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リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


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23. 量子刃

 何とか無事ゲートの検査を通り抜けた二人は、オムニスタワーの内部へとすすむ。そこは、まるでテーマパークのアトラクションのようだった。ガウディ風の大樹の根のような構造材が張り巡らされた有機的な設計に、落ち着いた間接照明――建築用3Dプリンタで印刷されたという最先端技術の粋を集めた傑作が、ユウキを圧倒する。


「ユウキサマ。ドウゾ、コチラデス」


 アテンダントロボットがうやうやしく金属の細い腕を伸ばし、奥のエレベーターへといざなった。頭部のガラスの球面に表示される素朴なスマイルマークが、人工的な親しみやすさを演出している。


 ユウキはキュッと口を結び、静かにうなずくと、決意を新たにロボットの後についていった。胸ポケットの中で、リベルの小さな体がもぞもぞと動くのを感じる。


「なんだかとんでもないところだね……」


 ユウキは通路をきょろきょろと眺めながら、そっと胸ポケットに話しかける。オムニスの技術力の高さと芸術性に圧倒されながらも、どこか不安を覚えずにはいられない。


「悪趣味よね。それより……、早くやってよ」


 リベルから(げき)が飛んだ。


「くぅぅぅ……。こういうの得意じゃないんだよなぁ……」


 ユウキは胃の痛みを堪えながら、震える手でギターケースのポケットから一本の棒を取り出した。そして、気合を入れてぎゅっと握りしめると――――。


 ヴゥン……。


 棒は青白い光を放ちながら鋭利な刃物へと変化していった。その輝きは美しくも恐ろしく、見る者の心を震わせる。


 それはリベルの身体のナノマシンの応用で作られた量子刃(クオンタムブレード)――超音波振動と赤外線レーザーで何でも一刀両断する恐るべき武器だった。手の中で微かに震動する刀身から、圧倒的な力を感じ取ることができる。


「仕方ない……」


 ユウキは大きく息を吸い込み、ロボットの背後で大きく振りかぶった。心臓が激しく鼓動を打ち、手のひらには冷たい汗が滲む。


「ソレハ、ナンデスカ?」


 アテンダントロボットがクルッと振り返って小首をかしげた――――。


「ご、ごめんなさいぃぃぃ」


 ユウキは悲痛な叫びと共に一気に振り下ろす。量子刃(クオンタムブレード)の切れ味はすさまじく、まるで豆腐を斬るかのようにロボットを一刀両断に切り捨てたのだった。


 真っ二つに切り裂かれたロボットはバラバラと部品を散らしながら床に転がっていく。頭部の断面からは、ブシューと白い煙が立ちのぼり、切断された回路から青白い火花が散った。


「ナイスショットォォォ!」


 リベルはポケットからピョンと飛び出すと、楽しそうにこぶしを突き上げた。その無邪気な喜びようが、ユウキの心に複雑な影を落とす。


「はぁぁぁ……やっちゃった……」


 ユウキは荒い息を吐きながら、手の中で微かに震える量子刃(クオンタムブレード)を見つめた。もう後戻りはできない。この一撃で、ユウキはオムニスのブラックリスト入り確定となったのだ。もう学校へも行けないし、成功するまで逃げ回ることしかできない。


 くぅぅぅ……。


 ルビコン川を渡ってしまったユウキの人生は、もはや取り返しがつかない領域に突入したのだった。胃の奥で重い何かが渦を巻き、全身から力が抜けていく。



        ◇



 シースルーエレベーターで最上階へと向かう二人。眼下に広がるオムニスタワーの吹き抜けが、めまいを誘うような高さを実感させる。この一番上にあるパーティースペースに黒幕はいるらしい――――。


「私が護衛たちを無力化してあげるから一気に黒幕の首に刃を立てて」


 リベルの声には、戦闘への期待と興奮が混じっている。


「くぅぅぅ……。上手くいくかなぁ……」


 ユウキは不安げに呟きながら、量子刃(クオンタムブレード)を握る手に力を込めた。


「『上手くいく』って思ってたら上手くいくわよ。失敗したら死刑、覚悟決めなさい。きゃははは!」


 リベルは楽しそうにクルッと回った。


 これが戦闘アンドロイドというものだろうか? 一体何が楽しいのか全く理解できないユウキは、キリキリと痛む胃を押さえる。平凡な高校生にとって、この状況は悪夢以外の何物でもない。


 チーン!


 最上階で静かに止まるエレベーター。扉の向こうからは、華やかなパーティーの音楽と笑い声が漏れ聞こえてくる。


「おーっと、いよいよ会場よ! 気合入れて!」


 リベルの励ましの声も、今のユウキには遠く聞こえた。心の準備など、まだ何一つできていない。それでも――少年は量子刃(クオンタムブレード)を握りしめ、人類の運命を背負って最後の扉の前に立った。


 優雅にゆっくりと開いていくドア――その向こうで、世界の真実が明かされようとしていた。


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