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021

「うむ。旨い」


 焼いた練り肉を一口齧ったダンテが、満足そうに唸る。

 廻る小鹿亭の名物で、鶏の挽肉を、棒を包み込むように練りつけて焼いたものだ。

 旨そうにそれを頬張るダンテの横で、ラクトも自分の分に齧りついた。

 塩辛く味付けされた鳥の挽肉は香草や香辛料も練り込まれていて、噛めば噛むほど口の中に旨味が広がる。一緒に練り込まれている軟骨のコリコリとした食感も楽しい。

 ダンテは早々に一本目を食べきって、もう二本目に取り掛かっていた。


「良かったね」


「うむ」


 ラクトがそう声を掛けると、満足そうな返事が返ってきた。

 廻る小鹿亭に案内したところ、店はやはり営業していなかった。

 しばらく店の前で残念がっていると、そこへちょうど外へ出ていたらしい女将が戻ってきた。

 顔馴染みのラクトが事情を説明すると、彼女はせっかく来てくれた旅人だからといって残り少ない食材から名物である、この練り肉の棒焼きを作ってくれたのだった。

 ラクトにもおまけだといって、一本くれた。


「む」


「あ」


「お」


 二人で棒焼きを頬張りながら街をぶらぶらしていると、シルフィとばったり出くわした。

 彼女がやってきたのは、北門のある方角だ。


「……何をしている」


 棒焼きを頬張っているダンテに氷のような視線を向けて、シルフィが訊いた。


「買い食い。旨いぞ。お前も食うか?」


 聞き返しながら、ダンテは最後の一本を見せつけるように食べきる。


「ああ。すまん。これで最後だった」


 女将が作ってくれた棒焼きは全部で七本。

 女将は店に残っている食材を全部使ってしまったと言っていたから、交易が再会しない限り、もう作ることはできない。

 ケラケラと意地悪く笑うダンテに、シルフィは付き合いきれないとばかりに溜息を吐いていた。


「姉ちゃんは何処に行ってたの?」


「森だ」


 横からラクトが口を挟むと、彼女は短く答えた。

 それを聞いたラクトは目を輝かせて訊き返す。


「妖魔を倒したの?」


 それにシルフィはまさかと首を振る。


「少し、様子を見に行ってきただけだ」


「そんで? 何か成果は?」


 どうでも良さそうにダンテが訊いた。


「討伐隊だと思われる騎士の遺体を見つけた。弔ってもらおうと思う」


 言いながら、シルフィは手にしていた布の袋を持ち上げた。


「うげ。食欲の失せるようなもん拾ってくんじゃねえよ」


 中身が何であるのかを悟ったらしいダンテが、嫌そうに顔を顰める。


「それよりも」


 着いてこいと顎をしゃくって、シルフィが歩き出した。

 その先にあるのは、人気のない路地だ。

 ダンテが面倒そうに息を吐いてから、その後を追ってゆく。

 なんとなく、自分が聞いてはいけない話なのだろうなと察したラクトは、その場で二人を待つことにした。




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