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第6話

 緊張と退屈の夜が明けてくる。周りが見えるようになったタイミングで俺はすぐさま行動に移る。

 窓から外を見てゾンビがいないのを確認すると、固まった手足を伸ばして身体を解す。多分今の時間は朝の五時過ぎぐらいだと思う。明るくはないが薄らと建物が把握できるようになっただけで十分動ける。


 リュックを背負い直すと、お世話になった管理室を出てマンションに帰る道程を急ぐ。七瀬さんが心配だ。


 数体のゾンビと遭遇するもサクッと倒してマンションに辿り着く。俺も強くなったものだ。自画自賛しつつ、合鍵はもらっているので直ぐに五階に上がり鍵を開ける。


「ただいま……」


 七瀬さんが寝ていたら起こすのも悪いので朝帰りの亭主の如くこそっと呟くと、リビングの扉が勢いよく開き七瀬さんが飛び出してきた。


「……っ大和さん!」


 勢いよく抱きつかれて、前にもこんなことあったな、と思い出していると七瀬さんが震えている。何かあったのか!?


「どうしました?何かありましたか!?」


 俺は七瀬さんが落ち着くように背中を軽く叩く。顔を上げた七瀬さんは涙を瞳に溜めながら首を振る。


「だって、大和さんが帰ってこないから……。ゾンビ一体倒すだけで動けなくなっちゃった私に失望して、どこか行っちゃったんじゃないかと思って……」


 七瀬さんが震えて強く抱きついてくる。


 あぁ〜これ全面的に俺が悪いやつだな。俺の中では一人で考えてもらう時間をとってもらうのが目的だったけど、その日のうちに帰ってこれなくなったのは俺が悪い。


「本当にごめん。本来は昨日のうちに帰ってくるはずだったんだ。ちょっと調子に乗ってゾンビを倒してたらいつの間にか暗くなっちゃって。夜は危険だから一時的に避難してて帰るのが遅れた。七瀬さんを見捨てる気はこれっぽっちもないよ」


 俺がそういうと、慌てて七瀬さんは俺の体をペタペタと触って心配そうに傷の確認をしてくる。


「自分のことばかりでごめんないさい。どこか痛むところや怪我はないですか?」


「俺は大丈夫だよ。危ないと思ったら逃げまわってるからね。心配してくれてありがとう」


 あまりにも心配そうに見てくる七瀬さんを安心させようと、ちょっと遠慮しながら軽く頭を撫でてみる。女子高生の頭を撫でるとか通報まっしぐらな行為をしてしまったのは雰囲気に流されたからだろうか。


 俺の頭を撫でる行為にちょっと七瀬さんが固まってしまい、不味ったと冷や汗をかいたが、七瀬さんは恥ずかしそうに俯いてされるがままになっている。


 すぐに撫でるのをやめると、七瀬さんも顔を上げてちょっと顔を赤くしながら笑顔になってくれた。ここ数日で随分距離が近くなったものだ。

 七瀬さんはまだ高校生だからな。本来は親の庇護下で過ごしているはずなんだ。こんな状況になって頼れる大人が俺しかいないってのが大きいのだろう。不安にさせるような行動は控えるべきだった。俺の配慮が足りなかったことを反省する。できるだけ早く何処かの避難所に連れて行って安心させてあげたい。


 よく見ると七瀬さんはちょっと疲れたような顔をしている。まさか寝てないなんてことはないよな?そういえば今はかなり早い時間だ。やっと周りが明るくなりかけている時間帯、普段起きているような時間じゃない。


「七瀬さん、まさか寝てないんですか?」


「はい。心配で寝れなくて……」


 罰の悪そうな顔して答える七瀬さんを、俺は手を繋ぎながら寝室に連れていく。若干焦ったような顔をしているが、何もしないよ、なんてホテルに女性を連れ込む男のような言葉を吐きつつゆっくり寝るように諭す。俺の手を離さず渋る七瀬さんを強引にベッドに寝かせ頭を撫でる。


「寝るまでここにいてくれますか?」


 ちょっと恥ずかしそうに聞いてくる七瀬さん。不安にさせてしまった罰としてそれも仕方ない。本当はすぐにでもマンション内の物資回収をしたいところだったけど。


「大丈夫、寝るまでここにいるよ。それと寝室にはいないかもだけど、今日は一日家にいるので安心してください。もしかしたらそこら辺で寝落ちしてるかもしれません」


 少し冗談ぽく言ってあげると安心したように七瀬さんは目を瞑った。手は繋がれたままなので俺はベッドの側から離れられない。若干自分の手汗が気になりつつ七瀬さんが寝息を立てるのを待つ。


 十分ぐらいで七瀬さんが寝息を立てるのを確認すると、ゆっくりと手を離す。

 ……この子警戒しなさすぎじゃないの?いくら助けてくれた恩人だとはいえ、出会って数日の見知らぬおっさんだぞ。この警戒心のなさはちょっと心配になってしまう。変な男に騙されなきゃいいけど。


 そこら辺の注意は起きた時にするとして、どうするか。寝てる間なら物資回収もこっそりできるが、家にいると約束している以上、無駄に破る意味もない。こっそり回収していたのがバレると小さな嘘が大きなヒビになることだってある。

 逆に一緒に物資回収した方が今後の信頼関係にも繋がるかもしれない。七瀬さんは自分のできることは自分でやりたいみたいだし、戦わなくても出来ることがあるってわかった方が気持ちも楽だろう。


 主に回収目的は包丁などの刃物類だ。七瀬さん次第だが自分の武器は自分で回収するのがいいだろう。結局は幻想拡張で何かに変えるとしても、ただただ誰かに与えられる関係性よりは健全だと思う。


 俺は台所にある冷蔵庫を開けてみる。通電はしていなくて、ただの棚になっているがこれが丁度いいだろう。

 中に入っているものを全て取り出すと、両手を当てて集中する。


「幻想拡張」


 これから行うのはリュックに使ったのと同じ〝アイテムボックス〟化だ。食料品などはここに入れて纏めて保管できるようにしておく。

 家族三人で使ってた割には冷蔵庫は結構大きいのでかなり物が入るだろう。リュックですらまだ限界が見えてこないのだ。


 空間の拡張、重量激減、時間停止。消費魔力は大きいがこれがあるだけで生存率がグッと上がる。食べ物を無駄にしないってだけだが、賞味期限を無限に伸ばせるのが大きい。


 一度使っているからかリュックの時と消費魔力は同じだが時間はかなり短く一分ほどで完成した。とりあえずリュックの中の食料品を片っ端から一番大きいところに入れる。食料以外の雑貨は引戸になっている部分に適当に入れておく。


 リュックの中に最終的に残ったのがエアガンなどのミリタリー商品だ。これは後で七瀬さんと一緒に気に入ったのを選んでもらって幻想拡張で強化しよう。


 今後の強化プランとしては、近接武器を数本、銃器を各二丁づつ、腰にベルトを巻いて、ベルトの左右の腰部分に一つづつ幻想拡張で強化した小さいポーチをつける。


 これで戦いながら戦況に応じてポーチから一瞬で武器を取り出して戦うことができる。慣れるまでは武器のスイッチに手間取るかもしれないが、無理に切り替える必要もないので問題ない。


 七瀬さんはスキルを持っていないので、身につけるものは全て強化しておかないとたぶんすぐ死ぬだろう。そうなるとポーチの中には大量の回復薬や解毒薬は必須。


 軽装で防御力が高く、回復アイテムも潤沢に持ち、武器も予備が多くある。ここまですれば何とでもなるだろう。


 ここで俺も夜は寝ずに警戒してたからか眠気がくる。ただまだMPの余りがあるので使い切ってから寝たい。勿体無い精神で限界まで頑張ろう。


 俺は栄養ドリンクを取り出すと、在庫が少なく使用頻度が高いHP回復薬を寝落ちするまで作り続けた。

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