第4話
これでゾンビを倒せればステータスを獲得できることは確定した。ただ、ステータスを獲得するには、ゾンビを無傷で倒さないといけない縛りがある。今まで見た限りだとほぼ傷のないゾンビもいたから、爪で引っ掻かれただけでアウトだろう。
何処かに人が集まるコミュニティがあるとして、一人でもゾンビを倒せるステータス持ちがいれば安全に戦力を拡大する事も可能だろう。
だが、気になるのは七瀬さんのステータス補正が低いことだ。同じ〝一般人A〟なのにステータス補正が俺はB、七瀬さんはCになっている。
初討伐がゾンビと球体の差?それとも幻想世界のスタート前の特典で俺の補正値が上がっているとか?
後は固有スキルの有無だ。俺はたぶん球体破壊のあのタイミングのお陰で獲得したと考えている。せめて普通のスキルが他の獲得手段がないとステータスが上がっただけの一般人じゃ厳し過ぎる。
これは後で七瀬さんと話し合って考えよう。
考えてもわからないことだらけだな。先にやることを終わらせよう。
七瀬さんは精神的な疲労が濃いので休んでもらっている。流石に生き物っぽいゾンビを殺したのだ。普段からそういう仕事でもしている人じゃないとかなりキツいだろう。十分に休んでもらって落ち着いてから今後どうするか考えればいい。
「幻想拡張」
俺はリュックに幻想拡張を使う。イメージは〝アイテムボックス〟だ。通常よりも大量の物を入れることができ、重さも感じず、時間経過もない。
これだけのイメージで作れるか疑問はあるが、ハンドガンで魔力を撃ち出せるように作った時の要領でいける気がする。
あの時と同じでイメージを崩さず、魔力をゆっくり染み込ませるように。魔力的な要素が発現するように。
時間が掛かる、数分ではないだろう。魔力が身体から抜けて、じっとりと汗をかいてくる。
集中力が続かないかもしれない……と感じていた時に変化は起こった。
魔力を纏ったリュックが形を変えていく。収束した魔力が収まった時には、ひとまわり小さいリュックが完成していた。
「できたっ。これで物資を大量に詰め込める」
汗を拭い息を吐き出し、リュックを眺める。特に変なところはなく。とりあえず中を覗いてみる。
「中も特に変わっていない。ただのリュックにしか見えないが」
いやでも俺の感覚では成功している。とりあえず何か詰め込んでみるか。
俺は考えた末にリビングにあるテーブルを持ち上げてリュックのそばに持っていく。どう見てもリュックの方が小さい。
リュックの口にテーブルを近づけて、入ってくれと思っているとーーテーブルが消えた
「へっ……!?」
持っているテーブルが跡形もなく消えたのだ。慌ててリュックを見ると、中に小さいテーブルみたいなものが見える。ただリュックの中の奥行きが怪しい。
かなり遠い距離にあるように見えるのだ。遠近感が狂ったような錯覚に陥る。
そしてリュック触れていると中に入っている物のリストが頭に浮かぶ。テーブル、と。テーブルを選択して取り出す意思を見せるとテーブルが出てきてリビングに設置された。
「これ凄いな!?考えた人天才だと思うわ。これぞファンタジー」
テンション上がってアイテムボックスに机を入れたり出したりをして遊んでいる時にふと素に戻る。
「こんなことしてる場合じゃなかった」
やる事をやらねば。
適当な紙に〝物資の補充に行ってきます。念のため短剣は一本置いていきます〟と書き置きして家を出る。目的は昨日行けなかったコンビニと、エアガンのあった家だ。
アイテムボックスが作れたことで大量の物資調達ができるので限界までコンビニで補充する。
そして七瀬さんが戦えるなら武器が必要だ。短剣はマンション内の包丁などを拝借するとして、飛び道具、ハンドガンだけじゃなくアサルトライフルやスナイパーライフルを魔力消費で撃てるようにすれば戦力の幅がグッと広がる。
ステータスが表示されるようになったとはいえまだレベル1だし、スキルもない。その状態でゾンビと戦うのは難しいと思う。七瀬さんが大丈夫なら銃を使ってもらうのもありだろう。
荷物の問題で昨日は持ってこれなかったが今なら全部持ってくることも可能だ。そのうち2丁拳銃で戦ってみたい。
ファンタジー格闘術のガン・カタが俺を待ってるぜ。
マンションを出るとまずはエアガンを取りに行く。右手にハンドガン、左手に短剣でハンドガンの魔力消費も見ておこう。
少し歩くと足を引き摺るように歩く女性のゾンビを発見。正面から速攻で倒すのもいいけどまずはハンドガンの確認だ。
崩れた建物の影に隠れてゾンビが近づいてくるのをじっと待つ。俺の前を通り過ぎたところで、ハンドガンを構えて狙いをつける。
距離は二メートルほど。
「ステータス」
あれ?気にしてなかったけど、HPが増えてる。俺のレベルは10だからHP100のはずなんだけど108になってる。MPも確認してみるが、幻想拡張使ったのと自然回復分で増減しててちょっとよくわからない。
いや、今は確認の時じゃないっ!思考の渦に沈みそうになる意識を戻し、そしてトリガーを引く。
軽い反動とともに目に一瞬の軌跡を残してゾンビの背中に穴が開く。ゾンビがビクリと震えて崩れ落ちていった。
表示したままのMPを見ると消費魔力は1。これはかなりコスパがいいと思う。レベル10の俺なら最大100発撃てることになると思うけど、HPが増えてるからMPも増えている可能性がある。
レベルが上がるごとに残弾数が10発以上増えると思うと弾切れの心配もほぼないだろう。
MP回復薬を飲んで最大値を確認したい欲求に駆られるが、ただでさえMPが余り気味な俺が貴重な薬を飲むわけにもいかない。これは後回しだな。
ハンドガンは十分に武器として使っていける。これは本当にガン・カタの出番かもしれない。
ああ、でもスナイパーライフルでゾンビを狙撃するクールな殺し屋的なのもカッコいいよな。
周りに人がいたら通報されるレベルのニヤニヤが止まらない。この時点でクールとはかけ離れている事に俺は気が付かないまま目当ての民家に到着する。
民家に到着した俺はすぐに二階に上がり趣味部屋へ。昨日訪れた時と変わらない光景に安堵する。とりあえずは片っ端から銃を貰っていこう。
せっかく銃を使うなら名称も知りたいので、散らばっている雑誌も拾っていく。BB弾はどうするか?まああって困ることもないだろうから貰っていくか。
プラスティックのは思いつかないけど、鉄は纏めて幻想拡張使って投げナイフとかが作れるかもしれん。
片っ端から回収していくと部屋がかなりスッキリしてきた。クローゼットの中にも太い銃があったのでそれも回収。たぶんショットガンかな。
アサルトライフルやショットガンは、弾丸はどうなるんだろうか?
アサルトライフルは一発一MPならオートじゃ使いにくい。もっと高レベルにならないとすぐにMP切れになるしゾンビには弱点以外に当てても足止めしかできない。威力が上がるなら単発で使ってもいいかも。
ショットガンは弾が飛び散るはずだから、消費MPが気になるところ、威力が高いなら大雑把に狙える分悪くはないかもしれない。
モデルガンを全て回収した結果
ハンドガン×10
アサルトライフル×5
サブマシンガン×3
スナイパーライフル×4
ショットガン×2
かなりの数が手に入った。ここの人はサバイバルゲームでもしていたのだろうか?それとも単純なマニアとか?
各種ホルスターもあったので貰っておいた。
迷彩服やベスト、ガスマスクとかもあったけど、それらは必要ないので回収はしない。たぶん幻想拡張で強化した方が防具としては強いからだ。
ベルトにつけられるホルスターだけは一つその場でつけて、ハンドガンを挿しておく。皮で出来ているもので中々カッコいい。
かなり満足してしまったが、まだまだリュックの容量に余裕があるのでコンビニで回収作業もしないといけない。
玩具を買ってもらった子供のように早く家に帰って弄り倒したい気持ちになりながら、俺はその家を後にする。
◇◇◇
クガ ヤマト
タイプ:一般人タイプA
レベル:10
HP:108
MP:108
筋力:B+
耐久:B+
俊敏:B+
魔力:B+
精神:B+
固有スキル:幻想拡張
スキル:ソロアタッカー ステータス+




