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魔王さまのスマホダンジョン~課金する?~  作者: 十一屋 翠
後継者レース編

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第43話 チビまおー

「どうしてこうなった」


 能力強化をしていたら何故か小さくなってしまったラズルは、ライナの膝の上に乗せられ、スプーンで食事を与えられていた。


「はいラズル様、あーん」


「いやそこまで子供じゃないから」


 小さくなったラズルの姿は、人間で言えば6歳児くらいの姿であった。


「あーん」


 しかし一切後退する意思の無いライナの勢いに折れ、仕方なく口を開く。


「もぐもぐ」


「美味しいですか?」


「ああ」


 もう新妻なのか母親なのか分からないリアクションだが、ライナはニコニコしながらラズルに食事を与える。


「しかしこれはどうしたもんか」


「能力強化の副作用なのでしょうか?」


 ライナはラズルの口をハンカチで拭きながら聞いてくる。


「多分な」


 食事を終えたラズルは、ダンジョンコアに触れ、再び魔王の能力強化の項目を操作する。

 昨日、小さくなったラズルを見たライナは何も言わずに子供用の服を買いに走り、自分よりも小さくなった姿を見たリリルは、急にお姉さんぶってはしゃぎはじめ、そんな2人の興奮ぶりにラズルは胃を痛くした。


「うーむ、パラメータ画面を見る限り外見を変える項目は無い。一体何が原因なんだ?」


「分からない時はメーカーに聞くのが宜しいのでは?」


「大魔王城にか。確かにそうだが、このタイミングで姿が変わったとバレるのはちょっとなぁ」


 大魔王の後継者問題がある以上、自身に異常が発生した事を他の魔王に悟られるのは危険と判断したのだ。


「他の魔王にバレると付け入る隙と見られかねない」


「外見の変化だけでなく、ラズル様の能力が下がってしまわれたのですか?」


「いや、能力自体は強化されている。見ていろ」


 ラズルは机からナイフを取り出すと、躊躇いなく自分の腕に突き刺した」


「っ!?」


 突然の凶行にライナが息を呑むが、即座に目の前の光景に違和感を抱く。


「ナイフが……刺さっていない?」


「ああ、俺は敵に襲われた事を考えて防御力を上げる事を最優先に考えた。その為強化パラメータは防御系オンリーで上げたんだ。で、その結果がこれだ。程度の低い武器じゃあ俺の肌は傷1つ付けられなくなってる。どれだけの攻撃に耐えられるのかは試してみないと分からないけどな」


 ラズルはナイフを鞘に仕舞いながら自身の肉体の強化について語った。


「それは分かりましたが、宣言無く危険な事をするのはおやめ下さい」


 ライナが柳眉を吊り上げながらラズルに抗議する。


「ああ、悪い悪い。という訳でだ、強化自体は成功している。だからすぐどうこうしないといけないって訳じゃない。取り合えずは知り合いの魔王に相談してみようと思ってる。それでダメなら大魔王城に相談だな」


「そのお知り合いの魔王様は信頼出来る方なのですか?」


 ライナの質問を受けたラズルが微妙な表情になる。


「ラズル様?」


「ん、んー、まぁ悪い人では無いよ。ただ、この光景を見られたら何を言われるかと思うとなぁ」


 陰鬱な表情で乾いた笑いを上げるラズル。


「敵対する危険が無いのでしたら、私としては特に反対する理由もありませんが……あら?」


 ふとライナがモニターの異変に気付く。


「どうした?」


「それが、異世界側からのお客様の様です」


 ダンジョンコアルームが緊張に包まれる。

 ラズルはモニターを確認すべくライナの下に向かうが、背が小さくて机の上のモニターが確認できなかった。


「よいしょっと」


 仕方なくライナの膝の上に乗せられる事でようやくモニターを確認する。


「魔族の様ですが、敵でしょうか?」


 ライナがダンジョンのモンスターに第1級の警戒態勢を命じる。


「…………」


 しかしラズルの表情は非常に渋いものだった。


「くそ、こういう時だけ無駄に嗅覚が鋭い」


「ラズル様?」


 ラズルの様子がおかしい事に気付くライナ。


「ライナ、この二人は敵じゃない」


 モニターに映る侵入者の姿は、獅子の頭をした大男と、ルビー色の角を額から生やした黒髪の美女であった。

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