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034

 火の手は今や、街中に燃え広がっていた。

 燃え上がる街の炎に炙られて、夜空は煉獄のように紅く染まっている。

 巨大ハサミムカデの襲撃から何とか逃れた騎士隊長のイムザは、生き残った三名の部下と市民数人を率いて、教会へ急いでいた。

 門が突破された以上、もはや縋る先はそこしかない。

 神の聖なる力によって守られた教会ならば、或いは。

 情けない話だが、事ここに至ってはもはや奇跡を信じるより他にない。


 襲いかかってくる呪骸から市民たちを庇いつつ、先を急ぐ。

 しかし、教会まであと一歩というところで、大きなイッカクカブトの呪骸に遭遇してしまった。

 あっという間に部下の一人がやられ、残った二人とともに市民を背にして剣を構える。

 我が主よ、と。イムザは我知らず、祈りの聖句を口ずさんだ。

 そこへ。


『聖堂騎士か』


 ぎちぎちと肌の粟立つような音がイッカクカブトの背後の暗闇から響いた。

 現れたのは、襤褸を纏った影のような何か。

 ここまで来れば、もはや疑う余地はない。

 これが妖魔なのだろう。

 大人の男ほどの大きさがあるハサミムカデの呪骸を引きつれている。

 背後にいる市民たちが、恐怖に息を呑んだ。


 妖魔と二体の呪骸を睨みつけながら、イムザは剣を構えなおした。

 状況はすでに絶望を通り越している。

 だが。信仰の守護者たる聖堂騎士の誓いを立てた以上、妖魔に屈して市民を見捨てることなどできない。

 イムザは残った部下二人にちらと視線を送った。

 一人は力強い眼差しを返してくる。

 もう一人は駄目だった。恐怖に負けた顔をしている。剣を握りしめる手もぶるぶると震えていた。

 それでも。やってもらわねばならない。


『虫けらのように死ね。聖教徒』


 非情な覚悟を決めているイムザに、ギチギチと妖魔が告げた。

 その黒い片腕をイムザたちに伸ばすと、二体の呪骸が同時に飛び掛かってきた。

 イムザと部下たちが一斉に身構える。

 そこへ。


「やらせはしない!!」


 突然飛び出してきたシルフィが、叫びながらハサミムカデの呪骸を一刀のもとに両断した。


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