104話 訓練開始!
対魔力干渉用生物とか、父様にうっふんがばれるとか、ディアスがそれに便乗するとか…色々あったけれど、ようやく学校が始まり、とりあえず学生達は対魔族の為の本格訓練を始めることになった。
「本日の私はお馬しゃん~!」
我が同級生の前でばば~んとポーズをとってみる。
ちなみに私は変わらず幼児。頑張ったけれど戻りませんでした。
ノルディークめ…どんだけ強い魔力干渉をかけたのだ。全然解けませんよ!
ということで相変わらずの着ぐるみ生活である。
そして、本日の馬ぐるみについては、母様が出がけにこう告げた。
「悪さをしないように手は封印ね」
おかげさまで手をグッパしても物を掴めません。
朝食はノルディークによる「あ~ん」でした。それはそれでお得な気も…むふっ。
ぱちぱちぱちと拍手が鳴り響き、私は朝の記憶から現実へと戻った。
「服が可愛いわ」
「あれ・・服なの?」
「幼児って…」
「幼児は正義だ!」
いや、待て、今最後に喋ったの誰だ? 背筋がぞくっとしたよ。
「まぁこういう魔力干渉もあると思ってくれ」
魔力干渉について新たに分かったことと、対魔力干渉用生物吸い取る君の開発が急がれていることを説明し、ヘイムダールは今日から対魔族訓練を行うことを告げた。
「魔族と言っても元々は気のいい人達で」
「確かマッチョだとアルフが言ってたわね。シャナから聞いたのだったかしら?」
「マッチョか・・・。アルフより筋肉質かな」
「脂っこいのは嫌だわ~」
「俺の筋肉もすごいぞ」
「筋肉はいいわよね~」
まぁ、学校という所にはよくありがちな光景で、誰もヘイムダール先生の言うことは聞かず、それぞれ盛り上がっている。
そんな彼等だが、いざという時の団結力は日本の子供達の比ではないのであまり問題視はしない。
やっぱり、命がかかっている世界とそうでない世界とでは団結力も変わるものだろう。
私の高校時代は…さぼる方に団結力があったなぁ…。
「魔力干渉って上書きできますか?」
生徒の一人が思いついたように尋ねると、ヘイムダールは首を横に振る。
「上書きや重ねがけは基本出来ないようになっているが」
「…じゃあ…」
何やら一人でブツブツ言っているのは脳筋なアルフレッドとは正反対の頭脳派少女だ。
何か思いついたのかもしれないので後で聞いてみることにしよう。
「何か質問があれば今受け付けるが」
他にはないかとヘイムダールが問えば、質問は、魔族は美形か、筋肉はどれほどの物か、幼女は好きか…て、その質問は誰だ!? と、どうでもいい質問ばかりだったので切り上げられ、剣を主にするものと魔法を主にするもので分けられ、校庭へと出ることになった。
「一番最後だぞヘイン」
校庭と呼ぶには広すぎる場所に、すでにクリセニア学園の学生達が集っている。
一番最後にぞろぞろ現れた私達を見て、ディアスが声をかけてきた。
遅れて参上したのは全員が着替えてきたからだ。
学生服では汚れるので、我がクラスの者達はジャージ姿だったりする。
ジャージについては、数年間学校側に体操着として進めているが、ダサイとの理由で受け入れてもらっていない。
我が悪友達には動きやすいと評判なのにね~。
お貴族様にはどうも受け入れがたいらしい。
やはり姉様に一度は着させておくべきだった…。そうしたら受け入れられたのにっ。
それはさておき
「どういう風に訓練するのでしゅか?」
ヘイムダールに抱っこされて登場の馬幼児に、事情を知らぬ生徒達が首を傾げるが、そこは無視だ。
「俺とヘイン、セレン、アルディスで魔法に特化した生徒達を締め上げる。剣はアルバート、ハーン、エルネストが主に戦う。それから、騎士団を借りてきた」
何と、父様も協力するらしい。
兄様、騎士団の皆様は国を護る職なのに借り出されるとは…。
ここぞとばかりに思いっきり権力使ってますね! それでいいのか塔の主よ!
「ん? いま、締め上げるって言いましゅた?」
「気のせいだ」
ディアスはそう言うと私の馬の頭をぼすぼす叩き、そのまま目を逸らして生徒達の輪の中に入っていった。
私が友人達に確認するため視線をやれば、彼等はコクコクと肯いた。
締め上げるとやはり言ったようです!
嫌な予感が…。
「どちらも総力戦をする! 死ぬ気でかかってこい!」
生徒へのディアスの説明終わり。
「あれだけでしゅか!?」
「あれだけだね…」
ヘイムダールも呆れているが、私を降ろすと、じゃあ頑張ってと告げて離れていった。
戸惑う生徒達は他の先生達に誘導されて自分達が安全と思える場所を確保する。今回の敵役以外の先生達は危険が無いよう外からフォローするらしい。
ある程度準備が整うと、そこからはあれよあれよという間に特訓の為の戦いが始まったが、当然その実力差は桁違いだった。ゆえに生徒達の恐怖と自棄の行動が目についた。
これが混乱という奴なのか、と冷静な者達はしみじみ感じたことだろう。
魔法戦に至っては舞い上がる砂煙、爆発、炎やら水やらが敵味方問わずあちこちから襲いかかってきて、自分が攻撃する暇がないほどだ。
「無差別でしゅっ」
結界を張りながら、砂煙で前の見えない場所で立ち止まった私と友人達は、はっとした時にはものすごい突風に襲われて結界ごと宙に巻き上げられて吹き飛んだ。
この時騎士と剣を交えていた悪友のアルフレッドは、馬が空を飛んでいたと告げた。
翼のないペガサスの完成!
そういう問題かー!
特訓第一日目は、学生全滅で終わった…。
「くしょう…見ておれ、次こしょは」
「そうね…次は作戦を練らなきゃね」
「目に物見せてくれるわ」
全滅で終わったものの、学生達には火がついた。とくに、我が学友達に…。
2日目が楽しみだ。
「「「ぬっふっふっふっふっふ・・・・」」」
地面に倒れるシャナ同級生達から不気味な笑い声が響く。
気絶する学生達を回収、けが人を治療など、奔走している先生達が思わずびくりとする。
「次の戦いの前に学生会議でしゅね!」
「「もちろんよ!」だ!」
学生達の復讐成るか!?




