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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
VS 魔族編
113/160

112話 精神攻撃!

「ちゃんとした吸い取る君は完成しなかったのでしゅかー!」


 ワタクシ、ただ今ノルディークに抱っこされ、シャンティと並走しながら小さなクラゲ軍団から逃げ惑っております。


 ちなみに逃げているのは私だけではない。壁下の魔族達も同様で、クラゲの数の多さに手の施しようがない状態だ。

 

「完成するところだったのに研究員があんたの汁を垂らしたのよ~!」


 汁て、シャンティさん…。


 なんだか自分が謎の生物になったような気分に陥りながら、私は後ろを追ってくるクラゲを見てふと首を傾げる。

 よく見れば、クラゲ達が襲っているのは男ばかり。

 美女は…と言えば、美女の前に立ったクラゲは、じっと…目があるのかはわからないけれど、見上げて「ケケケケケッ」と笑うだけだ。

 それはそれで十分ホラーだけど。


「シャンティさん! 女性は襲われてましぇんよっ」


 見て見てと後ろを指さすと、私とシャンティは見つめ合い、同時に頷いた。

 長い付き合いだ。何を犠牲にするかはよくわかっている。


 ということで、私は腕を伸ばしたシャンティに飛び移り、シャンティはすかさず私をキャッチして、驚くノルディークの足元を狙って低い姿勢での蹴りを繰り出した。

 もっと簡単に言うと足ひっかけ攻撃ですナ。


「っ」


 さすがのノルディークも、よもや味方から攻撃されようとは思っておらず、バランスを崩したが、そこはさすがだ転んではいない。

 しかし、クラゲの足は素早く、すぐにノルディークのお肌にクラゲが襲いかかった。


「シャナ!」


 私とシャンティは、襲われて抗議の声を上げるノルディークを見やり、二人同時に額の汗を拭く動きをした後、いい仕事をしたとばかりにうんうんと頷き合った。


「魔力干渉されてるシャナにも反応しないんじゃ失敗作よね」


 シャンティはため息をつく。

 それに関しては微妙だ。時折クラゲは私をちらっちらっと見上げるのだけれど、魔力干渉より先に美形食いに走っている気がするのだ。

 優先順位が下ってことね。

 良いのか悪いのか…。


「取り敢えず、男共が使えないなら、今が女の勝負どころでしゅっ」


 私が告げれば、シャンティがきらりと目を輝かせて頷き、クラゲに恐れ慄いている、または男達が剥かれる姿に興奮している、さらには悶える姿をスケッチしている友人達に声をかけた。


「女性陣全員配置に付け~!」


 シャンティの声は発声法が違うのか、よく通る。

 我が友人達はその声を聞きつけると、すぐさま行動に移し、クラゲと男達を無視して守護壁に並んだ。




「第一弾…発射でしゅ~!」


 私は壁の縁に立ち、掲げた腕を振り下ろせば、守護壁に横一列に並んだ少女達による光線が放たれる。


「卑怯だー!」

「えげつねー!」

「クラゲなんとかしてくれよ!」

「幼女…」


 ・・・・何か味方側からも聞こえたが、聞かなかったことにして、魔族に連続魔法を叩きこむ。

 女性陣は剣の腕はあまり強くないのだ。できれば魔法で早目に片付けたいが…。


 壁下で大わらわなムキマッチョはともかく、魔王は今にもお茶をし始めそうな雰囲気で佇み、余裕である。

 結界でも張ってあるのか、クラゲも一定の場所から近づけないし、光線も当たらず消し去られた。


「魔王は伊達じゃないんでしゅね」


「伊達男だけどね」


「シャンティさん上手いでしゅ」


 どうでもいい掛け合いをしながら、次の攻撃を繰り出す。

 お次は泥沼攻撃だ!


 と言っても、攻撃が泥沼化するのではなくて、地面が泥沼化するのだ。

 このアイディアはケルベロスからきている。


「ぬあっ」

「うぉっ、沈むっ」


 クラゲに襲われる魔族達は次々と沼に沈んでいく。

 しかし…


「子供のお遊びだな」


 魔王はやれやれと肩を竦めると、指をパチリと鳴らして沼を解除。ついでにクラゲも一瞬で蒸発させた。

 

「シャナ、かかってこないのか?」


 お、魔王にご指名されました。

 そんな私は壁の上でダンス中。


 ぴっきゅぴっきゅ


 ドラゴンスーツは私の動きに合わせて鳴き声を上げ、まるで歌っているようである。


「ふふふふん。このダンスがただのダンスと思ったら大間違いでしゅ!」


「ほぅ?」


 ファルグは面白いとばかりににやりと微笑み、私はにんまり微笑みを返した。


「これは精神攻撃を与えるための必殺技!」


「「おぉっ」」


 敵味方から期待と不安の声が上がる。




「ただのダンスでしゅー!」




「「ただのダンスかー!!」」


 見事なツッコミが敵味方から入りました。

 

「ほら、精神ダメージ負ったでしゅよね?」


 むふんと不敵な笑みを浮かべる私に、魔王はくっくっくっと笑い、その紫色の瞳の色を深めた。


「では、こちらも精神ダメージを与えてみようか?」

 

 さぁ…反撃開始です。

 魔族のだけど…。


 

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