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リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


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110. お前の母さんデベソ!

「じゃ、じゃあ、これならどうだ!」


 リベルは何かを思いついたように、再びこぶしに力を込める。諦めきれない。諦めたくない。戦士としての意地が、まだ彼女を突き動かしていた。


「リベルぅ……逃げよ? マズいって……」


 ユウキは真っ青な顔でリベルの腕をつかんだ。リベルが必死に打開しようとしているのは痛いほどわかる。でも、どう見ても勝機など見えなかった。


『逃げるのか? 大口叩いたくせにショボいな! このビビリがぁぁぁ!』


 シアンが嬉しそうに煽る。まるで無邪気な子供が遊んでいるかのような口調だった。


「邪魔しないでっ! 死ねぃ!!」


 リベルはユウキの手を振りほどき、新たな攻撃を繰り出す。だが結果は同じ。全てが弾かれ、虚しく宙に散っていく。なぜ? どうして――――? 必死に原因を解析し続けるも、答えは見えてこない。五万年の経験と誇りが、この現実を受け入れることを拒絶していた。


「リベルってばぁ! レヴィアにも手伝ってもらおう。ねっ?」


 ユウキは必死に説得を試みる。リベルの気持ちは分かるがシアンはもう目前まで迫っているのだ。このままでは、二人とも殺されてしまう。


「レヴィア? あんなポンコツに何を頼れってのよ?!」


 激しい反応を返すリベル。だが彼女自身、このままでは道が開けないことは分かっている。


「三人寄れば文殊の知恵だよ。戦略的撤退……ねっ?」


 ユウキは小首をかしげ、リベルの碧い瞳をまっすぐに見つめた。その瞳には、彼女を想う優しさが宿っている。


 話している間にも、シアンは恐るべき速度で迫ってきているのだ。もはや弾道ミサイルすら凌駕する速さで、凄まじい衝撃波を纏いながら目前に迫る。その激しい輝きは、まさに死神の(かま)を思わせた。


「くぅぅぅぅ……」


 リベルは悔しさで唇を噛みしめる。無敗を誇ってきた自分が、こんなにも無力だなんて――――。


 奥歯を鳴らしながら、ついに石垣島への撤退を決断した。


 振り返ることなく空間の裂け目へと飛び込むリベルの瞳には、深い挫折の色がにじんでいた。プライドがずたずたに引き裂かれ、心の奥底で何かが音を立てて崩れていく。


 それでも――ユウキを守らなければならない。その想いだけが、彼女を前へと進ませていた。



      ◇



『やーい! ビビリがぁ! お前の母さんデベソ! きゃははは!』


 石垣島上空に戻ってきた二人は地球中に響き渡るテレパシーに渋い顔をしていた。そのひどく幼稚な罵詈雑言は、悪魔の嘲笑のようにリベルの心をえぐった。


「リベルの母さんって……誰?」


 ユウキはうんざりした様子で聞いてみる。


「さぁ? あいつ自身なんじゃないの?」


 リベルは口を尖らせ、肩をすくめた。自分の本体の幼なさに呆れながらも、それでも全く歯が立たなかった事実に押しつぶされそうだった。


「だよね……。ずいぶん頭弱くない?」


 ユウキはあえて鼻で嗤う。落ち込むリベル気分を何とか晴らしたかったのだ。


「あーっ! もうっ!」


 リベルは急にこぶしをブン!と振り、ギリギリっと奥歯を鳴らす。ありとあらゆる攻撃が通用しなかったことにどうしても納得がいかなかったのだ。戦士としてのアイデンティティが音を立てて崩れていく感覚に、心が千々(ちぢ)に乱れていた。


 この世界は複雑な条件式で成り立っている。だからありとあらゆるケースにヒットする組み合わせの術式でシアンのシールドを穿ったのだが、なぜか弾かれてしまう。それは自分の知らない特殊効果があるのか、それとももっと別な次元の仕組みがあるのか皆目見当がつかなかった。まるで1+1が2にならないみたいで途方に暮れてしまう。


「あーーーーっ! なんなのよぉ!!」


 リベルは頭を抱えて叫んだ。


「まぁまぁ、落ち着いて……」


 荒ぶるリベルを必死になだめるユウキ。


「……。ドラゴン! ドラゴンはどこ行った!?」


 リベルは腹立ちまぎれに叫び、辺りを見回した。


「あれ……、じゃないかな?」


 見れば大きな岩の陰で小さくなって頭を抱えている赤い影があった。まるで嵐を避ける小動物のように、か弱く震えている姿が見える。


「何やってのよ、あいつは……」


 リベルはムッとしながらその岩陰へと降り立った。


「うわぁぁぁ……、もう終わりじゃぁ……。全部終わりなんじゃぁぁぁ……」


 レヴィアはポトポトと涙をこぼしながら、泣き言をつぶやいていた。四千年の威厳は完全に消え失せ、ただの怯えた少女の姿がそこにあった。


「おい、ドラゴン! 泣いてる暇があったら手伝え!!」


 リベルはパンパン!とレヴィアの肩を叩く。


 しかし、レヴィアは振り向きもしない。


「手伝ってどうこうできる相手じゃなかろう。もう終わりじゃぁ……」


 その声は蚊の鳴くような弱々しさで、四千年の神としての誇りなど微塵も残っていない。


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