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続きです。

 管理人が頷くと、事態は途端にとんとん拍子で進み出した。

突然現れた少女が言った通りに、着々と準備が整っていく。

討伐隊メンバーの当てがあるのか、一部のギルド職員は忙しなく外へ駆け出していった。


「なんか、すごいことになっちゃいましたね・・・・・・」


 シュルームが、ギルドのテーブルに頬杖をついて呟く。

少女の来訪から急にギルドの様子が忙しなくなっていったので、往来の邪魔にならないようにダンたちは隅のテーブルに着いていた。


 ダンパーティの等級は四級、それも昇級したばかりだ。

そんなパーティにお呼びがかかるはずもなく、ただなんとなく立ち去るタイミングも逃して、仕方なくギルドの様子を見守っていた。


 ダンたちは、再び視線を少女の方へ向ける。

少女は最初に話していた獣人の職員に呼び止められ、何やら話している。


「え・・・・・・?」

「いや、だから・・・・・・ですね・・・・・・。ヌシの討伐依頼なんて受ける人あんまり居ないんですけど、今日に限って・・・・・・」

「うそ・・・・・・誰かが今森に居るんですか? 何人? パーティの等級は?」

「いえ、その・・・・・・パーティですらなくてですね・・・・・・お二人で出ていかれました・・・・・・」


 獣人は気まずそうに少女から視線を逸らす。

少女も、今や危険地帯と化している菌糸の森に誰かがもう居るのが想定外だったようで、なかなか思う通りにならない事態に表情を歪めていた。


 一方、獣人の言葉を聞いたプルームの胸中には一つの可能性がよぎっていた。


「いや、まさか・・・・・・ね」


 “あの二人”がヌシの討伐だなんて、場合によってはものすごく危険な依頼など受けないだろうと、無理矢理自分を納得させる。


「・・・・・・? どうしました?」


 しかしその不安は隠しきれなかったようで、向かいに座るシュルームには違和感を覚えられてしまった。


 プルームの様子に、シュルームも漠然と嫌なものを予感し始める。

今日の初めから暗い表情を浮かべていたダンパーティだが、その疑念のせいでただでさえ暗い表情の影を濃くしていた。


「誰なんです? 菌糸の森に向かったのは・・・・・・」


 プルームたちの心が整わないうちに、少女は受付の獣人に聞いてしまう。

その言葉を聞いた瞬間、プルームは一筋の汗を流した。


 その瞬間を前にして、時間はゆっくりになる。

獣人の小さな口が開かれ、内側の歯が覗き、その舌が、喉が、言葉を紡いだ。


「菌糸の森に向かった二人は・・・・・・えっと、ラヴィ、と・・・・・・コーラル、です」


 時間が止まる。


「は?」


 獣人の言葉に頓狂な声を上げたのは、ダンだった。


 こうなっては居ても立っても居られなくなり、ダンたちは獣人と少女の元に駆け寄る。


「どういうことだよ!」

「い、いま・・・・・・なんて言いました?」

「・・・・・・どうして、よりによって・・・・・・」


 聞く側のことも考えずに、三人は口々に獣人と少女に言葉を投げる。


 少女はいきなり押し寄せてきた人の圧に驚き、獣人もまた困惑を隠さなかった。


「あ、あなたたち・・・・・・は、え・・・・・・だれぇ・・・・・・?」


 ビクつきながらも、獣人は迫って来た三人に尋ねる。

それにダンパーティは答え方を見つけられずに一瞬言葉に詰まるが・・・・・・。

一歩前に踏み出したプルームが、先ほどまでとは打って変わって、きっぱりと言い放った。


「ボクたちは・・・・・・コーラルの、家族です・・・・・・!」

続きます。

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