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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
VS 魔族編
114/160

113話 魔族の反撃

 魔族からの精神攻撃と聞いて、少女達の喉がゴクリと鳴った。

 緊張し、どんな攻撃にも対処できるよう構える私達の後ろで、「あはぁん」とか、「そこはダメっ」とか、微妙なエロボイスが響いているが、必死で聞かなかったことにしようと現在努力中だ。


 できればかぶりつきでその様子が見たいのだが、やはり目の前の脅威から目を離すわけにもいかず、皆が焦燥を感じている。


 魔王ファルグはにやりと笑みを浮かべると、魔王の力でクラゲから脱した部下達に声をかけた。


「やれ」


 短い命令だが、ムキムキハゲマッチョ隊は崩れた陣形を立て直し、整然と並んで低い声で応える。


「「「はっっ」」」


 男の声は揃うと迫力がある・・。しかも彼等は鍛え抜かれた魔族。肺活量も多いのか、びりびりと空気が震えるかのような声のハリだった。


「何が始まりましゅかね」


 わくわくしながら見つめていると、シャンティが呆れたような視線を向けてくる。


「あれでも一応魔族なのよ。ちょっとは危機感を持って頂戴」


「そう言うシャンティも…期待に目が輝いておりましゅよ」


「う…まぁ…異種族って言うのは面白そうだし」


 チラリと見回せば、我が悪友達(男性を除く)は、皆私達同様目をキラキラと輝かせていた。

 中にはスケッチブックを持って彼等の動きを待っている者もいる。

 大物になりそうだとそんな感想を抱いたその時!


 遂にムキムキマッチョが動いた!


「「「ふん~!」」」


 その叫びはムキムキマッチョのデフォルトだろうか…。

 彼等は叫ぶと筋肉を盛り上げ、力を込めて着ている服を…



 綺麗にボタンをはずしてから脱ぎ捨てた。



「そこは筋肉で破るとこでしゅよ!」


 突っ込むでしょう! ここは突っ込むでしょう!

 筋肉で服ビリビリ~! が生で見れると思ったのにっ。


 ダシダシと防護壁を叩くと、魔族は全員がきらりと白い歯を見せて爽やかに笑みを浮かべる。

 そして、なぜか魔王は後ろを向いた。


「え…何?」


 シャンティも魔王ファルグが後ろを向いたことに驚いて目を瞬かせていると、さわやかに笑みを浮かべたマッチョが、ゆっくりと同じ動きで、ボディビルディングを始めたではないか!


「「ぎゃ~~~~~!」」


 気持ち悪さに叫ぶ娘達が半数。


「「きゃあああああ~!」」


 筋肉美に大喜びする娘達が半数。


 ムキムキマッチョ達は皆そろった動きでゆっくりと腕を上げ、両腕に力こぶを作り、何かの合図のように「ふんっ」と声を出した。


 その瞬間、筋肉達が光り出す!




「筋肉目くらましでしゅか!」


「きっと筋肉魔法発動の動作なのよ!」


 どっちにしても筋肉すぎて微妙だが。


 まばゆい光に目がくらみ、私達は目を閉じる、もしくは目元に手を置いて目を守ると、その隙をついて、どぉぉんっと大きく防御壁が揺れた。


「攻撃でしゅ! 見えないけど攻撃でしゅ!」


 やはり魔法発動か!? と、光が弱まると同時に何とか目を開けて壁下を覗き込めば、なんと! そこには上半身裸のムキムキマッチョが壁に向かって体当たり、もしくは拳をぶつける姿が!


「実力行使でしゅか!?」


 呆気にとられていると、一部の壁にヒビが入り始めた。

 なんて恐ろしい筋肉軍団。魔法を使わず、腕っぷしで壁を破壊するつもりだ!


 しかし、このまま見ているだけでは侵入を許してしまう…。


 はっと我に返り、シャンティを見上げると、シャンティは心得たとばかりに頷いて声を張り上げた。


「結界展開!」


 ちらっと男達を見れば、一部はゾンビのような怪しい動きで復活しつつあるが、まだまだ恍惚状態で戻ってきていないものが半数だ。

 役に立ちそうにないということで、女性達だけで防御壁に強度を上げる結界を張り巡らせた。


 が!


 精神攻撃はまさにここからが真骨頂であった。



 がしゅっ

 がしゅっ



 変な音が聞こえ、再び壁下を覗き込めば、魔族の筋肉マッチョが上半身裸で筋肉を盛りあがらせながら壁に穴を開けて手を突っ込み、そのままロッククライミング…ならぬ、壁面クライミングを始めたではないか!


 追われる者は追う者よりも恐怖を味わう…


 まさにその心境!


「シャンティしゃんっ! 来ましゅたっ、来ましゅたよっ! エイリアン軍団が!」


 恐怖と焦りから右往左往しながらシャンティに訴える。


 むっきむっきと登ってくるムキムキ軍団。

 あれがこの壁上に現れたら…。


「魔族なのに肉体派すぎるわ!」


 確かに・・・。

 うんうんと頷いて…いる場合ではない!


「恐怖に打ち勝つにはこれでしゅ!」


 壁に取り付く魔族に良く見える位置に立ち、ラブリーダンスを披露してみる。

 お尻をフリフリ、尻尾をピコピコ、ついでに炎を…。

 そうです、炎がありました!


 あ、後ろで「ごふぅっ」とかいう声も聞こえましたが当然無視してください。



 ドラゴンの鼻からゴォォォっと炎を噴くと、これまた驚くべき現象が起きた。


「火が付いたわ…」


 まぁ、炎を吹きかけたのだから火がつくのは当然としても…


「頭に火がついてましゅよ!」


 魔族の禿頭に火がともり、初めは小さな炎だったものが、まるで頭のツルテカ油を燃料にでもしているかのようにごうごうと燃え盛っている。


「はっはっは~! こんな火など屁でもないわ~!」


 魔族達は頭の火をなんとも思ってい無いようで、さらに突き進んでくる。

 

 ある意味恐怖。

 まさか…これが魔族の精神攻撃…?




 それにしてもなぜ熱くないのだろう。

 頭を燃やす火の勢いは結構大きい。それなのに魔族はそれをものともしないのはさすがに不気味過ぎる。

 そう思って壁下をじぃぃぃぃっと覗き込んでいると、背後から柔らかい声が響いた。


「あれは宴会芸用のダミーの炎だからダメージは無いよ」


 言われて私はドラゴンの鼻に手を添え、火を噴いてみたが、なるほど熱くない。

 ということはだ…あのノリノリな筋肉ムキムキマッチョ軍団には全くダメージはない与えられていないということになる。

 ところで、今の誰?


 はっとして振り返ると、そこにはにっこり微笑むノルディーク。

 先ほどシャンティと二人でクラゲの囮にしたから少々お怒りの気配…。黒い笑みがその怒りを如実に語っている。


 そんなノルディークは、どうやら上着を破られたらしく、細身に見えて実は中身がすご~いというそのお肌が見えている。


「サービス全開でしゅね!」


 私は咄嗟に飛びついてその生肌をむはむは嗅ぎ、さらにスリスリして堪能する。


「シャナ~! 大変!」


 邪魔されて残念っ。

 シャンティの叫びに仕方なく動きを止め、私はノルディークの腹にコアラの赤ん坊のようにぶら下がりながら彼女の傍に立つと、シャンティは必死に壁下を指さした。


 今度は何が・・・?


「ぬはあぁぁぁぁぁぁー!」


 壁下を覗いた私は悲鳴を上げた。


 私が見たモノ…


 それは… 


 壁を登ってくる者達とは別に、ふんどし一丁で筋肉マッチョ踊りを披露する魔族達の姿だった!


 これぞまさに精神攻撃…。

 

「ファルグ…ひょっとしてこれを見ないために後ろを向いてるのではありましぇんよね…」


 尋ねると、魔王ファルグはゆっくりと肯いた(もちろん振り返らない)。


「そこにいる白の主にリベンジがしたいらしい」


 魔王の言葉に、魔族達はうおぉぉぉぉっと雄たけびを上げ、さらに筋肉に力を込めた。


「筋肉は正義!」


「筋肉は愛!」


「筋肉は夢!」


「先代陛下の敵討ちじゃあ!」




「ぽろりもあるよ」




 最後のはいら~ん!


「大魔法発動!」


 私は叫ぶ。


「光の精霊!」


 シャンティが続き、さらに少女達がそれぞれの使い魔の名を呼んでいく。


「風の精霊「地の精霊「水の精霊!!」」」


 戦場は、ポロリ阻止のために暴走を始めたのだった・・・・。




少女達リミットブレイク!

 

シャナ 「ポロリを阻止するのでしゅ~!!」



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