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キノコを求めて

続きです。

 太陽が空のてっぺんを通り過ぎて少し経った頃、わたしたちはやっと菌糸の森にたどり着いた。

額を滲んだ汗が伝う。

今日は一日中過ごしやすい気温ではあるのだが、丁度最も気温が高くなるくらいの時間帯なのもあって少し暑かった。


「ふぅ・・・・・・着いたぁ・・・・・・」


 みんなと一緒に、日差しから逃げるように森の中へ進んでいく。

こうして日光が遮られるだけでだいぶ涼しくなった。

ただ今度は汗が冷えたらちょっと寒くなりそうな予感だ。


「お、思ったより・・・・・・遠かったな・・・・・・」

「だから言ったじゃないですか!」


 鎧を着込んでいるダンと、そもそもそんなに体力のある方じゃないシュルームが疲れた様子で膝に手をつく。

そのあと、日陰に身を隠すようにして樹木にもたれかかっていた。


「キミら体力なさすぎない?」


 唯一プルームは療養中も家事やらなんやらで体を動かしていたみたいで、二人の体がすっかり鈍ってしまった様子を見て呆れていた。


 とはいえわたしも他人事ではない。

そんなべらぼうに疲れたというわけでもないが、確かに以前では信じられないくらい疲弊している。

体って使わないと鈍るものだなっていうのを身をもって感じた。


「ていうか・・・・・・なんでサチは大丈夫そなの・・・・・・?」


 森が見えて来たあたりからもそもそサンドイッチを食べ始めていたサチの方を見る。

多少暑そうではあるが、その表情に疲れは見えない。


「まぁ・・・・・・はい、結構フィールドワークみたいなのもありますから、体力はそこそこありますよ。長距離を歩くのにも慣れてますし・・・・・・」

「う・・・・・・なんか冒険者として負けちゃいけないところで負けた気がする・・・・・・」


 学力や知識で負けるならまだしも、体を動かすことで学生に負けてしまうとなると冒険者の風上にも置けない。

今思い返せばお腹が空いたからって早々に自分の分のサンドイッチを食べてしまったのがまずかったのかもしれない。

・・・・・・いや、やっぱり関係ないかも・・・・・・。


「まぁまぁ、とにかくもうここは人のテリトリーじゃないんだ。油断してもらっちゃ困るよ。あいにく今日のボクは守らなくちゃならないレディが居るからね、キミたちのことまで気にかけてられないよ?」

「「余計なお世話!」」


 ダンとシュルームに対して釘を指すプルーム。

二人は疲れた様子ながらも息ぴったりでプルームに言い返した。


「と、ともかく! キノコ、採りに来たんですよね? 私が道案内はしますから・・・・・・」


 サチがわたしとプルームに視線を送って、先頭まで歩み出す。

その頃にはもうすっかりサンドイッチは食べ切っていた。


「ですから、戦闘はみなさんにお願いしますよ。その・・・・・・守ってくださいよ? プルームさん・・・・・・?」

「ふ・・・・・・ええ、お任せを」


 サチの言葉に、プルームは格好つけた笑みを浮かべる。


「はぁ・・・・・・」

「まったく・・・・・・」


 ダンとシュルームも、いいかげんスイッチを切り替える。

わたしも、二人が真剣な表情を見せると高揚を伴う緊張感が蘇ってきた。

そう、冒険ってこういうものだった。


 以前とは少し景色の変わった菌糸の森。

そこに潜む危険は未知数。

いつもの短剣を手のひらに、サチたちに続いて進んで行った。

続きます。

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