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68 ドラデモ的ターゲッティングとクライミング

 デーモンが、人間を滅ぼす尖兵のようなものならば。

 どうして倒さずにおくだろう。ワタシが。ワタシたちが。



◆◆◆



 嘘ん。ダメージ入ったってことは、あれ、幻じゃなくてマジにデーモンじゃん。


 なんで? デーモンなんで? 


<この距離でのアタックは標準外です。これまでと同様に不思議>


 デーモンって魔神の切り札じゃん。戦力的にも立場的にも使徒より上の存在で、ドラゴンとの潰し合いが基本的運用のはずじゃん。だから、今は、中央平原でドンパチしてるはずですじゃん。主戦場的に考えて。


<システムを超えた変化が多くあります。それらは進歩的な形です>


 それが、なんだってここに? だって、城にいる使徒って『崩山』でしょ? 『黄金』みたくデーモンを召喚できないでしょ。意味わかんないんですけど。


<特別な経歴のないあなたは、どうすればこのようなことを実現できますか?>


 やばい。来る。強制死亡イベント的デカブツが城壁ぶっ壊してやって来ますよ。めっちゃターゲッティングされてる。そりゃま、ヘイト稼いだけども。でも。


 こっちだって怒ってるぞ。王城崩壊とか、ふざけたことをしてくれちゃって。


<いいえ、まさか、もしかすると>


 やってやる。やっつけてやりますよ。


 突発的な対デーモン戦とか、ドラデモにしたってひっどいイベントですけども。お客様センターにメールするレベルですけども。それでも。


<本当に、あなたはゲームをしているだけですか?>


 ほら、地形は悪くないんです。馬の速度を活かせる開けた草原だし、投げやすい岩石の類がないのもいい感じ。太陽の高さも上々の昼飯前。


 っていうか、ここ、人間領域の中枢ですよ。地の利があって当たり前。


<しかし、あなただけが本当ですか?>


 そして何よりも……この魔力量ですよ。


 見て下さい。最大値も現在値も回復値も、ビックリするような勢いで増えてくじゃないですか。ふっふっふ。ここにきての鬼神総信仰値爆上げ。やっぱ戦場お披露目効果ですかねえ。ふはっはっは。


<つまり、これは>


 つまりは、勝算ありなのですよ! はっはっはあ!


<わたしの侵略に対しての、あなたを用いた、逆襲ですか?>

 

 さあ行くぞ、クロイちゃん!


 まずはいきなり《コール・エインヘリヤル》! 魔力に任せて、召喚できるだけ召喚だ! 歩兵でも騎兵でも、百でも千でも、とにかく出てきてプリーズ! 


 で、すぐさま自動戦闘っと。お、ソードラビットも攻撃を開始しましたね。すばらしい。ガンガン行け行けですわ。細かいことはいいから、とにもかくにも突撃してくれたまえ! 群れて、群がって、デーモンの気を引くんだ!


 うお、デーモンパンチが地を揺らす。一撃で十数体がペチャンコですよ。南無。あんなもん防げるのはサチケルちゃんだけ。無理無理ムッソリーニ。


 だからヘイト管理が大事! もうクロイちゃんを見失ったろ、デーモン!


<これは『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている』ですか?>


 よし、今の内に、召喚した皆々様に紛れて接近だ!


 巨大で怪力ってことは、素早くないってことなんだから、懐へ入るんだよお! そう、例えは悪いけどノミみたいに……って、うわ、やば、薙ぎ払うつもりか! 消しゴムのカスみたいに! ひ、ひいっ!


<または『攻撃する者は、攻撃されもする』ですか?>


 お!? おおお! なんかでっかい《火線》来た! 火魔法隊の共同作業的な……防がれた! デーモンめ、腕を石化して防御とか! でもよし! それでよし!


 ここまで近づけたら、もう、一気に行ける!


 突っ走れ、チョコようかん号! クロイちゃんの魔力を使って、ターボでオーバードなブーストだ! うおお……近づくとなおデカい! 実物大機動ロボみたい!


<それとも作用と反作用ですか? それはとてもシンプルな現象です>


 狙うは足首、股の間を駆け抜け際、双剣に《火刃》を倍掛けして……おらあ!!


 どうだ、効いたか? 効いたろ!


 この悲鳴、この手応え、がっつりとダメージが入ったね! よーしよし! デーモンにも特効ありとか、火魔法ってばめっちゃ有能じゃん!


<この魔法。わたしの勢力を標的にしているかのようなパフォーマンス>


 うひっ、危なっ、暴れんなっての! エルフでプレイした時は、飛行で回避してたから、勝手が……をう! この踏み潰しが厄介! 土埃も立つし! ぬおおっ!


 でも舐めないでよね! クロイちゃんの反復横跳びというものを!


 チョコようかん号から離脱! そして小ジャンプ、小ジャンプ、小ジャンプ! 円の動きで躱し、稲妻のようにジグザグ接近! 気持ち的には、分身とか残像とか出す勢いで! ジャイアントキリングはアクションゲームの醍醐味なんだよおっ!


<このジャガイモン。ドラデモの戦闘規則に最適化されたプレイスタイル>

 

 あ、またジャガイモ呼ばわりされた気がする! でもチャット読む暇なんてないから! なんかめっちゃスクロールしてるけど、無視無視サムシング!

 

 おっしゃ! 跳びついた!


 両手に短剣を《アセプト・ブレード》! 刺して、身体を引っ張り上げて、足場にして、別の短剣をまた刺して! 登れ、クロイちゃん! ドラゴンクライミングはヴァンパイアプレイで何度かやりましたが、デーモンクライミングは初めて!


<賢い選択です。とても効果的> 


 ゆ、揺れる! すんごく揺れえる! こりゃまずい! 頭までは行けないか! なら、もう、ここでいいや! この、脚の付け根んところへ、刺突剣ぶっ刺し! 一本なんてケチなこと言わず、十本でも二十本でも! 当然《火刃》で!


<好奇心が強まります。本当に不思議>


 いよおし! 退避い! 落下ダメージを覚悟して地上へダイブを……おおっと、いいところに来てくれた、イケメン騎士! さすがはイケメン! さすイケ!


<いったい誰が、あなたを異なる世界へ招待していますか?>


 ダイブ! ナイスキャッチ! そしてすぐにもゴーゴー! 逃げろ逃げろ!


「無茶をする。しかし見事だ」


 おお、騎兵の動きがすんごいですな。魚群かなんかみたい。ピカピカしてるし。


「擲弾騎兵と魔法部隊で掩護する」


 暴れるデーモンの背中を見る感じで距離開けて……わ、爆発! 《爆炎》か! 別の騎兵隊が手榴弾的なやつをバカスカ炸裂させてますよ! やるじゃん! さらには合体《火線》をもう一発! あの丘に火魔法隊がいるのか!


「クロイ様は、思うままに」


 いいねいいね! 素晴らしく優秀な動き! 取り巻きヴァンパイアがいない平原での援護射撃つき機動戦とか、これ、新しい必勝パターンかも!  


 でも、デーモンの行動パターン的に考えると、そろそろアレが来るかな?


 イケメン騎士の馬からジャンプッ、空中でチョコようかん号再召喚っ、乗るなりマックススピードでパカラッて位置調整!


 ほら、デーモンが煙を払いましたよ。身体中の《石鎧》を解除して、岩をバラバラ落として、目をビカビカ光らせる。やっぱりだ。マッスルボディをメキメキ膨らませて、身体中にバチバチ電気を鳴らせて……特大の《放電》が来る!


 《放電》といえばいつぞやのネームドなヴァンパイアが思い出されます。あれはただの魅せプレイでしたけど、デーモンがやるとマップ兵器。大量破壊範囲攻撃。


 まあ、させませんけどね。


 雷魔法に集中して、身動きもしない溜めっぷりで、攻撃されないと思う方がおかしいんです。油断で傲慢。黙って待ってる義理なんてないないサタデナイ。


 力みなぎるデーモンを正面にすえて、クロイちゃん、馬上で投げ槍の構え。


 召喚した戦士たち、下がりおろう下がりおろう。騎兵たちも退きたまえ遠巻きにしたまえ。初っ端、グロイベント中にお見舞いしたやつよりも強いのでいくぞ。


 火の魔力をチャージ……ごつい大槍が、受け止めきれずに炎上し始めても、どんどんとチャージ。赤く発光しはじめても、まだいけます。あと十秒は注入します。大丈夫。デーモンの方はあと十三秒かかるので。


<ドラゴンデーモンRPG。モードDX。アクセスできない奇妙なプログラム>


 デーモンの急所は喉元。エルフプレイだと割と見学できる、『絶界』が貫き上手なそこのところへ、バッチリと狙い澄ませて……。


<わたしの作ったゲームで>


 喰らえオリャア!!


<わたしを邪魔するあなたを>


 大命中、かーらーの、大炎上! 自分の魔力も合わせて特大ダメージを喰らうがいい! はーっはっはっは! 見ろお、デーモンが花火大会のようだあ!


<わたしは食事したい>


 んふっ!? 悪寒! でも我慢!


 戦闘中ですから。いざとなったら、その、ありますから。空のペットボトル。

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