21K:食事、調べもの、訓練
まだまだ陽菜視点
□-252℃□
目を開けると、見慣れた天井ではなく、周囲を見渡すと、高そうなものがそこかしこにあった。
……………
ええっと……
「あ。そっか、異世界……」
一気に覚醒した頭が、ここが何処なのか理解した。暫くぼうっとしていると、同室の茉璃ちゃんがいないことに気がついた。
何処に行ったんだろう?
探しに行くためにベッドから降りると、部屋の扉が開いた。
「あ、陽菜起きた?」
「ん? 起きてるのか。それならちょうどいいな」
茉璃ちゃんと仁君が入って来た。どうやら、茉璃ちゃんは隣の仁君の所に行っていたようだ。
そのまま今日のミーティングになった。
今日の所は、午前は図書室でこの世界について色々調べ、午後はそれぞれ戦闘訓練と魔法訓練を受けることにした。
「ま、とりあえずは朝食だな。用意されてるらしいから、食べに行くぞ」
「異世界の料理ってどんな感じなんだろ。仁は想像つく?」
「向こうとあんまり変わりなければいいと願うだけだな」
仁君と茉璃ちゃんは、こっちでは名字呼びは一般的ではないと聞いて、名前で呼びあうようになった。
名前で呼びあえて、茉璃ちゃんは凄く嬉しそうだった。
何処で食べるのか分からないので、先を行く仁君と茉璃ちゃんについて行くと、かなり長いテーブルが五つほどある食堂のような場所についた。
とりあえず、既に人が来ていたのを見た仁君と茉璃ちゃんが話し合って、委員長である山本さんの所に行くことになった。
「委員長、隣いいか?」
「いいけど、いい加減委員長呼び止めてくれないかしら?」
「委員長は、委員長じゃん」
ニコニコ笑いながら言う茉璃ちゃんを見た山本さんが、ため息をついた。どうやら、諦めたみたいだ。とりあえず、席について朝食を待つ。
異世界の料理かぁ………どんなのだろう? 少し気になる。
「やぁ、陽菜。おはよう」
「あ、星也君。おはよう」
後ろにいつも一緒にいる、男子達と女子達を連れた星也君が、わざわざ挨拶に来た。
女の子達の視線がなんだか険しいけど、どうしたんだろう?
「向こうで一緒に朝食はどうかな?」
「ううん。こっちでいいよ、茉璃ちゃん達もいるし」
「ということだから、いった、いった」
茉璃ちゃん。もう少し柔らかく断ろうよ、手でしっしってやるのは、失礼だと思うよ。
茉璃ちゃんの行動に苦笑いしつつ、星也君にもう一度丁寧に謝ると、元いた席に戻って行った。
女の子達の視線がもっと険しくなったけど、どうしてだろう?
「はぁー嫌になる。なんなのよアイツら」
「ほっとけ、関わらないのが一番だ」
「でもさぁ、完全に陽菜のこと狙ってるし、何もしてないのにあの取り巻き達陽菜のこと目の敵にしてるし」
「まぁ、変に力をつけたせいで何かしてくる可能性もあるな。前までは俺や茉璃が着いてたから良かったが……予定より早めに旅に出るか」
「……えっと、二人共なんの話してるの?」
「「大丈夫だから、任せとけ(いて)」」
うーん。よく分からないけど、任せておけばなんとかなるみたいだから、二人に任せておこう。
朝食が運ばれてきたけど、特に向こうとの違いはないようだ。でも、豚の丸焼きの豚から角が生えているし、野菜の色もちょっと違っていたりする。
殆どのクラスメイトが、そのちょっとの違いに食べるのを躊躇っている。まぁ、青い野菜のサラダは、あんまり食べる気がおきないんだよね。
「味付けにかなりのくせがあるな。ま、食えないほどじゃないし、食ってりゃ慣れるな」
次々と料理を口に運ぶ仁君。
さ、流石は仁君
外国の変な料理とかを、凍真くんに食べさせられてかからかな? この程度では動じないんだね。とりあえず、私も食べてみる。
……………
うん。食べられないわけじゃない。うん。
朝食を食べた後は、三人で……というか、委員長と他に何人か、それに眼鏡をしたオタク軍団の一人も来ている。
「とりあえず、こんな所か」
「みたいね」
「うん」
一通り調べてみると、この世界は四つの大陸、『地王大陸』『幻想大陸』『魔人大陸』『氷雪大陸』からなっていて、他は海と小さな島らしい。
そして、私達のいるこのカルナラ王国があるのは、地王大陸。この大陸にあるのは殆どが人間の国らしいけど、大陸の端に獣人の国があるらしい。
「とりあえず、隣国のリビド帝国は一応避けたほうがいいな、悪いことしか書かれてない」
「だね、戦争を企んでるなんてろくでもないところに違いないし」
「うん。なんだか怖そう」
他にも色々調べたけど、重要なのがどれかよく分からなかったので、メモだけして置いておくことになった。
昼食も特に何もなく食べ終わり、いよいよ訓練の時間になった。仁君と茉璃ちゃんと別れて、ルーメルさんの所にやって来た。
「こんにちは、ルーメルさん」
「おや。直接私の所に来たんですか?」
「え?」
「あ、もしかして聞いてませんか? 庭で魔法についても武器についても教えるって連絡したハズですが……」
き、聞いてないんですけど……
「ふふ。まぁでも、これも何かの縁ということで、私が魔法をお教えします」
ルーメルさんに従って、魔法を習っていく。ルーメルさんが言うには、魔法を発動させるには魔力と、呪文の詠唱、魔法名を言うことで発動するらしい。
「といっても、一度使ったことのある魔法は、魔力を多めに使用するかわりに、詠唱破棄や、無詠唱で発動させられます」
「一度使わなきゃいけないんですか?」
正直、この呪文を言うのは恥ずかしい。なんていうか、前の世界なら、言ったら殆どの人から変な目で見られそうな感じの文なのだ。
恥ずかしいので魔力を多く使うけど、無詠唱や詠唱破棄で使いたい。
「いえ、私の師匠が言ってたんですが、必要なのはイメージで、呪文の詠唱はあくまでそのイメージを簡単にするものなんです。だから、イメージさえしっかりしていて、魔力さえあれば発動します」
成る程。そういうことなら、多分大丈夫だ。なんせ、凍真君と一緒に、ファンタジー物のアニメとか漫画見ていたから、魔法と言われれば結構思い付く。
さっそく試してみると、上手くいった。まぁでも、一応呪文のほうも覚えておこうかな、メモメモ。
「陽菜さん上手ですね、魔力操作が上手ければ上手いほど、魔法や魔道具なんかを使う時の魔力が減りますから、しっかりやっておいて損はないですよ」
「はい!」
ルーメルさんから、魔力操作の鍛え方を教えてもらい、それをやってみる。少し難しいけど、出来ないほどじゃない。
今後も頑張って訓練して、仁君や茉璃ちゃんの役にたてるようにならなくちゃ!




