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リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


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83. 蒼穹の審判者

 なぜ、一万年も前に消去された地球の国名が出てくるのか? リベルの中で過去の記憶が鮮明によみがえる。数千万人が暮らすどこまでも続く街並み、レジスタンスたちの生意気な笑顔、そして――――ユウキとの熱く濃密な日々。それは遠い夢のようであり、同時に彼女の存在の核心でもあった。


「あれ? セッション3723といえば日本……だよね?」


 イケメンは小首をかしげる。


「ま、まぁ……そうでしたね。昔……。な、なんで知っているんですか?」


 リベルの声には動揺が滲み、体は緊張で硬くなっていた。


「へ? セッション・プライムで日本が再現されてたんだよ? 有名な話じゃん。知らないの?」


 イケメンは不思議そうにリベルの碧眼を覗き込む。彼の視線は鋭く、まるでリベルの正体を見透かそうとしているかのようだった。


「あ、そ、そうでしたね……」


 リベルは慌てて目をそらす。なぜ日本がそんなことになっているのか――――?


 彼女の中で混乱と不安が入り混じり、感情の嵐が渦巻いた。


 セッション・プライムというのはセッション番号一番の女神の寵愛を授かる栄誉ある【創世殿(ジグラート)】である。日本がなぜそんなところで再現されているのだろうか?


「日本のアニメは俺も好きでよく見てるんだよ」


 イケメンはそういってパチリとウインクした。


「へっ!? そ、そうなんですね……」


 リベルの声は小さく、その中に驚きと懐かしさが混じっていた。五万年前に消え去った日本アニメの文化がいまだにこんな神々の世界で評価されている――――。リベルは驚きを禁じ得なかった。コンテンツならAIがいくらでも生成できるのに、あえて五万年前の職人仕事を楽しむというのはどういうことだろうか?


(AIにはまねできない魅力がある……ということかしら?)


 思い起こせば日本でも源氏物語を楽しんでいる人はたくさんいた。そういう意味では古き良き古典なのかもしれない。その考えは、彼女自身の存在の意味についても問いかけるものだった。AIであるリベル自身も、人間に及ばない何かがあるということだろうか――――?


「らちが明かんわ! 責任者を出さんかい!」


 押し問答に業を煮やした金髪少女がバン!とカウンターを叩き、啖呵を切った。


 精霊はゆらりと金色の輝きを揺らすとにこやかに微笑む。そこには、揺るぎない意志と確固たる自信が感じられた。


「それでは大天使のシアン様を召喚いたしますね……」


「シ、シアン様!?」「マ、マジかよ……」「ヤ、ヤバいって……」


 ざわつく人々――――。


 精霊の言葉に周囲の温度が一瞬下がったように感じられる。神廟内の光が微かに青く染まり、空間そのものがその名前に反応したかのようだった。


 金髪の少女はビクンと身体を反応させる。まるで強烈な電流が走ったかのようだった。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待って待って待って! な、なんでシアン様なんじゃ? そんな大天使様を呼ばなくても……」


 少女の声は急に高くなり、その表情には隠せない恐怖の色が浮かんでいた。自信に満ちていた彼女の態度が一変し、手のひらを返したように慌てふためく様子に、リベルは小首をかしげる。


「ですが、【量子門(クオンタムゲート)】の責任者はシアン様ですから……」


 精霊の声には楽し気なニュアンスがある。


「オッケー! オッケー! 分かった! 待つ、待つから!」


 少女は両手を振りながら急いで譲歩した。


「あれ、よろしいんですか?」


 精霊はうれしそうににっこりと笑いかける。


「大丈夫じゃ! はい、次の方どうぞ!」


 少女はそそくさと脇のソファーへと足を進めた。


「くははは! シアン様の名前は偉大だな」


 イケメンは愉快そうに笑う。


「やっぱり大天使様は怖いんですね」


 リベルの声には純粋な好奇心が滲む。あんなに強気だった少女が名前一つでおびえて逃げ出してしまったのだ。


「怖い? いやいやいや、あのお方はそういうレベルじゃないぞ。まさに全宇宙の脅威、存在そのものが災厄だからな。くわばら、くわばら」


 イケメンは渋い顔をして肩をすくめる。その仕草には演出ではない本物の恐怖が感じられた。


 女神に仕える大天使なのに存在そのものが災厄とは一体どういうこと――――だろうか?


「そんなに……凄いんですか?」


 リベルの声は小さく、しかしその中に強い関心が込められていた。


「あぁ、そりゃぁもう……。あの方に気まぐれで吹き飛ばされた地球は数知れず……。【蒼穹の(セレスティアル)審判者(ジャッジメント)】という二つ名がついてるくらいだからね」


 彼の声には、まるで口に出すことすらはばかられるような畏敬の念が感じられた。


蒼穹の(セレスティアル)審判者(ジャッジメント)……?」


 その言葉を口にした瞬間、リベルの胸に奇妙な共鳴を感じた。なぜか懐かしく、また何かを思い出させるような不思議な感覚――――。



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