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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
VS 魔族編
109/160

108話 隙を狙って…

「この触手は無限に増えるのでしゅ~っ」


 と答え、私は戦いを挑んできた者を触手でからんでビリビリビリ~ッと痺れさせると、そこに魔力を注入し、顎の辺りを触手で撫でた。


「はぁぁん」


 うむ、良い声だ。

 ひとしきり堪能してからようやく避難所である校庭に目をやった。


 避難所はまさに獲物の宝庫…げふんげふんっ、町の人々がすでに集まっていた。

 なぜか逃げているのが気になるけど…。


 周りをグル~と見渡せば、学園の建物近くに唖然とした様子でこちらを見る塔の面々と、我が悪友達。

 シャンティ達は肩で大きく息をしながらこちらを見つめ、警戒している。


 何も取って喰うわけではないのに…。

 と言いながらも私の触手は今も動き、射程範囲内の数人の騎士や兵士を獲って、そのエロボイスを楽しんでいる。

 これもある意味喰ってると言うのかも? 


 あ、ちなみに避難所であるこの校庭の出入り口を守っていた兵士や騎士は触手でからめ取ると同時に魔力を注入し、思う存分楽しんでから解放してあげた。

 今は出入り口で腰砕けになっているはずだ。

 でも、解放してあげる辺り優しいシャナちゃんだと思わない?


 それはさておき。




「一体何の騒ぎなんだこれは」


 ディアスがこめかみを指で押さえながら尋ねてくる。

 

 私はするする~っと移動し、彼等の足元に触手でからめ捕った人々をそっと転がした。


「皆しゃん途中で気絶しちゃったので連れてきたのでしゅ。敵の気配がしゅるので危険でしゅからね」


 避難訓練はほぼ本番と化している、そんな中気絶した人々を置いたままにしてはいけないと思い運んだのだ。

 褒めてとばかりにムンと胸を張る…が、胸は触手で隠されて見えないようだ。


「確かに魔力干渉をしようという気配は感じられたけれど…。シャナが大事にしてるような気が」


「何を言うのでしゅか。私は普通(・・)に誘導して普通(・・)にゴールしたのでしゅよ」


 ヘイムダールの困惑した表情を見上げて堂々と告げれば、彼は曖昧に微笑み、その後ろから隠れるようにして立っていたシャンティが顔だけを出した。


「あれは普通の誘導じゃないわっ。まぁ…敵の魔力干渉を防げたのはいいけど」


「あの場に先生がいたなら先生にしてもらって…」


 シャンティが苦情を言い、オリンがそれに続いたその途中ではっとして言葉を止めると、何故か口を「あ」の形に開け、何度も何かを示すように指した指を振った。


 全員が首を傾げたが、やがてシャンティがはっとし、そんな彼女より先にアルフレッドが大声を上げた。


「先生が魔力干渉してくれ!」


「「それだー!!」」


 どれだ…。


 思わずジト目で彼等のコントのようなやり取りを見つめてしまった。




 しかし…ヘイムダールに魔力干渉をやり直させるとな?


 私はむぅぅっと頬を膨らませる。

 今、魔力干渉に流し込む魔力の必要量が、ある程度わかってきたところなのだ。できるならばこの場所にいる人々にも干渉して、さらなるスキルアップを目指したいではないか…。


 チラリと我が悪友と塔の主達の様子を見れば、悪友達は必死でヘイムダールにすがりつき、魔力干渉を交代してくれと訴えている。


「そう言うことか…」


 なんだか悟ったような表情をヘイムダールは浮かべ、承諾したようだ。


 これは…私のお楽しみの…あ、いや、成長の危機!

 ゆゆしき事態は阻止せねば!


 なんてね…実はすでに私の足元から触手が旅立っております。

 この触手、地面も潜れる万能触手なのだ!


 母様達一体何の素材で作ったのだろう? という疑問は横に置いておいて、ここぞという隙を窺う。


「大人しいな」


 ぼそっと傍で呟く声…。これは聞き覚えのある我が敵の声だ。今では我が魔狼だけれど。


「そう言えばそうだね。シャナ?」


 そして同意した声…。これは黒くなると恐ろしい我が狼さんの声…。


 これはまじゅい…。こっそり作戦がバレれば、生お尻ぺんぺんの刑が待っているかもしれない。

 

 ドキドキしながらも、足元はいくつもの触手で隠し、触手が地面を潜って皆を狙っているのは悟られないようにいつも通りの表情、動きを心掛けて振り返る。

 ここに全神経を集中したっ。


「なんでしゅか、私は普段から大人しいでしゅよ? お嬢様でしゅからね。これでも」

 

 うぅっ。

 自分で「これでも」なんて言って、傷ついたわっ。

 

 ずきずきする胸を抑えつつ、にっこりと微笑んでシェールとノルディークを見た。


 お、久しぶりのシェールはちょっと痩せた様だ。だが、そこそこの筋肉は今も健在のようなので、ガリマッチョ系になっている。

 肉付きの悪さは後で触手で突いて「この辺に付けて下さーい」と教えてあげよう。

 きっと「あふん」「おふん」言って答えてくれるでしょうっ…ぐふふふふ。


「お嬢様って言うのはノーラのようなのを言うと思うんだが…」


 私が妄想に耽っている最中にシェールが呟いた言葉にはっとして、私はすかさず触手を動かし、彼の額にべちりと当てた。


「つっ」


 結構痛いと思う。しばらくは顔の真ん中に赤い線が走るかも。

 シェールは顔を抑えてギラリと睨んできた。だが、幼き頃からの敵は怖くないのです!


「淑女にちっけいでしゅよ!」


「「「淑女…?」」」


 アルディス、ヘイムダール、ディアスが首を傾げたので触手攻撃をお見舞いしたが、さすがに一度攻撃パターンを見たためか、それともシェールとの格の違いか、すんなりと避けられた。

 

 おにょれ・・・・。

 

 あ、でも、触手を放つ時もこんな風に避けられては意味がない。ここは慎重にいかねば。


 地面の下に潜らせた触手に気を張り巡らす。


「取り敢えず、専門科の所に行って吸い取る君を借りてから重ねがけを」


 ヘイムダールは、早く正常状態に戻りたいと気が急くらしい我が悪友達に段取りを告げ始めた時、再び私を例の耳鳴りが襲った。


 きぃぃぃぃんっ


 これはあの時と同じ! 

 

 つまり! 


「魔力干渉!!」


 シャンティが叫ぶと同時に、私の触手は地面から飛び出し、塔の主達を襲った!


「しまっ!」


「魔物か!?」


「違うっ…シャナ!」


 驚きのあまりシェールは魔物と間違えた様だが、魔力に敏感なヘイムダールが非難の目を私に寄越した時には、私はにんまりと微笑んで頷いていた。

 

 さすがのノルディークも今回は逃れられまい!


「むひょひょひょひょ~! エロボイス発動でしゅ~!」


 高出力で塔の主と、校庭に残っていた者達にエロ…じゃなくて魔力を注入した!




「「「うっ…」」」




 ガクッと膝を折った塔の主達。

 ヘイムダールは慣れているから仕方ないとしても、アルディスやノルディーク、ディアスやハーンにシェールまでもが反応が薄い?


「ありぇ?」


 ためしにシェールの背中を撫でてみる・・・。


「ううううううううっ…むぅっ」


 ものすごい耐えてますが、びくびくしてますな。


 新・鮮。


「むひょひょひょひょひょっ」


 どうやら効いているようだと判断して、さらに他の誰かのエロボイスを求め、わくわくしながら誰にしようかきょろきょろと獲物を選ぶと。





「隙ありだ、嬢ちゃん!」


 頭上から声がして、目の前に剣が迫っていた。

 

「「シャナ!!」」


 塔の主達は痺れて動けないっ。


 突如現れ、振り下ろされた剣をじっと見つめ、私は…



 触手で暴漢をはり倒した。




「ごっふぅ!」


 吹き飛び、地面に転がる謎の暴漢。

 そして、別方向からはため息が漏れる。


「阿呆め、殺す気か? それは私の嫁候補だぞ」


 この声は~!!!


 ばっと全員が注目した場所。

 そこには、銀の長い髪にアメジストの深い瞳、30代後半のハーンによく似た姿の偉丈夫。

 

 ハーンパパ…もとい、


 魔王の姿があった。

ちょこっと裏話…


シャナ 「取り敢えず塔の主に魔力干渉成功でしゅ」


むふんと微笑み、胸を張るシャナ。


アルさん「まさか…タイトルの隙を狙って…と言うのは魔族でなく…っ」


シェール「シャナ、お前の話かー!!」


シャナ 「何をいまさら。これは私の話でしゅよっ」


シャナはそう言うと、表情を歪めて耐える男達を観賞し、悶えた。


シャナ 「干渉して観賞…ぐふっ」


ハーン 「オヤジ幼女にやられるとは…」

ディアス「屈辱だ…」


シャナ 「何やらちっけいでしゅよ!」 

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