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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
VS 魔族編
106/160

105話 一矢報いねば!

 1日目は散々だった…。


 チートな私はまだまだ元気だったが、団体戦なので塔の主軍団対私の本気バトルというわけにもいかず、涙を飲んだ。

 だが、惨敗のおかげで我がクラスのみならず、他のクラス、他の学年からも自主的に学生会議に集まりたいと申し出る者達が現れた。

 これはいい傾向ね。


 というわけで、2日目は訓練が始まるよりも早く学校に集まり、学生会議が始まった。

 

 本日の私は・・・ブドウです。

 突込みはいりませんよ! 間違いなく食べ物のブドウです! ブドウの粒帽子まであります!

 母様曰く


「羊と悩んだのだけど、こちらの方がふかふかして転がっても安全だと思うわ。羊は白くて汚れが目立ちますもの」


 ただし馬同様低機能です!

 中身はちょっぴりお相撲さんのようなどすこい歩きをせねばならんのです。

 

 それはともかく、話し合いに戻りましょう。


 まずは昨日の反省点を挙げて対処法を練る。


「戦闘なんてしたことのない学生が戦闘のプロに挑んだのでしゅから、混乱と恐怖は仕方ないのでしゅ」


「でも、二回目からは冷静になれるだろ?」


 剣技組の筋肉アルフレッドの言葉に頷く者数名。まだ不安そうな者数名。


「やることを決めておけばそれに専念できると思うわ」


 シャンティが戦場は見ないでやることをやるようにしましょうと案を出す。

 これは不安を抱える年下の学生へ向けた案だ。

 

 俺はやれるぜーっと言う顔をした者には、次から次へとやることを課す。


 ここまではやれると自己判断できなければただの足手まといということを告げ、その辺りも判断させる。でなければ何でもかんでも「やれるかも」で突っ走り、最終的に足手まといになって死人を出すなんてことはよくあることだと王子であるルインは言う。

 

「帝王学を学んだものは言うことが違いましゅね」


「残念なことに、父の受け売りなんだ」


 王様でしたか。


 王様…きっと今頃町の防衛策にてんやわんやなのだろうなぁ…。

 ごめんね王様。


「じゃあそれぞれやることを決めておくのが一番良いかもね。本番は作戦なんて言ってられないかもだし」


 そばかすオリンの言葉に全員が頷くと、一人一人がやることを決めていく。

 だが、決めたことを順番にこなすのではなく、その時に応じてできると思ったことをそれぞれが考えて発動する形になる。

 そこは経験がものを言うが、それこそ訓練で培われるべきものなので失敗もありだ。


「本番で死なないための訓練だからな。逃げることも選択肢に入れとけよ」


 ちなみにその場合のフォローの仕方もそれぞれ案を出して決めた。

 あとは、できる事の組み合わせをして、できるだけ皆で敵にぶつかれるような作戦を練った。

 どこまで通用するかは謎だが。


「…目に物見せてくれるわ」


 我がクラスは、一矢報いるために燃えていた。










「では、本日も総力戦とする。疲労があるかもしれないが、その状態で戦えるようにするのも訓練の一つだ。泣き言は言うな。それから、今日は魔法と剣とには分けないからそのつもりで」


 完全総力戦らしい。

 これには早朝の会議に出た者達がにやりと笑みを浮かべた。


 自分達の陣地を定め、そちらに向かいながら会議に参加しなかった者達に簡単な指示を広げていく。

 これを無視するものは巻き添えを食うだけなので無視だ。指示が行き渡らなかった学生は…ご愁傷様。


 全員がスタンバイすると、昨日とは違った緊張感が走り、一瞬双方が睨みあった。

 だが、すぐに緊張に耐えられず飛び出していく学生がちらほら。

 そして、返り討ちにすべく騎士達も飛び出してくる。


「引き付けて…まだだ…まだ」


 こちらの指揮官は当然ルイン君だ。王子という立場は存分に使わねば。

 いずれは国を支えるのだから彼にとってもいい経験になる。


 年若い学生達が緊張のあまり先走りそうになるのを年上が止める。

 私は緊張をほぐすために皆の前でブドウダンスだ。

 

 腰振ってるだけだけど。

 そして皆無視してるけど。


「よし! 土魔法発動!」


「「はい!」」


 子供達が声を揃えて魔法を放つ。

 魔法を放った者達は全員土系の魔法が得意なものだ。

 

 だが、相手もさるもので妨害をかけてくる。そこで出番なのがチートな私と水と光系魔法使い。


「本日はブドウでしゅので~。ブドウアタックでしゅよ皆しゃま~!」


「変な名前付けないで!」


「気が抜ける!」


 おぉ、苦情がどっさり。大収穫。

 だが、魔法は発動し、妨害をかけそうな人物達に向け、水の球と光の球の連続攻撃が降り注いだ。


「おや」

「へぇ」

「成長したか?」


 ノルディーク、ヘイムダール、ディアスが感心の声を上げ、アルディスがにこりと微笑む。


「まだまだだな」


 だが、彼等の動きを一瞬止めただけでも大成功だ。

 最初に発動した土魔法がいくつか成功し、地面に落とし穴やらデコボコ隆起ができて騎士の何人かが転ぶ、はまるの大騒ぎだ。

 学生もはまったけど。


「こっちもまだまだでしゅよ~! つるんとアタック!」


「だから変な名前を付けるな!」


 アルフレッドが叫びながら精霊を動かす。すると、相手側に重力がかかった。

 精霊魔法は防ぎにくいのだ。だが、すぐに破られてしまうため、この一瞬が勝負!

 これこそ我がクラスの熱の入った攻撃だ!


 水魔法、冷気魔法が炸裂し、重力をはじこうとする敵方の足元が凍りつき…


 つるんっ


「うわっ」

「ぎゃっ」

「うおっ」


 皆様見事にすっ転びました。



「「おっしゃ~!!」」


 学生達、特に我がクラスは拳を突き上げ、大喜び。

 地味な攻撃だが、地味な分精神的ダメージは大きいはずだ。


 うむうむと頷いていると、顔を押さえた男達がゆらりと立ち上がる。

 あ、一部鼻血の人が…。

 おぉ、兄様の額が真っ赤に! 

 ノルさん黒い笑顔ですね…。


「ほらほら皆しゃま~、怒りモードの敵がきましゅよ~っ」


 まぁ、結果は推して知るべし。

 当然怒りモードの彼等には勝てませんでした。


 でも、狙い通り一矢は報いましたとも! 



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