3.呼び声
少々強引ですがご勘弁を。
「―――、――フ、起きろアルフ!」
「うわぁっ!?」
頭に鈍い痛みが響く。その衝撃で、僕は飛び起きた。
「あれっ、確か赤い水に……それにここは」
見覚えのある体育館。嫌な思い出がこびりつく場所。
「ったく、やっと起きたか」
「君は、タケル!?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこにいたのは手をグーパーさせる男の子、西寺武がいた。僕の転校前の学校での親友だ。その様子から察するに、僕を殴って起こしたらしい。
「なんだ君はって、きもちわりぃ。まーだ寝ぼけてんのか?」
「でも、タケルは……」
その続きを言おうとして、口をつぐんだ。言ってはならない。そんな気がした。
「俺がどうしたって?」
「あっ、いや、なんでもない」
タケルの姿は、何も変わっていなかった。それはあり得ないことなのに。だって、あの時……
「なぁに辛気くせぇ顔してんだよ。それより、これから面白いショーが始まるってよ。っと、噂をすればだ。始まったぞ」
言われてステージを見ると、人間サイズのシルクハットを被った木偶人形がいつの間にか出現していた。その姿を見て、思わず吐き気がした。
「はーっ、どうやって動いてんだあれ?」
隣では関心したようにタケルが呟いている。まさか、あれを覚えていないのか。いや、よくよく考えてみればここは最初からおかしい。まるでこれでは、あの時を繰り返しているような……
――ッ!なぜ今まで気づかなかった!
まずい、このままじゃタケルが――
「おいっ、どうなってんだよこれ!」
くそっ、手遅れだった。ステージの上でタケルが檻に閉じ込められている。こうなるのはわかっていた。どうして思い出せなかったんだっ。
獄中遊戯第一の犠牲者、西寺武。見せしめの惨殺、征服の声、平穏の破壊。あの時もヒントはあったんだ。なのに、どうして。また、諦めるしかないなんて……。
『血を継ぐものよ。真に天王司たらんとするならば、前を見よ』
……そうだ、僕は天王司だ。諦めるな。それが天王司の宿命だ。
『剣を取れ。我が力を授けよう』
助けるんだ。救って見せるんだ。僕の手で全てを。僕は、天王司だから。
「アルフ!?その剣は――」
「安心して、タケル。今、助けるから」
気づけば、手の中にあった光輝く剣。雷鳴轟かすその剣で、人形ごと檻を切り裂く。
白い輝きが広がり、闇を払う。純白に染まる世界。そして――
…………
「タケル!?」
「おおっと、ようやく目覚めたか」
勢いよく飛び起きると、そこはベッドの上だった。隣の椅子にはオーランドの分身が腰かけている。
「それにしても、君のその剣は」
膝の上に重みを感じて見ると、そこには、青白い燐光を放つ黄金の剣があった。
天王司アルフの過去の獄中遊戯についてはいつか気が向いたら別作で書きます。




