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妖刀とコムギ

続きです。

「はぁ・・・・・・どうする?」

「どうしたもんかねぇ・・・・・・」


 ラヴィがわたしの言葉に頬杖をつく。


 あれからしばらく経って、わたしたちは遅めのお昼を摂っていた。

あんなことがあった後なのに、町は依然穏やかなまま・・・・・・。

無関心というよりかは、きっとこの国の人たちはどこかああいう荒事に慣れてしまっているのだと思う。


 何はともあれ、魔導通信機が破壊された。

あの忍者たちのリーダーが「目的は果たした」と言っていたが、まさかその目的が魔導通信機を壊すことだったとは・・・・・・。

もしかしたら他にも何かをしたのかもしれないが、現時点での決定的な被害は魔導通信機だけだった。


 そういえば・・・・・・あの仲間の忍者たちは、しばらくしたら問題なく目覚めた。

また戦いになるかもしれないと少し焦ったりもしたが、傷を押さえて一目散に逃げて行った。

リンとオジジの言うことによれば「妖刀が彼らにかけられた妖術の呪縛を断ち切った」ということらしい。

妖術・・・・・・は、ここの言葉でブラッドコードのことだ。


 あの妖刀については結局のところよく分からないけど、とりあえずすごい代物らしいことはまぁ一旦分かったことにしておいた。


 この場にナエギは既に居ない。

襲撃の一件のせいで時間が押してしまったみたいで、とりあえず状況が落ち着くと急いでハンゾウハンスケとの待ち合わせ場所に向かってしまった。

その変わりにってわけじゃないが・・・・・・。


「おジジ! この店の料理はちと味が薄いのう・・・・・・」

「わしらの普段の飯が濃すぎるんじゃよ。むむ・・・・・・そろそろわしも食習慣を改めた方がいいかのう・・・・・・」


 リンとオジジ、今は二人が同行していた。

この後、一緒に浜へ船を見に行くことになっている。

わたしたちが浜に船を放置してきたことを伝えたら「置いてきたぁ!?」と二人に信じられないという眼差しを向けられてしまったが、それに関してはわたしたちにはどうしようもなかったし許してほしい。

ただそのせいで、船体丸ごとってわけじゃないけど何かしらの部品は分解して盗まれたりしているだろうことは覚悟しておかなければならないとのことだ。


 リンがわたしたちよりずっと小さな手で、しかしわたしたちよりずっと器用に箸を使いながらコムギに話しかける。


「のう、お主・・・・・・わしの知り合いに侍がおるから、一つ稽古でもつけてもらったらどうじゃ?」

「えっ・・・・・・稽古!? あたしが・・・・・・!?」


 なんだかまた厄介そうな流れを検知したコムギは面倒そうに頬を引き攣らせるが、リンは目をキラキラさせて話し続けた。


「妖刀を扱える者など、わしの歳だと・・・・・・もう見たこともないからのう。それくらい今の世ではお主は貴重な器量の持ち主ということになるわけじゃ。それに、この国では無理でも・・・・・・お主らはいずれここを経つのじゃから、その時までに妖刀の力を引き出せるようになっておけばお主らの国で妖刀の鍛造技術を復活させられるかもしれん。わしらのような職人は、やはり技術が途絶えるのは悔しいのじゃよ・・・・・・」

「に、荷が重い・・・・・・」

「ほっほ、なぁに気にすることはない。ただわしらは大切にしてもらえればそれで十分じゃ。扱える者の手に渡った、それだけで十分なんじゃ」


 オジジが笑いながらリンの背中に腕を回す。

リンもそれに満足そうに笑った。


 コムギは妖刀を大事そうに両手で抱えて、見つめる。

実はあの後・・・・・・リンたちに抜刀して見せようとしたら、鞘から刃を抜き放つことができなかったのだ。

コムギを使い手に選んだものの、どうやらなかなか気分屋みたいだ。

色々な背景を踏まえた上で、コムギも思うところがあるのだろう。


「さて、じゃあそろそろ・・・・・・」


 食事もおおかた片付いてきて、サチがみんなの表情を窺う。

腹も満たされたわたしたちはそれに頷いた。


 道のりは・・・・・・正直うろ覚えだけど、現地人の二人もいることだしあやふやでも大丈夫だろう。

喉元に食事の余韻をまだ残したまま、浜を目指して店を後にした。

続きます。

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