友だちのつくり方
瑠璃ちゃんと一緒に暮らし始めて、早1ヶ月。
最初の頃に比べて、それなりに話をするようになってきた瑠璃ちゃんに、学校でのことを聞いていた。
「最近学校どう?」
質問の意味がわからないのか、首を傾げる瑠璃ちゃん。
「あー・・・友達とかできた?」
「はい」
そう言う瑠璃ちゃんはちょっと嬉しそうにも見えた。
「やったじゃん。どんな子?」
「かんだれおくんとたかはしひろとくんです」
「・・・くん?」
なん・・・だと?
男・・・だと?
俺のリアクションにまた首を傾げる瑠璃ちゃん。
「長谷川さん。ぼくとなかよくなって友だちになろうよ」
ぼくが給食を食べながらそう言うと、長谷川さんはとてもおどろいたような顔をして食べる手を止めていた。
そんなに変なこと言ったかな?
「あ、いや、ダメならいいんだけど・・・」
「い、いやじゃない!」
すごい勢いで長谷川さんが言った。
言われたぼくもビックリしたぐらいだ。
ほかの人と比べたらそうでもないけど、長谷川さんがここまで大きな声を出すのは珍しい。というか初めてかもしれない。
「怜央」
「どうしたの?」
いっしょに食べていたヒロトによばれてそっちを見た。
「お前本気言ってるのかよ」
「本気って・・・ウソなんか言ってないよ?」
「そうじゃなくて・・・」
ぼくはヒロトが何を言いたいのかよくわからなかったので、とりあえずザンギを口に入れた。
それをモグモグしていると、ヒロトがため息をついた。
「ホント怜央の考えてることはわかんね」
「ぼくだってヒロトが考えてることなんてわかんないよ」
「まぁいいや。おい長谷川」
ヒロトが呼ぶと、長谷川さんがビクッとした。
ヒロトの呼び方は怖いのかもしれない。
「オレとも友だちになれ!」
「え?」
「怜央はいいのに、オレはダメってことはないよな?」
ぼくがいったときよりも驚いた顔をしながら、長谷川さんはうなずいた。
「よし。これでオレも友だちな!」
ニカッと笑うヒロトに、長谷川さんも少し怖さが無くなったのか、緊張をといて少しだけ微笑んだ。
長谷川さんは最近になってやっと打ちとけてきたのか、少しだけ笑うようになってきた。
やっぱり人見知りだったみたいで、自分からは話しかけたりしないけど、それなりに会話はできるようになった、気がする。それでもあんまり自分のことを話すのは上手じゃないみたいで、ヒロトも含めて周りから見ると、ぼくと長谷川さんがしてるのは『会話』には見えないかもしれないけど、長谷川さんと仲良くなれたから、あんまり気にしないことにした。
「これからもよろしくね」
「ありがとうございます」
「ふふふ」
長谷川さんが『よろしく』って言ったのに『ありがとう』って言ってきたのがおかしくて笑ってしまった。
それを見た長谷川さんが、まるで自分が間違ったことをしてしまったかのように、シュンとした。
「長谷川」
ヒロトの声にビクッとする長谷川さん。
「そういうときは『こちらこそよろしくね』だろ。お礼を言うのはヘンだろ」
「ふふふ」
「なにがおかしいんだよ」
「なんかヒロトが先生みたいで」
「普通のことを言っただけだろ。怜央だってもっと言わないと、長谷川と会話なんてできやしないぞ」
「ぼくはこのままでもいいのに。長谷川さん。ヒロトはもっと長谷川さんとなかよくなりたいんだって」
「バカっ! ぜんぜんちげぇし! オレは普通のことを言っただけだ!」
照れてる照れてる。
ヒロトはガツガツとザンギとご飯を食べはじめた。
ぼくは長谷川さんのほうを見て言った。
「ぼくもヒロトも長谷川さんとなかよくなりたいんだ。だからこれからもよろしくね」
「こ・・・こちらこそよろしく、ね」
そう言った長谷川さんを見て、ぼくとヒロトは顔を見合わせてニコッと笑った。
まさか瑠璃ちゃんの初友達が男の子だったなんて・・・しかも2人。
どんなやつなのか今度確かめておく必要がありそうだな。
もしも瑠璃ちゃんに害があるようなやつなら、ちょっと考える必要があるな。
・・・はっ!
こ、これは瑠璃ちゃんのことを思っているだけで、別に親心なだけなんだ!
「?」
俺があたふたしているのを、瑠璃ちゃんは不思議そうに見ているのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
さて。読者の数も落ち着いてきた頃なので、恒例の『好き勝手にやっちまう時期』に突入しました。
この時期は、僕の妄想とネタが飛び交う時期であってうんぬん。
とにかく好き勝手にやります。
振り落とされないように付いてこいよ!
次回もお楽しみに!




