めいちゃん
私の名前はうさうさ。
めいちゃんのぬいぐるみ。
おばあちゃんがめいちゃんのために作ったぬいぐるみ。
私の体はガーゼで出来てるの。
体は柔らかなベビーピンクで、お洋服は茶色なの。
お目々とお鼻とお口は刺繍で出来てるの。
お洋服のボタンとお花の柄も刺繍なの。
だから、めいちゃんがお口にいれても大丈夫なの。
ちゃんと洗えるのよ。
でも、ぽかぽかに乾かしてね。
めいちゃんは私をよく投げるの。
お母さんが渡してもポイ。
お父さんが渡してもポイ。
おばあちゃんが渡してもポイ。
でも、渡さないと泣いちゃうの。
今日も私の耳を持ってポイ。
めいちゃんは私をよく咥えるの。
美味しいのかしらちゅうちゅう。
私の右耳をちゅうちゅう。
私のお手手をちゅうちゅう。
お母さんが私を洗ってくれるの。
お日様はやく乾かしてね。
めいちゃんが待ってるんだから。
めいちゃんは私を押しつぶすの。
うまく立てなくて私の上にどすん。
ごろごろ転がって私の上にどすん。
眠くなってうとうと私の上にどすん。
くぅくぅと寝息をたてるめいちゃん。
おやすみなさい。よい夢を。
めいちゃんは私を持って歩くの。
足を持ってうろうろ。
手を持ってうろうろ。
耳を持ってうろうろ。
ベビーカーのお出かけにもついて行くの。
めいちゃん寝ちゃって私を落としたの。
でも男の子が私を拾って渡してくれた。
やさしい子ね。
カバンについたカエルのキーホルダーが、
そうでしょう と、うれしそうに笑った。
めいちゃんは新しいオモチャに夢中なの。
積み木にボール。
ガラガラにお馬さん。
ティッシュにハンカチ。
そして、かわいいお人形。
着せ替えして、抱っこして、ご飯を食べさせてあげるの。
小さなお姉ちゃんね。
めいちゃんが泣いてる。
こけちゃったの?
眠くなったの?
怖かったの?
……さびしいの?
おばあちゃんがいないのね。
会えないのね。
さびしいのね。
かなしいのね。
泣いていいの。私の体はガーゼだもの。
めいちゃんの涙はぜんぶ受け止めてあげるわ。
めいちゃんは忙しいの。
ようちえんに行くの。
ピアノをひいてお歌を歌うの。
外国人とおしゃべりに行くの。
楽しそうにめいちゃんが笑うの。
めいちゃんが笑うと嬉しいわ。
がんばって。部屋のすみで応援してるわ。
「わぁ、懐かしい」
とっても若いお母さんが私を見て笑う。
ちがう。めいちゃんだ。
あの笑顔はめいちゃんだ。
大きくなったのね。
「あら、まだ持ってたの。もう汚いから捨てちゃいなさい」
おばあちゃんに似たお母さんが私を見て言った。
私のピンクの体はうすいまだらな茶色。
お口とボタンの刺繍はほどけてる。
体のあちこちは何度も縫ってぼろぼろ。
めいちゃんは辛そうに眉をぎゅっとよせた。
いいの。
私は役目を終えたの。
だから、いいの。
悲しまなくていいの。
めいちゃんは私を手に取ってぎゅうと抱いてくれた。
「今までありがとう、うさうさ」
私もありがとう。
めいちゃんの涙目を受け止めるのもこれで最後ね。
ハンカチに包まれて、たくさんの紙や文房具やおもちゃたちと一緒に透明のふくろに入れられた。
ばいばい、めいちゃん。
たくさん抱っこしてくれて、ありがとう。
たくさん連れて行ってくれて、ありがとう。
たくさん遊んでくれて、ありがとう。
たくさん、たくさん、たくさん、ありがとう。
だいすきよ、めいちゃん。
お読みくださりありがとうございます。




