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リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


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115/130

115. 勝利のチェストパス

 しかし――――。


 ユウキは一歩も引かない。宇宙最強の【蒼穹の(セレスティアル)審判者(ジャッジメント)】とはいえ、完全無欠ではないことは、自分のシールドで証明されたではないか。神話は、崩せる。


 ユウキは深呼吸をして、静かに宣言した。


「じゃあ、勝って日本を取り戻させてもらいますね?」


 そのまっすぐな瞳には揺るがぬ決意が映っている。


「きゃははは! 『勝つ』だって!」


 シアンの嘲笑が響き渡った。


「斬られた生首持って何言ってんの? 現実が見えてないのはどっちかしら?」


 シアンの言葉は正しかった。リベルは首だけの状態。おびえるレヴィアは既に戦闘不能。ユウキはただの素人。どう考えても、勝ち目などない。


 それでも――――、ユウキはリベルと視線を交わした。


 二人の間に、言葉を超えた理解が生まれる。正真正銘、最後のチャンス。自分たちだけじゃない、ケンタが、葛城が、数十億人の命運が、今、自分たちのワンアクションにかかっている。


 そして、二人はゆっくりと頷き合った――――。


 五万年の時を超えて結ばれた絆が、今、最後の賭けに出る。


「僕らの勝ちだ!!」


 ユウキは突如、バスケットボールをパスするように、リベルの生首をシアンに向けて投げつけた。


 それは常識を超えた、狂気じみた攻撃。誰が想像できただろう、生首を武器として使うなど。


「はぁっ!?」


 あまりにも予想外の、猟奇的とさえ言えるアタックに、シアンの反応が一瞬遅れた。


 空中を飛ぶリベルは犬歯を剥いて襲い掛かる。まるで獅子(しし)が獲物の喉笛に食らいつくような、原始的な殺意を秘めていた。


「キモい!!」


 シアンは反射的に手の甲でリベルの生首をはたき落とす――しかし、それこそがユウキとリベルの狙いだった。


 接触の瞬間、リベルの首はパァン!と破裂し砂鉄(ナノマシン)の砂煙へと分解する。一気に無数の細かいリベルがシアンを取り囲んだ。それは単なる砂粒ではない。意志を持ち、目的を持った、執念の結晶である。


「うぎゃーーっ!」


 突如として砂鉄(ナノマシン)の砂煙に包まれたシアンは、初めて本能的な危険を感じた。打ち付けた手の甲にベットリと張り付いた黒い粒子も、まるで生きているかのように執念をもって(うごめ)いている。


 それは悪夢だった。無数の微小な侵入者が、彼女の完璧な防御を突破しようと必死に蠕動(ぜんどう)している。皮膚を這い、毛穴を探り、体内への侵入口を探していた。


「キモい! キモい! キモ〜い!!」


 シアンは全身を(あお)い炎で包み込む。神の炎が燃え上がり、一瞬にしてリベルの砂鉄(ナノマシン)を焼き払う。青い火花が夜空に舞い上がり、まるで真夏の花火のように散っていく。


「ふぅ……。一体なんてことすんのよ!」


 シアンは髪を整えながら、ギロリとユウキをにらんだ。


「でも、残念だったわね……。最後の悪あがきもこれで終わり。僕の勝利は揺るがないのよ? ふふっ」


 しかし――――。


 ユウキは微笑んでいる。


 それは敗者の諦念ではない。勝利の確信に満ちた、静かな笑みだった。


「は? 何なのよ、その顔!?」


 シアンが苛立ちを露わにした、まさにその瞬間――――。


「チェックメイト♡」


 甘く、そして冷たい囁きが耳元で響いた。


「へっ!?」


 振り返ったシアンの瞳に映ったのは、手のひらに収まるほど小さなリベルだった。フィギュアサイズの彼女は、全身を真っ青に燃え上がらせながら微笑んでいた。


 砂鉄の煙幕は囮。その間に、リベルの本体は密かに背後へと回り込んでいたのだ。小さな体には、全てを終わらせる究極の力【審判者(ジャッジメント)滅殺砲(スレイヤー)】が凝縮されている。


「ひっ!?」


 刹那(せつな)、世界が鮮烈な青に染まった――――。


 それは全てをリセットする死の青であり、終焉の青であり、そして新生の青。


 天地を揺るがす大爆発が巻き起こり、すべてが閃光に呑み込まれていく。


 ズン!


 凄まじい衝撃波がユウキを吹き飛ばした。


「ぐはっ!?」


 もんどりうって転がるユウキ。


 何とか体勢を立て直し、かろうじて目を開けると――――。


 そこには、頭を失い、ただ立ち尽くすシアンのボディがあった。ボロボロになったワンピースが風に揺れ、まるで魂の抜けた人形のように、ゆらりと揺れている。月光がその姿を照らし、美しくも哀しい最期の瞬間を演出していた。


「いぇーい!」


 小さなリベルが、有頂天になってユウキに飛びついてきた。


「や、やったのか?」


 ユウキの声は震えていた。信じられない、いや、信じたくないほどの奇跡。宇宙最強を、本当に倒したのか?


「もう、バッチリよ! ふふふ」


 リベルの笑顔は最高に輝いていた。それは誇るような笑みではない。大切な人を守り抜いた、安堵と幸福の笑顔だった。


「や、やったぁ……。やったんだぁ!」


 ユウキは渾身の力を込めて拳を突き上げる。


 ついに日本を、失われた時間を取り戻すことができる――――。


 ユウキは両こぶしを固く握りしめ、プルプルと震えた。


 それは何度も何度も失敗して、ついにたどり着いた全てをチャラにできる究極の勝利である。


「くぅぅぅぅ……やったよ!」「うんうん……」


 ユウキの感激する様子にリベルは幸せそうにうなずいた。


「僕らの勝ちだ!」「そう! 僕らは世界最強だゾ!」


「最強!? ……。ふふっ」「くふふっ」


「ヒャッホーーイ!!」「YEAR!!」


 ユウキは両手で優しく包んだリベルを高く掲げ、クルクルッと回った。


 最後まであきらめなかった二人の完全勝利――――。


 素晴らしき夢の勝利に二人は酔いしれる。


「やったよぉ……」「やったのよ……」


 そして見つめあう二人――――。


 その瞬間、二人の間に流れた感情は、言葉では表現できないものだった。それは愛であり、友情であり、絆とも呼べる何か。宇宙の法則さえも超越した、人間とAIの純粋な心の繋がりだった。


 歓喜に包まれる二人の向こうで、シアンのボディがゆっくりと前のめりに倒れていく。それは宇宙の在り方にまで変革をもたらす、新たな夜明けの始まりだった。


 ハグする二人を月が優しく照らす――――。


 長い長い戦いが、ついに終わりを迎えた。石垣島の焼け焦げた大地に、新たな希望の種が生まれた瞬間だった。


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