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第16話

 暗い闇の中で佇んでいる。


 何も見えない。


 何も聞こえない。


 身体があるかさえわからない。


 考えることも動くこともできず。


 ただ暗闇を見ているだけ。



 そこに少しずつ光が差し込み、薄らと視界がひらけてくる。


 目に入ってきたのは薄暗い倉庫。見慣れた、いや見慣れていた光景とは違う、物が散乱している倉庫。


 ここは職場の地下倉庫。


 大地震で棚が崩れ、段ボールが撒き散らされ、天井に近い壁の窓から光が差し込んでくる。


 俺は動くこともできず、じっと扉の方を見続けている。



 扉の近くには、誰かが倒れていた。


 ボヤけてはっきりとは見えないが血を流しているように見える。


 声をかけようとするが声が出ない。


 ふと()と倒れている人が黒いモヤで繋がっているのがわかる。


 これは魔力、魔力で繋がっている。


 魔力を通してわかる。


 この人は死にかけている。


 だから修復する。


 魔力を倒れている人に与え、包み込む。


 このまま魔力を与え続けていれば()()が増える。


 そう約一ヶ月このまま。


 俺は倒れている人を見続ける。



 

 あと少しで一ヶ月。


 デジタルの表示が一時間を切った。


 ふと壁にぶら下がっている何かが揺れた。


 落ちて人に当たった。


 そこで人と繋がっていた魔力が切断される。


 あと少しだった。


 人が意識を取り戻す。


 立ち上がって何か言っているが聞こえない。


 少ししてから人が近づいてくる。


 だんだんと顔が見えるようになってきた。


 もうすぐ手の届く距離。


 近づいた人は俺を手に持ち。


 床に投げつけた。


 人は()だった。



◇◇◇



 そこで()は意識を取り戻す。


「……」


 周りを見るがここは倉庫じゃない。トラックのコンテナの中だ。


 蝋燭がユラユラ揺れているのを見る。蝋はほとんど減っておらず時間は経っていないどころか、意識を飛ばしていたのはほんの数秒程度だろう。


 時間の感覚は曖昧だが【領域結界】に意識が取り込まれて色々と理解することができた。


 俺が見ていたのは、破壊したコアからの視点だ。


 俺は倉庫で死にかけて、コアの魔力で修復され、〝異形〟になりかけていた。


 たまたま——あれは内線電話か、が落ちてきて意識が戻り異形にならずに済んだ。


 何でこんなのを見ることができたかわからないが、俺のユニークスキルが異質なのはこの世界を形作った魔力が混ざったから。

 この世界を作り上げた魔力の一部が俺の中に入ってしまったから。


 頭の中はスッキリしている。先程まであった負の感情が綺麗さっぱりなくなっている。


 今までの俺なら動揺して混乱していただろう。だが今はそれがない。

 コアと同調した事で知識が頭の中に勝手に詰め込まれ、ユニークスキルの理解が少し深まったことで、心身に影響を与えているのだろう。


「全能感……ってやつか」


 今なら何でもできるような気がしてくる。幻想拡張を使えば何でもできるような気になってくる。


 両手を見ると震えている。だが今までの恐怖やなんかとは違う。何かしたくてたまらないという欲求、何かできる力があるという確信。


 スキルが俺だけ獲得できない理由もわかった。

 あってもなくても何も変わらないからだ。ただただステータスに表示してあるかどうかの違いでしかない。


「現時点で、俺は世界最強なんじゃないだろうか?」


 誰がきても、何がきても負ける気がしない。自分でも何言ってんだ馬鹿馬鹿しいという気持ちと、実際にそうあるのではないかとの思いが込み上げる。


 たった一つ気がかりなことがあるとすれば、俺はまだ()()なのかと言うことだ。【領域結界】は自身を守るために〝黒い異形〟などを作り出す。世界の始まり前だったから俺は異形にならなかったが約一ヶ月、魔力に浸っていた。一ヶ月漬けた漬物みたいなものだ。


 自分の胸に手を当ててみるが心臓の音が伝わってくる。俺の胸にも異形と同じ硬い感触の石が入っているのだろうか?


 たぶん鈴木くんが知れば〝魔石〟だっ!って大喜びするだろう。


 そんなことを考えていると笑みがこぼれる。何がおかしいか自分でもわからない。


 俺は身体を伸ばしながら徐に立ち上がるとコンテナの扉を開ける。


 少し歪んでいるためにこすれるような音がするが雨の音にかき消される。ただ、今なら何十匹、何百匹のゾンビが集まってきても戦える。そう感じる。


 外を見回してみるが、大雨。風がない分コンテナの中まで入ってはこないが、道路には水が溜まり、激しい雨音が一面を覆い尽くす。遠くのほうまで見えないぐらいの雨がアスファルトやコンテナを叩く。


 深呼吸をすると雨の匂いが鼻を突き抜けてくる。コンテナ内の空気が入れ替わり、肌にひんやりとした空気を感じる。


 左手を前に突き出し、少し雨があたった指先が濡れた。その感触を確かめながらユニークスキルを発動させる。


「幻想拡張」


 イメージは棘。雨粒一つ一つが小さな棘となり空から降り頻る無数の棘となるイメージ。


 俺の身体から魔力が一瞬で広がり、俺以外の全てが止まったような時間の中、無数に浮いている雨を変質させ、小さい、目に見えるか見えないかの水の棘を作りだす。


 その棘は落ちるスピードを緩めることなく、そのまま弾丸の様な音を立てながらアスファルトに突き刺さる。


 驚くことはない。これが本来の使い方の一つ。()()を強化、拡張する力。たぶん何でも変化させられるのだろう。唯一の弱点は、ものがなければ、俺が意識できなければ効果がないことぐらいか。


 アスファルトには無数の透明な小さい棘が突き刺さっている。そのまま見ていると数秒で元の水に戻った。今までの変化させたらさせたまま固定されるのとは違う。やり方によっては一瞬で元に戻すことも可能だろう。


「さらに、幻想拡張」


 イメージは自分の身体。いや、正確に言うと、俺が常に纏っていると優里亜さんに言われた魔力。今はまだ自分では見えないが、あると言われたのだからそれを意識する。


 ()()は魔力、作り出すのはスキル。優希くんが使っていた〝縮地〟だ。


 雨に濡れるのも構わずコンテナから飛び降りる。そして縮地を発動させる。


 水飛沫を上げながら一瞬で近くの塀に近づき、慌てて止まる。コントロールするには少し慣れが必要かもしれない。


「金剛」


 斑鳩の金剛をイメージ。今回はあえてスキル名で発動できるか確認する。


 まだ少し残っている塀に拳を当てて軽く殴ってみる。

 塀が砕けて崩れ落ちていくが、俺の拳には痛みも何もない。


 スキルも完璧に模倣できるようだ。ただ、あくまでも俺のイメージで本来の効果なのかは知らない。


 拳を繁々とみていると一体のゾンビがやってくるのが見える。音につられてやってきたのだろう。


 正直もうただのゾンビじゃ話にならない。すぐに雨を変質させてゾンビを撃ち抜く。


 ゾンビはマシンガンを食らったようにガクガク揺れると倒れて動かなくなる。さらに魔力をアスファルトに流す。


 倒れたゾンビの真下からアスファルトが立ち上がり槍となってゾンビを貫く。串刺しになったゾンビを横目で見ながらコンテナに戻る。


「凄いな……。周りにあるものが何でも使える。環境魔法とかそんな感じだな」


 濡れたスーツを全て脱ぐとタオルで全身を拭き、アイテムボックスに入っているパーカーとジーンズを取り出す。


「念のため強化しておくか」


 スキルを使いパーカーとジーンズ、さらに取り出した運動靴に強化をかける。とりあえずは防御力を上げられればいい。


 三点を一瞬で強化するが、ここでちょっと問題が起こる。


「何で全て黒くなるんだ?イメージしてないぞ」


 強化できたのはいいが、全てが黒く染まってしまった。若干色の濃さは違うが、まるで闇堕ちした厨二主人公みたいでこれを着るのは戸惑われる。


「まあ一時的だから何でもいいか。次は、武器をどうにかしたい」



◇◇◇



 クガ ヤマト

タイプ:幻想タイプ

レベル:20

HP:216

MP:226

筋力:B+

耐久:B+

俊敏:B+

魔力:A+

精神:B+


固有スキル:幻想拡張


スキル:ソロアタッカー ステータス+ 

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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃおもろくて熱い展開! [気になる点] この先の展開! [一言] 頑張って連載して欲しい! エタって欲しくないな!
[一言] 更新ありがとうございます! 楽しみにしてます!
[一言] もう負けねえやん 幻想拡張で空気いじくられると生物では勝てない
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