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代償




 え、えっと…………はい?

 店長は今、何と言った?

 見えない足場を作り出したり、バリアを張ったりするのは聖剣じゃなくて、俺自身の能力だって?

 はははは、いやだなぁ、店長。俺にそんな力があるわけがないじゃないっすか。

 俺、自慢じゃないけどごく普通の大学生っすよ?

 そりゃね? 「世界の基点」とかいうよく分からん存在らしいけど、特別な力はないって前に店長が言ったじゃないですか。

「ああ、私も『世界の基点』に特別な力はないと思っていたのだが……最近、知り合いの魔術師からそうじゃない場合もあることを聞かされてね」

 知り合いの魔術師? それって先ほど店長が口にしたシャーロットとかいう人なのかな?

「その知り合いが言うには、極々稀にではあるものの、『世界の基点』が特殊な能力を有する場合もあるらしいんだ。とはいえ、それが『世界の基点』だからなのか、それとも元より個人が有する特殊能力なのかは判断に困ると私は考えるのだがね」

 う、うーん、何か話が難しくなってきたぞ。

「聖剣には足場や障壁を作り出す能力はない。であれば、それは君の力だと考えるのが妥当だろう?」

 い、いや、店長の言うことは分かるけど、俺にそんな力があるわけが……

「まあ、それはこれから調べるとしよう。それよりも、だ」

 店長がにやりと意味深な笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「もう君のデータ収集は終わったのだから、そろそろ服を着たらどうだい?」

 え? は? あ!

 そ、そういや、俺、まだ裸のままだった!

 真っ赤な顔で視線を逸らす香住ちゃん、なぜかぎらぎらとした視線を俺へと向けるミレーニアさん、そして、にまにまと笑うばかりの店長。

「ふ、服を着てもいいのなら、早く言ってくださいよっ!!」

 俺は店長にそう言い捨てると、香住ちゃんが畳んでおいてくれた服をひっつかんで大慌てで工房から飛び出した。

 いやーん。



「これは私見だが、足場やら障壁やらが水野くんの潜在的な能力であることは間違いないだろう。だが、水野くんにそれらの異能を操る能力はない。だから──」

「聖剣が茂樹さんの力を引き出して制御していた、ということですか?」

「改めて言われてみれば、シゲキ様と同じように聖剣に操られているわたくしやカスミが、空を駆けたことはありませんね」

 当事者である俺をそっちのけで、店長と香住ちゃん、そしてミレーニアさんが意見を交わす。

 いやね? あまりにも想定外なことを言われて、ちょっぴり……いや、相当混乱しているんですよ。

 だって、あの見えない足場やバリアが俺の能力? でも、俺自身じゃ制御できないから、聖剣が制御していた?

 そんな話、いきなり言われてもはいそうですかと受け入れられるかっての。

 そりゃ確かに以前に店長から、俺には膨大な魔力はあってもそれを操る素質はないって言われたけどさ。

 今度は特殊な能力があるのに、それを自分で使いこなせないって? 俺、どれだけそっち方面の素質がないの? ちょっとショックだよ。

 そして、ミレーニアさんの言葉を聞いてよくよく思い出せば、確かに空を駆け回っていたのって俺だけだよな。香住ちゃんもミレーニアさんも、俺と同じように聖剣に操られていたはずなのに空を駆けたことは確かになかった。

 今まで特に疑問に思わなかったけど、言われてみれば変だよね。足場を作り出す能力が聖剣のものであれば、二人だって空を駆けたことが一度ぐらいはあってもいいはずだ。

 ってことは、店長が言うようにあれは俺自身の力ってこと? でも、折角そんな異能を持っていても、俺自身が自在に使えないんじゃ持っていないのと同じだよね。

「そして……それらの力が水野くんのものであるからこそ、それを無理矢理引き出す際に、君自身に大きな負担となってのしかかる」

 確かに店長の言う通り、今回はいつも以上に力を吸い上げられた感覚があった。それに伴う、激しい疲労感や脱力感も。

 おそらくあれが、俺にのしかかる負担ってやつだろう。そして、それが先程ちょろっと店長が零した代償ってやつでもあるのだろうか?

 聖剣も俺の力を削るとか言っていたし。

「君の考えている通りだよ、水野くん」

 どうやら考えていたことがまた顔に出ていたようで、店長が真面目な顔で俺に言った。

「先程、君の体を調べた結果、君が有する魔力の最大値がやや下がっていることが分かったんだよ」

 俺の魔力の最大値? な、何かゲームみたいだな。

「とはいえ、元々君の魔力は馬鹿みたいに膨大だからね。少々最大値が下がってもそれほど問題ではないと思う」

 店長が言うには、俺たちの世界にいる魔術師の平均的な魔力量を100とするなら、俺の魔力は1京以上あるそうだ。

 いや、1京とか何? そりゃ「京」が数の単位ってことは知っているけど、実際に「京」が使われることなんて普通に暮らしていてもまずないよね。

 で、本来なら1京以上あった俺の魔力総量が、先程調べたところやや下がっていたんだとか。

 店長? 一体いつ、俺の魔力総量なんて調べたんですか? 俺、そんなことされた覚えないんですけど?

 まあ、それはともかくとして、具体的には1京あった俺の魔力は、9999兆9999億9999万……つまり、本当にちょっとだけ下がっているらしい。それ、計測の誤差か何かじゃないっすか?

 ちなみに、この世界の魔術師の平均魔力量が100なのに対し、店長は500ぐらいあるそうだ。それだけ聞いても、店長が優れた魔術師だということなのだろう。

「おそらく、一時的な足場のようなものであればそれほどの強度も必要ないし、水野くんの魔力を永久消費する必要もないのだろう。だが、害虫の攻撃を防ぎきったり、いつも以上に水野くんを強化したりする場合、相当量の魔力が必要なのだろうね」

 なるほど。見えない足場ぐらいであれば、それほど俺の負担にはならないってことか。でも、強固なバリアや今日みたいな異常な強化は、かなりの量の魔力を使うのだろう。

 確かに、今日の疲労感などは半端なかったからな。

 聖剣がこれまで足場は作ってもバリアは使わなかったのは、その辺りが理由なんだろうな。俺の力を永久消費したくなかったんだ。

 まあ、初期の頃は聖剣も俺の魔力を利用できなかったってこともあるかも。てことは、初期に使っていた足場は、聖剣自身の魔力を使って俺の異能を引き出していたのかもしれないぞ。

 ひょっとすると、今でも足場ぐらいなら聖剣の魔力で作り出しているのかもね。

「そして今日、水野くんと聖剣は害虫が作り出した『門』と呼ばれるものさえ破壊した。そうだね?」

 店長が俺たちをゆっくりと見回し、俺たちは揃ってそれに頷く。

「足場やバリア、そして『門』の破壊……それらから推測するに、水野くんが有する異能は空間系のものだろうね。それも、『害虫』が作り出した『門』さえも一撃で破壊するほどの力を有する強力なものだ」

 え? あの黒い穴を破壊したのも俺の力なの? 聖剣じゃなくて?

 だとしたら、黒い穴を破壊した時って、聖剣の斬撃に俺の異能を上乗せしたって感じ? ところで、空間系の異能とかちょっとかっこよくね?

 これで俺自身が自在にその力が使えたら、もっとかっこよかったのになぁ。はぁ。



「でも店長? 茂樹さんの聖剣だって異世界へ行けるってことは、空間系の力を持っているってことですよね? そう考えると、あの黒い穴を壊したのに茂樹さんの力は関係ないのでは?」

 ふむ、香住ちゃんの言うことも一理あるかも。

「確かに、異世界への移動は聖剣の力だ。だが、それは聖剣にとってはそれほど大したものじゃないんだよ」

 店長が言うには、聖剣の本体は世界そのもの。生まれたばかりではあるものの、世界そのものである聖剣の本体にとって他の世界を訪れるのは、俺たちがご近所さんの家を訪ねるようなものらしい。

 隣近所を訪れるのに、異能など必要ないってわけだ。

 だが、聖剣は人間で言えばまだまだ小さな子供。小さな子供が一人で行ける場所は限られている。だから、今の聖剣が行ける小世界は限られている……ってことなのだろうね、きっと。

「見えない足場や障壁、そして『門』を破壊するなんてことは、聖剣には不可能なんだよ。少なくとも今の段階では、ね」

 店長が。香住ちゃんが。ミレーニアさんが。

 じっと俺へと目を向けた。い、いや、そんなに改まって見つめられても。何か照れちゃうね。

「水野くんが有する魔力は膨大だ。多少上限値が下がったとしても、誤差と言えるほどでしかない。だが、力を使い過ぎると魔力の上限値は確実に下がる。それだけは心に留めておきたまえ」

 魔力がゼロになったとしても、死んだり廃人になったりはしないからそこは安心していいよ、と店長は続けた。

 俺たちの世界では、魔力を持っている人の方が遥かに少ないからね。魔力がゼロになったとしても、そこは特に問題はないらしい。

 とはいえ、急激な魔力の消耗は今日みたいに気を失うこともある。そこは気をつけた方がいいと店長は言った。





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― 新着の感想 ―
[一言] 茉「そろそろ服を着たらどうだい? 立派なのはよくわかったからさ」 茂「着ていいなら早く言って?!」 香「きゃ、やだー(棒)」 茂「指の隙間からどこをロックオンしてるの?!」 ミ「……」( *…
[良い点] 『世界の基点』であり、膨大な魔力を内包する稀有な存在である茂樹。店長の分析により空間系の能力であり、聖剣はその力を引き出して足場を作ったり、空を駆けたりしていたと言うのだが……。 自身で使…
[良い点] つまり彼だからこそ 聖剣を使いこなせてたということですかな! [一言] ヒロインたち脱がす方が面白いですよ!(ニヤリ)
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