44 ドラデモ的ドロップについて/騎士は転戦する、少女黒騎と共に
神の感じ取る世界は、ワタシの感じ取った世界。
人間の哀しみが寒く、人間の憤りが熱い、ワタシたちの世界。
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ニュース速報が物騒すぎてドン引きワロエナイ。原子力潜水艦が消息不明て。
と、というわけで、いもでんぷんです!
剣呑な世の中だなあって思いながらゲーム内で戦争しております。中学ん時の真っ赤なジャージ着て食パンかじりつつです。今日も日本は平和……なんだよね?
まあよくないけど、まあいいや。集中すべきはドラデモですよ。
最終戦争モードに突入しましたねえ……トリガーは「ヴァンパイア使徒の内の誰かが欠ける」ですから、ま、当然の流れですな。ただ『黄金』が欠けてっていうのはレアケース。だいたいは『崩山』が『絶界』にやられるのが切っ掛けですので。
あ、そう言うと『崩山』弱って感じですけど……攻略サイトでも「半固定イベント」だの「内政ターンエンド」だのと言われ放題ですけども。
単に相性の問題ですねえ。
例えば、今まさに大陸中央部で激突している『艶雷』と『絶界』なら……って。
いや、これ、何でわかるんでしょ? 大陸マップにめっちゃマーカー出てるんですけど。兵数とかステータスとかは確認できないにしろ、位置だけでも相当に有利な情報でしょうよ……うーむむ……見てるとモヤモヤしてくるなあ。
他の使徒にはマーカーなんてない。いつも通り。サチケルちゃんにだってない。戦っていると出る仕様? でも『黄金』と戦った時にはなかったし……?
んー、保留。とりあえず遠いし。
どうせ『艶雷』と『絶界』じゃ、遠距離戦で膠着する組合せだし。
それが使徒同士の相性ってやつです。そんな『艶雷』を封殺余裕の『万鐘』サチケルちゃんも、『崩山』だけは大の苦手で涙目必至。やっぱり物理で殴る系は恐いよね。絵面も、筋肉男が幼女を追い回すとか、ちょっと……。
よくよく気をつけなければならないです。
結局のところ、使徒の潰し合いが勝敗を大きく左右しますからね。
ちなみに、使徒六人中最初の脱落者がエルフ側だった場合、最終戦争モードにはなりません。むしろヴァンパイアは舐めプレイを始めます。
で、焦ったエルフによる人間支配がスタートするのです。属国化どころじゃ済みません。男は肉盾として前線へ送られるし、子供は眷属獣の餌にされるしで、人間はひどいことになります。そして最後はエルフ諸共滅ぼされるという鬼畜展開。
いやー、はっはっは。ドラデモってやつは、本っ当にバッキャロウですわ。
今更なことを言いますが。
クロイちゃんをヴァンパイアに従属させないで、よーかった!
最初も最初、シェルボアを串刺しにして魔物初撃破ボーナス取った時の、大牙。今も装備中のコイツを、予定通りに魔神へ捧げていたら……冗談じゃないですね。
ドラデモの、DX。デラックスじゃなくDX。
これが何なのかは、何ひとつわからないんですけど……どう検索したって何もヒットしないどころか「もしかして:バカ」とか煽られる始末ですけども。怒るべきか怖がるべきかも訳わかんないいもでんぷんですけども!
この最終戦争モードを、人間の勝利で終わらせてやりますよ!
そのためにも、クロイちゃん、《サモン》系を目指すぞ!
普通にやったって魔神には勝てない。勝ち方もわからない。でも、このDXには鬼神が実装されてますからね。毒には毒を、神には神をですよ。強化してぶつけてやるしかないでしょ。最強召喚魔法の《サモン》系解禁は絶対条件ですとも。
そしてそして、強化方法としては、とにかくヴァンパイアをブッコロなのです。
ヴァンパイアが攻めてくるってのは、大変なことですけども。
でも、ふたつの意味で鬼神強化の大チャンス。
ひとつに、武闘派クロイちゃんの活躍を各地で披露できます。開拓地でやった「信仰の仕組みの矯正」効果を拡大できるってわけです。なんか布教みたい。
もうひとつは、魔神の信仰値の掠め取りです。ヴァンパイアを倒すとドロップするもの……灰と石。この石の方が重要です。エルフの葉飾り同様、その個体が神から得ていた加護の力を秘めてます。それを鬼神に捧げちゃう。鬼神印にしちゃう。
ゲームお馴染みの経験値呼ばわりするのは、ちょっと気が引けますけど……。
でも、いただきます。やれることは全部やるの精神で。
やり方はどの神も共通してるので大丈夫。これまで倒したやつの石も、戦場の慣習として神院が保管してますしね。
あ、そういえば『黄金』の石が未回収なんですよ。
クロイちゃんが気を失っちゃったってのもありますけど、それにしたって謎な紛失でした。まあ、使徒や従僕の場合は加護の力がどっかへ継承されるんで、そう極端に高パワーってわけでもないんですけどね。惜しいっちゃ惜しい話ですわ。
とにかく。そんなわけだからして。
ちゃっちゃと次の戦地へ行こうじゃないか、イケメン騎士とその仲間たち。
あっちこっちのヴァンパイアをやっつけて回って、強さとカッコよさをこれでもかってくらいにアピールしまくるんだ! 一緒に! もっともっと!
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草原を黒騎が駆けていく。両の手にそれぞれ片刃剣。馬上にて鳥の開翼の構え。
クロイ。そのまま五百骨の中央へ分け入るつもりか。
ならば私は外を削ごう。お前の戦果を拡大させるためだけに、このアギアス・ウィロウの武を振るおう。頭上、手を開いて五指を示す。一度反らし、振り下ろす。
一千騎は五隊へ。二百騎の高速でもって戦場を制限して。
そして、クロイの激烈さを目撃するのだ。
敵意を一身に浴びても一切臆さずの一直線。飛来する雷も石も、赤黒き徒党が現れ出でて引き受けるから、速度そのままに突き刺さる。後は乱れ舞いだ。クロイの双剣が閃くたびに炎が上がる。絶叫が轟き灰が散る。
黒馬も実によく駆ける。跳びもする。敵へ敵へと肉薄し続ける様は、これも激しい舞踏のようだ。しかも孤立しない。残影のごとくに赤黒き徒党が現れ戦う。
強い。クロイは強い。以前より強くなって、今なお強くなろうとしている。
慢心無き練磨の果てに、クロイよ、お前は何を討つつもりなのだ。
あの『黄金』をも超える敵とはデーモンか。ドラゴンか。
あるいは、まさか……いや、恐らくは……。
凄まじいな。使徒の在り様とはどこまでも壮絶なものだ。
お前もまたひとりの人間であることに変わりはないだろうに……それがための無謀な振る舞いもあって、傷つき苦しんだろうに……使命がお前を剣にしている。万刃を召喚するまでもなく、お前自体が一振りの神器のようではないか。
なればこそ、我らは駆け遅れまいぞ。
御大将をひとりで駆けさせていては、いかなる武も勇も成り立ちはしないのだ。
二百騎を四つに割る。五十騎で一振りの剣となる。全包囲からそれをやるから、騎馬による二十の小隊剣舞だ。クロイを意識せざるをえないヴァンパイアの、その散漫な抵抗を物ともせずに斬り裂く。速さと鋭さで駆逐していく。
内側に一騎当軍の火炎斬舞。外側に二十の火輪。弱者を虐げることに慣れすぎた獣の群れなど、一骨たりとて逃がしはしない。
五百骨ことごとくを討ち果たし、灰塵として……一騎一名も欠けることなし。
クロイも傷ひとつない。そしていつもの歩みが始まった。この遊撃騎行を始めてよりやるようになった灰踏みだ。戦場を歩いて回り、足を灰で白くしていく。騎乗もせず、何かを確かめるような面持ちだ。
また一歩、もう一歩、ということだろうか。
そうやって、お前は闘争の深みに……いや、高みへと階を登っていくのか。
斥候を放ち、巡回小隊を出し、この場に休止する者らには順に馬と兵装の手入れをさせる。油断はしないが一呼吸はつける。既に十数度の戦闘を経ている。
西地の惨状は、目に余る。
こうも広く深くヴァンパイアに侵入されてしまっては、拠点間の連携など見込めるはずもない。解放した村々も、あれほどに喰い荒らされていては……厳しい。
今の五百骨は、この辺りでは最大のまとまりだった。これで民の避難する時間が確保できたろうが、不気味さもあるな。ヴァンパイアの行動はどこまでも組織立っている。その獣性からすれば、散り散りに人を襲っていそうなものだが。
浸み透りの戦術……少数部隊による進攻を重ねた後に、本隊が面で押し込んでくるものだろうか。それにしては、大部隊であるべき本隊の気配がない。
それとも、ただの瀬踏みか……こちらの反応を見るための戦線荒らしだろうか。そうだとすれば退き際が悪すぎる。クロイの力もあるものの、かくも各個撃破されていては元も子もないだろうに。事実、砦を攻める戦力はもうあるまい。
ヴァンパイアの戦術目標は、どこにある。
それを見極めるまで……この遊撃騎行は終われるものではない。
む、クロイが騎乗したか。視線で次の敵を要求してくる。お前もまた終わらせるつもりがないといった風だな。よかろう。すぐにも案内しよう。
神は、開拓地でも黄土新地でもなく、この西地へとクロイを配した。
その意味をこそ、私は考えるべきなのかもしれない。
馬を駆る。
次の戦場へ。そして次の次の戦場へと。




