025
「……なんでしょうか、今のは」
フェリン神父が呟くのを背中で聞きながら、シルフィは礼拝堂を飛び出した。
大きな樫造りの扉を蹴破るようにして通りへ出ると、そこにはダンテの姿があった。
「何があった」
「さぁな」
きつい口調で尋ねたシルフィに、彼は欠伸を漏らしながら答えた。
そこへもう一度、誰かの大きな声。悲鳴だけではなく、今度は怒号も混じっている。
「正門か」
声のした方角を見たシルフィの奥歯が、ぎりと音をたてる。
すぐさま、礼拝堂へと取って返す。
「し、シルフィさん?」
神父におろおろとした声を掛けられたが無視して、部屋へ急ぐ。
素早く着替えて、胸当てを着けると、空っぽの鞘を腰に吊った。
再び、彼女が礼拝堂に戻るとラクトの姿もあった。この騒ぎで目を覚ましたのだろう。
不安そうな顔でフェリン神父の腰にしがみついている。
「神父様、人々をこの礼拝堂へ集めてください」
「は、はい」
シルフィの指示に、フェリンは戸惑いながらも頷いた。
「姉ちゃん……もしかして」
神父の影から、ラクトが慄いたように訊いた。
外から聞こえてくる喧噪は先ほどよりも大きくなっている。
たとえ子供でも、何が起きているのかなど考えるまでもない。
「大丈夫だ。だが、教会からは出るな。神父様の傍にいるんだ」
ラクト少年を安心させるように頷いてから、シルフィは外へ出た。
「行くぞ」
そこで待っていたらしいダンテに命じるように言う。
「行くったって、お前。それで? 丸腰じゃねぇか」
彼は呆れたように、正門へ向かおうとするシルフィの腰にある空っぽの鞘を指さした。
「武器はその辺で手に入れる」
突っぱねるように答えて、シルフィは駆けだした。
「おーい。待てよー、そのままじゃ死ぬぞー」
その背中にダンテの気の抜けた声が掛かるが、彼女は立ち止まらなかった。




