013
「む」
詰め所の中に一歩踏み込んだ途端、シルフィは眉間に皺を寄せた。
中には、三人の騎士が詰めていた。
いずれも傷を負い、憔悴しきった顔をした男たちの視線が一斉に彼女へと集中する。
「誰だ?」
初めに口を開いたのは、三人の中でもっとも年配の騎士だった。
無精ひげの目立つ角ばった顔をした壮年の男で、額には血の滲む包帯が巻かれている。
「私は――」
「まさか、援軍か!?」
名乗ろうとした彼女を遮って、若い騎士が声をあげた。
彼女が腰に剣を吊っていることに気付いたからだろう。
「おお、やっと来てくれたのか」
もう一人いた中年の騎士も歓声のような息を漏らしながら、安堵したように顔を緩めている。
「それで、何人いるんだ? 随分と軽装だが……装備は十分なのか?」
「聖騎士は? 聖騎士は来たのか?」
「いや、私は……」
身を乗り出すように尋ねる二人を、シルフィは申し訳なさそうに遮った。
「申し訳ないが、騎士団の者ではない。ただの流れ者だ」
そう言った彼女に、彼らは目に見えて落胆の色を示す。
「私はシルフィ・ロックウェルという。この街を襲っている妖魔と、呪骸について話を聞きたい」
「聞いてどうする」
そう返したのは年配の騎士だ。
「奴らを狩る」
事も無げに、シルフィがそう答える。
途端、騎士たちは妙なものを見る目を彼女へと向けた。
年配の騎士はイムザと名乗った。
この街に駐屯する騎士隊の隊長だという。
若い騎士はジーク、もう一人はカロムという名だった。
「それで、動ける者は何人残っているのですか?」
勧められた椅子に着いたシルフィは、単刀直入に尋ねた。
「討伐隊に参加した生き残りは、我々を含めて五人。後の二人は救護所にいる。街に残していた十五名は全員無事だが」
答えたイムザは、そこで悔しそうに言葉を切った。
元々、この街の騎士隊は全部で四十五名いたという。
そのうち、今動くことができるは討伐隊に参加しながらも軽症で済んだイムザたちを含めて、十八名。
まさに壊滅といえる状況だった。
「私は自惚れていたのだ。呪骸などと言っても、所詮は虫が大きくなっただけ。そんな風に考えていた。そこで討伐隊などと息巻いて挑んだは良いものの、結果はこの様だ。救護所のベッドで寝ている一人は、もう二度と自分の足で歩くこともできない。死んだ部下たちには何と言って詫びればいいのか……」
机の上で組んだ両手に額を乗せて、イムザが長々と後悔を吐き出す。
そんな彼の肩に、中年の騎士が慰めるように手を置いた。




