表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【すずの木くろ】バフ持ち転生貴族の辺境領地開発記  作者: すずの木くろ【N-Star】
第1部
18/61

第18話 ネズミとイノシシ

 領主邸に荷物を置き、スノウたちの下へ行こうと皆で外に出ると、驚きの光景が目に飛び込んできた。


「わっ! な、なにこれ……」


「綺麗ですね! スノウ様の祝福でしょうか?」


 メリルとハミュンが声を上げる。

 村のあちこちに点在する畑に、ぼんやりとした柔らかな光が無数に灯っていた。

 先日フィリジット邸の庭で見たものと同じ光だ。


「すごいや……クリスマスイルミネーションみたいだ……」


「何それ? フィンの前世の話?」


「うん。前世で暮らしてたところではさ、キリストっていう人の聖誕祭が12月にあったんだ。その頃になると国中がお祭り騒ぎになって、街路樹とか建物とかが綺麗に飾り付けられるんだ」


「へえ、そんなお祭りがあったんだ。国中でやるなんて、すごく盛大なお祭りなんだね」


「うん。ていうか、そういう行事で大騒ぎするのが好きな国民性でさ。本来の意味とかよく分からなくても、とりあえず大騒ぎしてた人が結構いたように思うよ。他にもたくさん行事はあったけど、いつもそんな感じだったし」


「あはは、なによそれ。ただ騒ぎたいだけじゃない」


 メリルがくすくすと笑う。


「あ、でもでも! それって皆同じだと思いますよ! お祭りって楽しいですし、毎日あればいいなって思いますもん」


「この村でも、お祭りは何かあるのかしら?」


 フィブリナが聞くと、ハミュンは元気に頷いた。


「はい! 『水神祭』っていうお祭りがあります。年の初めと秋の始まりに、山の水神様に麦や豆をお供えしに、子供たちだけで山に登るんです。その間に大人たちがご馳走を用意して待ってて、帰ってくると朝まで宴会をするんです」


「えっ、子供たちだけで? 獣とか出たら危ないんじゃない?」


「皆で太鼓を叩いたりして大騒ぎしながら登るので、大丈夫ですよ。イノシシも、人が騒いでいれば近寄ってきませんから」


 ハミュンの話では、このあたりにはイノシシがたくさん生息しているらしい。

 鉢合わせするとかなり危険な動物だが、騒いでいれば勝手に離れていくので大丈夫とのことだ。

 狼などの危険な獣も生息しているのかと思っていたのだが、この辺りには出ないらしい。


「イノシシか。捕まえたりはするの?」


「落とし穴を作ってみたりはしてるんですけど、あんまり捕まらないですね。夏になると畑を荒らされることもよくあるんで、困ってるんです」


「あー、それは困るね……。柵だけじゃ、全部の畑は守り切れないもんね」


「はい。作物が不作の時に限ってよく襲われるんで、そんな時はみんなで毎晩見張りです。そういう時ってネズミもあちこち荒らしまわるし、本当に大変で」


「うう、ネズミはなんとかして欲しいです……あれって、一匹見たら100匹はいるっていうじゃないですか。家の壁も食い破られたりするし、ほんと最悪ですよう」


 エヴァが心底嫌そうな顔でつぶやく。

 地域にもよるが、この世界ではネズミはあちこちで目にする動物だ。

 街では比較的目にすることは少ないのだが、田舎に行くとそこらじゅうで見かける。

 ちなみに、黒死病がこの世界で蔓延したという事実は一度もない。

 フィンも学校の授業で習ったことはないので、少なくともオーガスタ王国にはペスト菌が存在していないのかもしれない。


「確かに、動物の食害はなんとかしないとだね」


「フィン様、そういうのに向いている祝福って何かないんですか? 『ネズミをやっつける!』とか『獣を追い払う!』みたいな」


「いや、そういうのは聞いたことがないかなぁ。領内の貴族のリストにも載ってなかったし。メリルとフィブリナ姉さんは聞いたことある?」


「ううん、聞いたことない。ていうか、生き物をどうこうする祝福ってあるのかな?」


「私も聞いたことがないわね。もしあったとしても、かなり珍しい祝福なんじゃないかしら」


 そんな話をしながら皆で歩き、肥料置き場に到着した。

 そこではロッサとスノウが、何やら楽し気に話している。


「お、フィン! こっちの作業はひととおり終わったぞ!」


 ロッサがフィンたちに、笑顔で手を振る。

 なにやら、かなり上機嫌な様子だ。


「スノウがさ、村全体の作物全部に祝福をかけてくれたんだよ。このまましばらく様子を見ながら、収穫できるまで祝福をかけ続けてくれるってさ」


「……スノウ?」


「……何で呼び捨てになってるのかしら?」


 メリルとフィブリナが怪訝な顔になる。


「そ、そうだったんだ。スノウさん、ありがとうございます」


 礼を言うフィンに、スノウが優しく微笑む。


「いえいえ。ロッサさんたちがたくさん肥料を用意してくれたおかげで、野菜たちもみんなすごく元気に育っています。これなら、ダト芋はどれも立派なものが収穫できそうです」


「はは、頑張ったかいがあったよ。悪いな、ずっと村にいれなくてさ。肥料が切れないうちに、すぐに戻ってくるよ」


「ふふ、ありがとうございます。でも、あまり無理はしないでくださいね?」


「大丈夫だって! それに、俺だってこの村のためにできることは何でもやりたいんだ。一緒に頑張ろうぜ!」


「はい、頑張りましょう。頼りにしていますからね」


「おう! へへ……」


「……ね、ねえ、なんか、2人ともずいぶん仲良くなってない?」


「そ、そうだね。何があったんだろ。お互い、呼び方も変わってるし」


 やたらと親密な様子のスノウとロッサに、メリルとフィンが小声で話す。

 たった数十分の間に、ずいぶんとくだけた様子になっている。

 ロッサの鼻の下が伸び切っているのが、傍目にもよく分かる。


「フィン様、果物の栽培はすぐに始めるのでしょうか?」


「はい、お願いしたいです。アプリスの種をいくらか用意してあるんで、それを使ってもらえれば」


 今手元にある種は、先日皆で食べたアプリスの種だ。

 アプリスは実の中心に数十個の小さな種がある。

 全部で1000個以上は取っておいてあるので、そのうちのいくつかは芽を出してくれるかもしれない。


「かしこまりました。種はどちらに?」


「あ、その前にですね、これからエヴァさんの祝福を使ってもらいに、川下の池に行くんです。スノウさんも一緒にどうですか?」


「池、ですか?」


「ええ。池の水を、彼女の祝福『水質改善』で綺麗にしてもらおうと思って。綺麗な池ではあるらしいんですけど、試しにどれくらいの効果があるのか見てみたくて」


「あら、それは楽しそうですね。ご一緒させてもらおうかしら」


「よし、それなら俺も一緒に行こうかな。皆、肥料と種の用意、お願いな!」


 周りにいる村人たちに、ロッサが笑顔で申し付ける。

 そしてフィンに顔を向け、「行こうぜ!」と爽やかに言い放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ