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早まったかも

「……それじゃあ私の事情をお話ししましょう」


 聖女としてノクトンに召喚されたが候補が二人。

 出来が悪くて見放されて乱暴されそうになって反撃。

 結果、なぜか私が聖女を騙った罪で川流しの刑。

 洞窟に流れ着き、一人でいたらしばらくしてナギが流れて来て主従契約。

 魔の森に逃げてきて魔法の修行中にナーガラージャが流れてきて現在に至る。


「……はぁ……想像以上の波乱万丈な人生ですね」


 そこ、なぜ頬を染めて目をキラッキラにさせている。

 想像以上の厄介ごとの塊に無駄なやる気を見せているナーガ。


「それではお嬢様は今後、いかように?」

「聖女の偽物扱いされているから、ノクトンには絶対行きたくないです。あとはまぁ、適当な国で冒険者として細々とやっていけたらいいと思っています」

「お嬢様は現実的かつ堅実なのですね」

「そこまでお子様ではないので」


 ナーガはにこにこと好々爺のような眼差しで私を見ている。

 彼の年齢を考えればおこちゃまどころか幼児扱いでもおかしくない。

 自分が虚勢を張る子供のような気がしてきてなんだか落ち着かなくなってきた。


「お任せください。目指せ一般市民ですね」


 ……この人がいる限り、一般市民じゃないような気がする。

 普通の一般市民は特殊な固有魔族を執事になんかもってない……。


「こういったミッションは初めてです」


 やる気スイッチが入ったのだろうか?

 場所を教えろ、今すぐオフにしてやる。


「お嬢様の魔力はかなり膨大です。町で人と関わるおつもりならば、魔力の隠ぺいも覚えなければなりませんね」


 隠ぺい……。


『安心しろ、静香。お前を超一流の冒険者として仕上げてみせる』


 目指せ一般市民からかなり、いやだいぶ遠のいたぞ。


「いや、あの、普通の冒険者で……」

「いいえお嬢様。ノクトンは執念深いお国がら。暗殺者を返り討ちにできるくらいにはなりませんと」

「なんで暗殺者!」

「これは異なことを。お嬢様はいわば彼らにとっては失敗作。プライドが高いものほどそれを許せないのが世の常なのでございます」

「失敗をごまかすのに私を殺すの?」

「なかったことにするのが一番の方法です」


 過激だな、オイ。

 さっきの標語はどこにいったんだ?


「甘いですぞ、お嬢様。何でも第二王子が聖女を召喚したとか。そうなると第一王子も心中穏やかではありません。ましてやいまは王位の跡目争いの真っ最中。相手の弱みを突くのは定石です」


 今現在、その弱みとなるのがこの私。


「つまり第一王子だったら身柄を、第二王子だったら命を狙われると、そういうこと?」

「はい。ノクトンの王位は代々兄弟で争い、残った方が王太子となられます。現国王は確か、貴族の不正をあばき、黒幕を他の王子になすりつけて処刑したとか」


 なすりつけたってすごいな……冤罪で兄弟を殺して王様になったのか。


「王として国を守るために非情になれるという部分ではノクトンの王は代々世界一でございますから」

「へー、そうなんだー」


 棒読みになってしまうのはしょうがないだろう。

 そういう強さが求められちゃうこの世界って、怖いよ。


「それではこのわたくしめがお嬢様に隠蔽をお教えいたしたく思いますが、ナギ殿はいかがでしょうか?」

『俺は引き続き、闇、水、空間魔法を鍛える。索敵魔法も教えてやれ』

「かしこまりました」


 当たり前のように一人と一匹が会話していることに気が付いた。


「ん?あれ?そういえばナギとナーガって、話ができるの?」

『こやつの一族は言語スキルが高い。ある程度の知能が高い生き物ならば会話が可能だ』

「ナギ様の場合、会話というよりは念話です。聖獣と契約したことでお嬢様にも念話スキルが自動的に付与されたはずですので、こちらも伸ばしましょう。慣れると色々と便利ですよ」


 何に便利なのか。

 使える距離にもよるだろうけど。


「あれ?スキルって先天性のものじゃないの?」


 神の卵の話を思い出しながらナーガに聞いてみる。


「それは特別なスキルです。発現すれば通常の同じスキルより強力なものなのですよ。ですがめったに発現しないので、たいていは反復による習得か関連性によるスキルを習得するのが一般的です」

「反復?関連性?」

「関連性で言えば、聖獣と契約することで意思疎通のために必要なスキルが生まれます。精霊に好かれて祝福を受けたら精霊魔法師のスキルが自動的に手に入ります。反復ですと、複数の言語を自力で習得することで言語スキルが、槍でひたすら突きの練習をしていたら連撃や一撃必殺のスキルが生まれます」

「なるほど……」


 努力するとスキルという目に見える形で免許皆伝の腕前になるというわけか。

 これはちょっと嬉しいな。

 やる気が出てきたかも!


「それではお嬢様、がんばりましょうね」


 にこやかにほほ笑むナーガに悪寒を感じた。

 ナギもニコニコと機嫌がよさそうだ。

 あれ?一般人への道って、そんなに難しいの?

 相乗効果で私のやる気もアップ!とはならず、嫌な予感しかしないこの組み合わせに早くも雇用契約を結んだことを後悔していた。



前回、別の連載に掲載するという失敗をしたあげく、保存もせずに消してしまったので新たに書き直しました。

別の連載で読んだ方は速やかに記憶を消去してください。

もしくは新たに上書きをお願いします。

上書きしやすいように、今回は続けて投稿しました。

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