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033

 聖教徒を殺せと怒鳴りたてる声を無視して、シルフィは通りへと戻った。

 通りは惨劇で満ちていた。

 破られた正門から街の中へと雪崩れ込んだ呪骸の群れが人々を襲い、生きたまま喰らっている。

 篝火として燃やされていた薪があちこちに飛び散って、そこら中で火事が起こっていた。

 死肉を貪っていた蟲たちが、通りに姿を現したシルフィに気付いた。新鮮な餌を見つけて飛び掛かってくる。


 シルフィは襲いかかってくる蟲に対して、無造作に剣を振るった。

 先ほどまでは弾き飛ばすことが精一杯だったはずの彼女の剣は、あっさりと蟲たちの体を砕いた。

 まるで巨大な鉄塊でも叩きつけられたように、呪骸の体が弾け飛ぶ。

 あとには死骸すら残らない。

 ぐずぐずとした瘴気の塊になって地に落ちて、やがて夜風に吹かれて消えてゆく。

 それでも、呪骸化した蟲たちは次々とシルフィに飛び掛かった。

 動くもの全てを殺せとでもあるじに命じられているのだろう。

 そもそも、呪骸となった時点で生き物としての本能は失われている。

 呪骸には恐怖もなければ、命を惜しむこともしない。

 その肉体が取り返しもつかないほど破壊し尽くされるその瞬間まで、ただひたすら聖教徒を憎み、殺そうとする。主の中で響き続ける怨嗟の声に従って。


 呪骸を屠りながら、シルフィは通りを進んだ。

 その目前に昼間、森で出会ったのとほぼ同じ大きさのイッカクカブトの呪骸が現れた。

 ちょうど、誰かの遺体を貪っていたところらしい。

 イッカクカブトはシルフィに気付くと、その瞳を爛々と怒らせてまっしぐらに突進を始めた。

 馬上槍のような角が恐るべき速度でシルフィに迫る。

 彼女は突っ込んでくるそれを躱そうとする素振りすら見せず、剣を一閃した。

 イッカクカブトの角が砕け、頭部が吹き飛び、その体が地面に沈む。

 シルフィは無感動な瞳でイッカクカブトの死骸を見下ろした。

 その周囲には、人間の死体が積み重なっている。

 街の住民たちの、無残な死にざまを映した彼女の赤い瞳が奇妙に揺れた。

 お前もそうしろと、頭の中で声が叫んでいる。

 それをかき消すように頭を振って、シルフィは先を急いだ。


 これ以上、被害を拡大させないためにも。あの妖魔を滅ぼさなければならない。

 そのために、私はこの様になったのだ。

 だから決して、お前らの思い通りにはならない。

 胸の中でそう叫びながら。


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