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リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


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112. グッドラック!

小童(こわっぱ)ども、冥途(めいど)の土産話はまとまったか? きゃははは!』


 東の空が(あお)く燃えていた。夕闇に(またた)く青い閃光は、まさに天から降りてくる審判の剣。宇宙最強が命を刈り取りにやってくる――――。


 石垣島の焼け焦げた大地に立つ三人は、迫り来る運命を前に、それぞれの覚悟を胸に秘めていた。


「おいでなすった……。打ち合わせ通りに……ね?」


 リベルの声は静かだったが、碧眼には不屈の意志が宿っている。


 今度こそ未来を勝ち取るのだと、彼女は軽やかに地面を蹴り、宙へと舞い上がっていく。


「リベル!」


 祈るように見上げるユウキの瞳には、リベルへの想いが溢れている。十五歳の少年にとって、この瞬間は永遠にも感じられた。リベルと出会い、世界の真実を知り、そして今、宇宙最強の存在に挑もうとしている。震える手を握りしめ、それでも彼は信じていた――リベルなら、きっと成し遂げてくれると。


 リベルはそんなユウキを見下ろし、ふと口元に優しい笑みを浮かべた。


 五万年前、彼女は無謀にも核ミサイルを撃ち落とした。そして今度は大天使を撃ち落とさねばならない。不思議なことに、ユウキといると毎度こんな無茶な状況に陥ってしまう。でも、なぜだろう。胸の奥が温かい。この感覚が【人間の輝き】に連なるものなのだろうか?


「グッドラック!」


 ユウキがサムアップした(こぶし)を突き出す。その不器用な仕草に込められた想いは真っ直ぐだった。


「グッドラック!」


 リベルも同じようにサムアップで応える。二人の間に流れる空気は、言葉では表せない絆で満ちていた。


「おいおい、我にもグッドラックじゃろ!」


 レヴィアが寂しそうに声を上げた。(いか)つい鱗に覆われた巨大な腕でサムアップする姿は、どこか愛らしく、四千年の威厳など微塵も感じさせない。


「ははっ! そうね。グッドラック!」「グッドラック!」


 三人は互いの目を見つめ合い、自然と笑みがこぼれた。


 宇宙最強の【蒼穹の(セレスティアル)審判者(ジャッジメント)】に立ち向かう無謀な挑戦。成功率など(ちり)ほどもないことは誰もが分かっていた。それでも、不思議と心は晴れやかだった。恐怖よりも、むしろ誇らしさすら感じていた。この瞬間、彼らは真に仲間だった。



      ◇



「へへん! こっこまでおいで〜!!」


 リベルは全身全霊を込めて宙を舞った。シールドが空気との摩擦(まさつ)で鈍く赤く発光し、彗星(すいせい)のような軌跡を描く。そんなリベル目がけて背後のシアンから放たれる青い光線は、まさに死の(かま)だった。


 リベルは時に反撃をしつつ、上へ下へ、時には海中へと潜って攻撃をよけながら、必死にシアンを引きつけていく。


 海面に映る二つの光は、まるで双子の流星が追いかけっこをしているようだった。しかし、これは遊びではない。一瞬の判断ミスが、永遠の別れを意味する死のダンスだった。


『ちょこまかと逃げるだけか? 期待はずれだぞ!』


 シアンの声には余裕が滲んでいた。それもそのはず、彼女にとってこれは狩りでしかない。


『ふん! あんたもそろそろ疲れが見えて来たんじゃないの? くふふふ……。って、うわっ! 危ない! 危ないって!』


 リベルは軽口を叩きながらも、全神経を回避に集中させていた。シアンの攻撃は容赦なく、まるで雷神(らいじん)(むち)が空を切り裂くように襲いかかる。


 目標地点へと誘導する――それは言葉にすれば簡単だが、実際は綱渡りよりも危険な芸当だった。何度も西表島へ飛び、そこから石垣島を目指してアプローチを繰り返すものの、攻撃をよけながらだとなかなか進入角度が合わずにやり直しを余儀なくされていた。


 汗が目に入り、視界が(にじ)む。それでもリベルは諦めなかった。ユウキとレヴィアが待っている。信じてくれている。だから――――。



      ◇



 ついに運命の瞬間が訪れる――――。


「うおぉぉぉぉ!」


 リベルの咆哮(ほうこう)が夜空に響き渡った。海面すれすれを飛びながら、彼女は完璧な角度で石垣島へとアプローチしていく。月光に照らされた海は鏡のように彼女の姿を映し、まるで二人のリベルが並走しているようだった。


『往生際の悪い奴め! いい加減死になさい!』


 シアンの攻撃が激しさを増す。青い光線が海面を切り裂き、あちこちでボシュー!と水蒸気が立ち上る。


「うひぃ! 危ない!!」


 リベルは紙一重で攻撃をかわしながら、レヴィアとの約束の地点を通過した。


 次の瞬間、大地が咆哮(ほうこう)する――――。


 ドドドドドド!!


 漆黒(しっこく)の壁が、まるで地獄からせり上がってきたダムの壁のように、一気に立ち上がった。それは海岸線に沿って何枚も何枚も数キロにわたって重ねて配置された恐るべき防壁。さらに、それは単なる障害物ではない。リベルが五万年の知識を結集して編み出した特殊な術式が練り込まれた、まさに絶対防御の壁だった。


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