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余命宣告を受けた俺が世界を救う理由  作者: 石田あやね
第3章【変動する未来】
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72話 秘密の集まり

 犠牲のない爆破計画を決意したまでは良かったが、肝心の情報が何もない状態が続き、拓たちは前に進めずにいた。爆破の情報を持っている樋渡 姫を浬がうまく逃がしてくれなければ計画は成り立たない。全く情報が得られない今は身動きが取れないのと同じなのだ。

 浬から掛かってきた電話は非通知だったために、拓からのコンタクトは難しい。あれから一ヶ月ほど経ってしまい、拓は落ち着きのない日々を送っていた。何度もスマホを見ては溜め息を漏らす。学校にいても、家にいても、気になりすぎて上の空になることが増えた。


「拓、体調悪いのか?」


 学校の休み時間、ぼんやりしていた拓の思考が現実へと引き戻される。頬杖を付きながら目線を上げると、何故か学年の違う博が心配そうに見下ろしていた。


「あれ? 博?」


「何度も呼んだんだぞ?」


「ごめん、全然気がつかなかった」


 そう返した拓に対し、博は苦笑いを浮かべる。きっと、拓の心情を理解したからだろう。


「具合が悪いんじゃないならいいさ」


「ああ、大丈夫だよ」


 朝、起き抜けの頭痛はあるものの、最近は調子が良かった。この間の検査も現状維持で変化はない。まだ手術の話しはしていないため、担当の先生からはお決まりの話をされる。きっと手術を受けたいなんて言ったら、即入院になってしまいそうで躊躇われたのだ。だから、陽子にもやるべき事が済んでから話をすると話し合っていた。


「それよりも何か用事だったんだよな?」


「ああ、今日の放課後時間あるか? 片倉さんとアキさんが美術部に行ってる時に少しだけ話があるんだけど」


「え?」


 ふたり抜きで話がしたいなんて、博にしては珍しい。何か話しにくいことなんだろうかと、拓は無意識に不安が表情に出てしまう。それを察した博はそれを否定するように笑顔で言った。


「内容は今は話せないけど、別にネガティブな話じゃないから」


「そっか、分かった」


 博がそっと顔を寄せ、拓に耳に近づく。集まる話は()()()()()()話さないでくれよ、と小声で告げた。拓が頷くと、そそくさと教室から出ていってしまう。

 満里奈にだけには秘密ということは、アキも何かしら関わっているのだろうかと察した。しかし、アキは満里奈を守る義務感から側からは離れる様子はない。アキに確認したい気持ちはあったものの、拓はそれを避けた。


 放課後をむかえ、拓は適当に用事をつくり、美術部へ向かうアキと満里奈を見送った。ふたりが居なくなったタイミングで文也が寄ってくる。


「博が生徒会室で待ってるって言ってたから行こう」


 どうやら文也も今回の話について何かしら知っている風だった。なんだか自分だけ知らずモヤモヤする。俺だけのけ者だったのか、なんてちょっとした不満が頭を過った。


「待ってたよ」


 生徒会室へ入ると、博はいつも通りの笑顔で出迎えた。今日は生徒会の集まりがないからか博以外の生徒はいない。


「好きな席についていいよ」


 拓と文也が席に付くと、博が申し訳なさそうに言った。


「拓に話せてなくてごめんな……昨日の夜にアキさんから突然メッセージもらって、先に文也に連絡したんだ。拓は片倉さんと住んでるから、今日直接話した方がバレずに済むかなって思ってさ。それに最近の拓は上の空なことが多いから」


「ごめん、そうだった……浬からなんの連絡もないのが気になって最近ずっと考え込んでばかりだったもんな」


 さっきまでのけ者扱いされていると思い込んでいた自分の考えを拓は反省した。


「もう気持ち切り替えるよ。心配かけてごめんな……それで、満里奈には秘密の話なんだろ?」


「そうそう、実はアキさんが気がついたらしいんだけど片倉さんが今週誕生日みたいなんだよ」


「そうだったんだ」


 拓は自分の不甲斐なさに落胆する。


「俺ってダメだな。同じクラスで同じ部活で、しかも今は一緒に暮らしてるのに満里奈のことなんにも知らなかった」


「そういうものじゃない? 女同士ならそういう話もするだろうけど」


 さらっと文也が冷静に返した。


「最近さ、みんなどこかで爆破計画が進まないことにピリピリした空気になってただろ? こんな緊張感を抱えたままだといずれ疲れちゃうと思うんだ。だから気分転換っていうか、こういう時こそお祝いする気持ちって大切だって思うんだ。だから、片倉さんに秘密でパーティーの準備をしないかっていう提案をアキさんがしてきたんだけど……どうかな? 文也は別にいいって返事だったんだけど、拓は賛成してくれるか?」


「もちろんだよ!」


 拓は即答する。


「俺、浬からの連絡を気にしすぎて博たちの気持ち無視してた。満里奈の方が俺よりもきっと不安だったはずなのに、それもアキに任せてばかりだった……本当にごめん」


「それはいいよ。拓が変に真面目な性格だってこと俺たちは分かってたし」


「てか、拓はなんでも背負い込みすぎ」


 耳がいたい博と文也の指摘は拓にとっては心地良かった。自分のダメな部分をちゃんと言ってくれる友達の存在に感謝しつつ、拓は本題に戻る。


「それで何をするか決まってるの? 家でやるとしたら、準備中は満里奈を遠ざけなきゃいけなくなるよな」


「そこはアキさんが考えてくれてて、当日は片倉さんを家から連れ出す方向らしい。最近、自分の家の状態を気にしてたから、満里奈さんの家へ行くのかもしれない」


「ふたりがいない間に俺たちが料理とかケーキとか準備するっって感じ」


 拓は納得したように相槌をうった。


「なら、手分けして色々やらなきゃな。ケーキはお店で予約すればいいけど、料理をどうするかが悩むよな……俺は簡単なものしか作れないから、パーティー向きな料理は自信ないかも」


 拓がそう言ってふたりの顔を覗き見ると、同じような表情で考え込んでいる。どうやらふたりも料理はあまり得意ではないようだ。拓は暫し悩んだあと、閃いたように声をあげた。


「なら、俺が満里奈を連れ出す役をすれば問題解決じゃないか?」


「大丈夫? 拓って嘘つけないじゃん」


「確かにそうだけど、俺ぐらいしかいないだろ?」


「それもそうだよな。なら、その方向でいこうか。拓、頼んだぞ」


 拓は責任ある任務を背負うこととなった。

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