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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
魔女編
135/160

134話 ?な世界で生えた植物?

 さて、世界は黒く塗りつぶされているようだけれど、声は届くのかな?


「ぅやっほぃ!」


 どんな叫び声だ…、という突込みが欲しい。

 きょろきょろと辺りを見回してみたけれど、やはりどこを見ても闇。自分を見下ろしても、その姿がまったく見えないくらい闇。

 

 確かこういう暗闇にいると気が狂ってくるのだとどこかの国の研究チームが言っていた…。なんて余計な事を思い出し、思わず身震いする。


 ぞっとしたわ・・・。


 いやいや、自分で自分を追い込むってどうなのよ。私、そんなマゾっ子気質じゃありませんよ。たぶん。

 

 とりあえず、ぼうっと突っ立っているのも怖いので、何かにぶつかるかもしれないと歩いてみる。

 足場があるのかも怪しく、一歩一歩をつま先確認しながら慎重に歩いて行くと、次第に…その行為に飽きた。

 

 足場があるか、つま先でトントン確認しながら慎重に歩くなんて作業を、延々とやる気はない。

 女は度胸とばかりに確認作業をやめ、ずんずん歩けば、意外と落ちないものである。

 落ちてるかもしれないけれど、その感覚もわからないのだからまぁいいのではないかな?


 そんな適当な気分で歩いていたら、急に闇が晴れた。




 周りに広がるのは、羊の群れが走りそうな牧歌的な農場の光景だ。

 

 私の前には馬車の轍の残る道が延々と続き、その道を挟むように白い策が立っている。そして、周りは一面の牧草地帯。

 ただし、不自然なことに、風も無ければ匂いも無く、また、音もない。動物の姿も見えないしんとした空間なため、非常に居心地が悪い。


 そんな場所に飛び出た私は、すぐ隣に気配を感じて顔を向けた。


「お?」


『おぉ?』


 隣から声がして同時に顔を合わせ、私達は、「おぉ…」と神でも見たかのような声を上げた。


「私でしゅね?」


『ちっさい私ね』


 隣に立っていたのは、なんと、佐奈でした。

 

 佐奈とシャナの邂逅と言ったところだろうか。

 いや、まさか二つの魂が出会えるとは思っていなかったよ。


「んで、佐奈しゃん。ここどこだかわかりましゅ?」


『シャナちゃん、私も同じセリフを言いたい所よ』


 まぁ、思考も大体同じなので、質問しても答えはきっと同じで、問う意味はなさそうだ。

 共にふぅとため息をつき、周りの確認をした。


「右よーし」


『左よーし』


「それは何の確認かのぉ?」


「『うぉうっ』」


 突然の声と共に、ぼこっと音がして、地面からにょきりと…老人が生えた。

 

 前後左右は確認しても、上と下は確認して無かったよ…。




「お爺ちゃん誰でしゅか?」


 気を取り直して質問する。


 老人は体を前後左右に揺らし、必死に土から抜け出そうとしているのだが、うまくいかずに息だけ荒げ、ぜーはーと息をついた。

 

 人の話を全く聞いていない様子だ。


「抜いてくれんかの」


「危ないから嫌でしゅ」


『変人にはかかわらない主義なの』


 妙な要求に、当然間髪入れずに答える私達。


「・・・なんだか一番言われたくない者に言われたくない言葉を言われたような気がするわい。まぁ、よいか・・この状態で話してもええかの?」


 何やら気になることを言われた気もするけれど、そこを気にしだすと先に進まない気がするので今回は口を閉ざし、先を促すことにした。


「『どうぞ』でしゅ」


 話を進めつつ、私達はじっと老人を観察する。


 どれだけ体が埋まっているのかは知らないけれど、老人は胸の辺りまで埋まっている。

 見た目は細身のどこにでもいそうな好々爺だ然とした面長な顔立ちの老人だ。少し日焼けしているので、この農場の主かもしれない。

 埋まっているのは…趣味?


「実はわし、魂の欠片の一つなんじゃが、こうして埋まってしまっておるのじゃ」


 ふむふむと私達は頷く。

 埋まってるのは趣味ではないらしい。


「で、じゃ。なぜか長年埋まっておったに、こうして体半分出てこれたわけでの」


 これは埋め戻し請求ですかね。


『埋めればいいの?』


「いつでも埋めましゅよ」


 準備は万端とばかりに私達は足を上げる。

 もちろんこの奇妙な生物には触りたくないので、できるだけ踏んづけて埋めるつもりだ。


「待て待て待て待てっ。わしはこう見えて人間じゃぞっ」


 人類を主張するとは、実に疑わしい…。

 ジト目で見つめれば、老人はえへっと両頬に指を当ててぶりっこ笑いをしたので、さっそく埋めることに。


「まてぇい! とにかく待てぇい! わしを埋めてしまうとここから出られなくなるぞっっ」


 私達が足を上げたところで、必死に両手をぶんぶん振って引き留めようとする老人。いや、地中に埋まっていて植物かもしれないから、老人植物と呼ぼう。


「出られると思いましゅよ」


『そうね、出られると思うから、埋めるわよ』


 ということで、私達がさらに足を上げると、ぼこぼことどこかで聞いたような音が…。

 私と佐奈が、ゆぅぅぅぅぅっくりと振り向くと、そこには乱立する4体の老人植物が!


「我ら!」


「世界と人類を守るため!」


「日夜研究を続ける!」


 と、ここで、今の今まで話していた老人が加わる。


「愛と正義の!」


「爆発男!」


 ・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・




『爆発しちゃダメでしょ』





「「「「「おぉっ! 懐かしのツッコミ!」」」」」





 なんだか知りませんが、誰かを彷彿とさせる、うるさい老人植物が増えました…。

 

「これ、やっぱり埋めていいでしゅかね…」


 私と佐奈が視線を交わしあい、うんと頷き合ったのは言うまでもない。




 




 

老人1「まてっ、まだ自己紹介もしておらんぞっ」

老人2「そうじゃっ、肝心の自己紹介を待っておる人々がっ」


シャナ「おりましぇん」

佐奈 『いないとおもうわ』


老人3「せめてわしらの名前を!」

老人4「そうじゃそうじゃー!」

老人5「覚えておらんけど…」


老人達「「「「「確かに…」」」」」


シャナ「埋めましゅ」

佐奈 『今度こそ間違いなく』


老人達「「「「「わしらは人間じゃー!」」」」」


彼等の主張は通るのだろうか・・・。

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