千原航
学校の裏山は俺のホームと言ってよかった。
蛇や虫が出るし幽霊のうわさもあったので、女子はもちろん男子のほとんど、町の大人ですら近寄らなかった。
だから鬼に見つかる気なんてしなかったし、八幡の提案のかくれんぼを受け入れた。
確かにいつもと違うなとは思ったが、まさかあんなことになるとは思わなかった。
そう死体を発見するなんて。
かくれんぼの最中、気配を消して進んでいると五井が死んでいたのだ。
最初は地面に伏せて隠れているつもりかな、と思って近づいたがどうも様子が変だった。
全く動かないのだ。
よく見ると、俺が裏山に持ち込んだロープが首に巻き付いている。
そしてそのロープは木の幹にかかっている。
俺が木に括りつけたロープに誤って引っ掛かり死んだようだった。
事故とはいえ、俺のせいで死んだとなれば、罪は重い。
子供ながらにそう考えると、俺は五井の死体を担ぎ上げ、以前掘った穴にロープと共に埋めた。
こんなことをしてもすぐに見つかってしまうのではないかと思ったが、できる限りのことはしたかった。
悪あがきってやつだ。
そのかいあってか、先日一時停止無視で捕まっただけで、今ものうのうと生活できている。
俺の運がよかったのか、埋戻しの技術がよかったのかはわからないが、五井は行方不明という扱いになった。
今は土木の会社の社長だ。経営も順調だ。
あの学校が老朽化により別の場所に移動した際に売りに出された。
高かったが、すぐに裏山ごと俺の会社が土地を買い取った。
開発されて死体が見つかっては困るからだ。
まだあの裏山には五井が眠っている。
今後もずっと眠っていてもらうつもりだ。




