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歩調

続きです。

「ねぇ、そういえば・・・・・・ヌシの正体だったキノコって、今持ってたりするんですか?」


 一定の緊張感を保って森の中を進んでいたところ、シュルームが耐えかねたようにサチに尋ねる。

シュルームの眼差しには、未だ距離感が掴めないでいるサチへの気まずさとキノコに対する好奇心の色がひしめき合っていた。


 サチは歩く速度を落とさず、しかししっかりシュルームの方を向いて答えた。


「それがですね・・・・・・採取はしたのですが、今ではもうすっかり萎れてしまって・・・・・・」

「えっ、えぇー!! ダメにしちゃったの!?」

「それは・・・・・・まぁはい・・・・・・そうなります・・・・・・」

「そっ、かぁ・・・・・・」


 申し訳なさそう・・・・・・というよりは悔しそうなサチと、単純に残念そうなシュルーム。

ただ、これでシュルームもやっとサチとの距離感を掴みだしたようだった。


「なぁ? ところで討伐隊はいつ来るんだ? 俺たちが森に着いてだいぶ経つが、特にこれといって音沙汰がないようだけど・・・・・・」


 ダンは、長年パーティのリーダーをやって来ただけあって不安そうに辺りを見渡す。

自分たちの実力はダンたち自身が一番よく分かっていた。

だから、何かあったら対処できない可能性が高い。

とはいえ、コーラルのことを念頭におくと、やはりこうして森に立ち入る以外の選択肢は無かった。


 サチはダンの不安に対して、真面目に、しかし無慈悲に答える。


「たぶん、しばらく来ませんよ。流石は太平の都と言ったところか・・・・・・あの街では戦力の集まりが悪いみたいです。だから真理の庭の増援を待つ他ないのですが、向こうも向こうであんまり急に人員は捻出できません。忙しいですから・・・・・・」

「・・・・・・つまり、不測の事態に陥っても俺たちでなんとかしないといけないわけか・・・・・・」

「ただまぁ・・・・・・辺りは静かですし、今のところは・・・・・・って感じですね」


 サチは色々と考えを巡らせながら歩みを進める。

このメンバーが変異体を相手にしたとき十分な戦力にならないのは、サチ自身言われるまでもなく把握していた。

何故ならサチは俗に言うアナライザーだからだ。

というか、真理の庭が運営する学校はアナライザーしか生徒にとっていない。


 感覚器官の延長として能力を使うのではなく、思考の延長として能力を使え。

これはサチの所属する学校では誰もがまず聞かされる言葉だ。

サチ自身、その言葉を胸に刻んでいる。


 しかし、そういった意味では・・・・・・。

サチはまだ未熟な生徒だった。

続きます。

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