キノコの子
続きです。
「それで・・・・・・これ、どうすんだ・・・・・・?」
帰宅してしばらく経った頃、ダンが困った表情を浮かべて腕を組んでいた。
その視線の先にはシュルームと、それから・・・・・・。
「どうするもこうするもないですよ! わたしは・・・・・・あの歩きキノコからこの子たちを託されたんですから! もうこの子たちは仲間・・・・・・いえ、家族です!」
ダンの疑問にきっぱりと答えるシュルーム。
その周りには例の子どものキノコ・・・・・・が朽木から出てきて走り回っていた。
おまけに・・・・・・。
「なんか・・・・・・増えてない???」
最初の数を正確に数えていたわけじゃないけれど、やっぱりなんだか増えている気がする。
キノコの殖え方なんて全然分かんないけど、もしかしたらまだ目に見えないくらいの大きさだったのが育って見えるようになったのかもしれない。
シュルームはわたしの指摘なんか気にする素振りもせずにキノコの子たちをまとめて抱き上げる。
何匹・・・・・・何人?
まぁ数え方はともかく、いくつかのキノ子どもは抱えきれず腕からこぼれていた。
「大丈夫ですよ! ちゃんとわたしが責任持って面倒見ますから! それに・・・・・・この子たちも動けるなら、もしかしたら役に立つかもしれませんし!」
「あ、あのなぁシュルーム・・・・・・こいつらは普通のキノコとはわけが違うんだぞ? お前だっていつでも面倒見ててやるってことはできないし、目を離した隙に何が起きるか分からない」
「だから大丈夫ですって! この子たちは賢いんですから、そこら辺の分別の無い魔物と一緒くたにしないでください! ねっ? そうだよね、みんな?」
シュルームはキノ子どもの賢さを証明するように、その場にしゃがんで手のひらを突き出す。
それを見たキノ子どもはしばらく何事か考えた後、跳躍してシュルームの手のひらとハイタッチして見せた。
勢い余ったのか、はたまたスケベな個体だったのか、どさくさに紛れてパイタッチしてるのも居る。
「ほら! 見てください!」
「なんだお前・・・・・・もう芸仕込んであるのかよ・・・・・・」
「いえ、ぶっつけ本番です。なんかこう・・・・・・なんとなくで意思の疎通ができてる感はありますよ」
「えぇ・・・・・・」
ダンはすっかり呆れて頭を抱える。
しかしかと言ってここで「そのキノコ全部捨ててきなさい!」と言えないのがダンだ。
まぁ言ったとしても一部始終を見ていたわたしや、また今晩もどこかへ出掛けてしまったプルームが「それはちょっと待て」を出すのだけど。
とにかく、こうして連れてきた時点でもうこの子たちを追い出そうなんて選択肢は無いのだ。
歩き出したり微妙に増えたりしたのは予想外だったけど、まぁ・・・・・・その、別にいんじゃない?
「はぁ、俺の家がどんどんよく分からないことになっていく・・・・・・」
「・・・・・・キノコだらけだったのは前からだけどね・・・・・・」
「はぁ・・・・・・。とりあえず今日はもう疲れた・・・・・・。寝る」
結局いつものようにダンが折れる。
まぁこういうのって往々にして最初は反対派だった人が一番メロメロになったりするものだし、心配要らないだろう。
普通のペットとかと重ねて考えるのがそもそもどうなのかというところだけど。
ダンは今は現実逃避したいようで、早々に二階の自室に消えていく。
わたしとシュルームは、もうちょっとだけ下に残ってキノコと遊んだ。
続きます。




