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キノコのキモチ

続きです。

「いよしっ・・・・・・!」


 二度寝もして、腹ごしらえもして・・・・・・体は痛いままだけど、準備完了だ。

サチは朝食後にすぐ帰ってしまった。


「それじゃ・・・・・・みんな、今日の目的は分かってますね?」


 シュルームがまるでリーダーみたいにそれぞれの顔を窺う。

それにわたし含めたみんなははっきりと頷いた。


「今日は・・・・・・サチが居ないのもあって、昨日以上に時間もかかるし苦戦します。でも、いいかげんいつまでもコーラルを借りているわけにもいかないので・・・・・・絶対に今日で片付けますよ!」

「「おおー!!」」


 正味キノコ男探しに熱意を持っているのはシュルームだけだけど・・・・・・それでもみんな気合い十分だ。

二日目ともなれば、こう・・・・・・勘が戻ってくるというか、冒険者たるものの生活がかくあるべきということを思い出してきたのだろう。


 足並みを揃えて、それから家の外へ出る。

出迎えてくれた眩しい日差しに目を細め、向かうべき方角を見つめた。


 今回はシュルームの気合いが入りまくっているので、リーダーを差し置いて先頭を歩く。

一応第二目撃者ということもあって、わたしもその傍に控える形で追従した。


※ ※ ※


 もうすっかりお馴染みの菌糸の森。

もはやわたしたちの庭と言っても・・・・・・全然差し支えある。

ただでさえ地形の分からない場所なのに、最近さらに地形が変わったときた。

一応あのモグラの魔物はやっつけたわけだけど、今日来てみればまた雰囲気が変わっているような気がする。


「ふむ・・・・・・。とりあえず今日の様子は・・・・・・昨日と同じ感じですね・・・・・・」


 シュルームが辺りを見回し冷静に分析する。

やっぱり雰囲気は変わってない気もしてきた。

うん、いや変わってないわ。


 キノコに関してはシュルーム以外みんな無知。

プルームは調理法だとかは知ってるだろうけど、それは今役に立つ知識じゃないだろう。

つまり・・・・・・。


「シュルーム・・・・・・それで、俺たちはこっからどうしたらいいんだ?」

「シュルーム様の仰せのままに〜」


 指示待ちである。

ダンとプルームがシュルームの指示を仰ぐ。

なんだか二人とも半分からかうように言ったが、それにシュルームは自信満々な笑みを浮かべた。


「もちろん森の全域をしらみつぶしに手当たり次第探せとは言いませんよ。いいですか・・・・・・キノコの気持ちになるのです! あなたたちは今からキノコです! 薄暗くてジメジメした場所が大好き! 分かりますか?」

「は?」

「は?」

「は?」


 非難轟轟である。

まぁそれも無理もないというか・・・・・・誰だってこの態度になるだろう。

シュルームの言っていることは・・・・・・あまりにも意味が分からなすぎる。


「ですからぁ!」


 シュルームが「分からずやめ!」とばかりに声を荒げる。

これ、悪いのわたし達だろうか?


「キノコの気持ちになるんですよ! みんなだったらどんな場所で生活したいか・・・・・・それをキノコの視点で考えるんです! キノコの思考をトレースし、キノコの声を聞き、やがて魂はキノコと一つになる。オーケー?」

「なんか・・・・・・宗教?」

「コーラル、口を謹んでください」

「うぅ・・・・・・」


 結局のところ・・・・・・これってしらみつぶしと何か違いがあるのだろうか。

なんかシュルーム本人は言ってやった風の顔をしているけど、誰も納得してないからね。


「とにかく! コーラルだったら・・・・・・どんな場所に住みたいですか?」

「あったかくて日当たりのいい場所。あ、あと海とか近くだといいな・・・・・・」

「ノーノーノー! ノットマッシュルームですよコーラル! もっとキノコの気持ちになってください。昨日キノコ食べたんですから、それくらい楽勝でしょ?」

「・・・・・・そういうもんかな・・・・・・。えっとじゃあ・・・・・・洞窟とか・・・・・・?」


 いつになくダルいシュルームに、とりあえず無難そうな答えを提出する。

して、その評価は・・・・・・。


「無難、ですね」

「あっそ・・・・・・」


 何この・・・・・・何・・・・・・?

まだ昨日吸った胞子抜けてないんじゃないか、この人・・・・・・?


「ま、ですが・・・・・・とっかかりとしてはナイスなアンサーでしょう。無難っていうことは・・・・・・十分に妥当な判断ってことですよ。ですからまず・・・・・・洞窟探索から始めましょう。この森の洞窟はどれも小規模と言われていますから、候補地としてはだいぶ絞れていることになります」


 シュルームの手帳を握る手にぎゅっと力がこもる。

とりあえずではあるが・・・・・・これで今の行動の指針が定まったのだ。


「いいですか、必ず・・・・・・見つけてやりますよ! 待っててください、キノコ人間・・・・・・!!」


 わたしがキノコだったら逃げてしまいそうなくらい、シュルームはアツく燃え上がっていた。

続きます。

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