『炎属性に弱い』みたいな感じで、ま、まとめられたりしてるけどな……」
「へぇ~、そういうあれこれにもちゃんと理由があったりするんだねぇ」
だなぁ。
「そんなカンジでズバリ! 変化した魔素や魔力が『特殊な法則』を持つことを総称して『属性』って呼ぶんだ・け・どー……?」
「ぞ、属性とよばれる存在の大きな特徴は、もう一つ別のところにある……」
「別のところ?」
「う、うん……。い、今エテリナが『特殊な法則』って言っただろ……? な、なんでそんなふうに言われてるのかというと……ぞ、属性によって起こる現象なんかのほとんどは、物理現象とケンカしないからなんだ……」
「そうそうー! 洞窟みたいなダンジョンの奥なんかでもー、『大気』の属性をもつ空間なら、ちゃーんと呼吸が出来たりねー?」
そういや……その辺も深く考えたこと無かったなぁ。
『ダンジョンだからそういうもんか』ってなぐらいの認識だったわ。
「ぎゃ、逆になんの変哲もない空間に見えても、あ、危ないこともある……。ぞ、俗に言う『ダメージ床』なんてトラップが、わかりやすい例かな……」
あーあれな、見たことある……っつーか踏んじまったこともあるからな……。
つまりあれは床じゃあなくて、実質的には空間自体がトラップになってるってことか。
「ほかにも水の中でも火を起こせちゃったりー、溶岩の中でも平気だったリー、それこそ普通だったら自分の重さで動けないようなおっきい魔物でも、ちゃーんと動いて襲ってくるでしょ?」
「……それを『ちゃんと』っつっていいのかは、一冒険者のおっさんとしちゃ複雑なところだがね」
「しかし……そう考えてみるとエテリナもネルネも、その26000以上の属性の中から適切な組み合わせを見つけ出して、魔法やスキルなどを作っているということか……」
「はわぁ……! エテリナさんもネルネさんもすごいです!」
「え、えっとその……て、照れる……」
「にゃふふ! 調子がギューンってあがってる時だと、パパッと閃いてじゃかじゃかーって作っちゃえることなんかもあるんだけどねー?」
「あ、うん、わかる……。そ、それすごくわかる……」
とまぁそんな感じで、そっち側特有の共感を見せるネルネとエテリナ。
俺がわかることっつったら、以前ネルネが『魔術なんかを一から作るのは大変だ』みたいなことを言ってたが……そいつが大げさな言葉じゃないってことぐらいだねホント。




