やっとこさギルドへ
続きです。
「ふぃ〜・・・・・・」
お風呂で温まった体を風に当たって冷ます。
ハンゾウとハンスケのお金で買った服に身を包んで、店先に出てる椅子に並んで座っていた。
この服・・・・・・浴衣とかいうらしく、わたしたちの知る服の構造とは大きく異なり、着るのにかなり手間取った。
一応知識はちゃんとあったサチの力を借りてなんとか全員形にはなったが・・・・・・渡された下着(?)の着方がいまだに「これであってるのか?」って感じでいまいち落ち着かない。
「しっかし、お兄ちゃんおそーい・・・・・・」
コムギが足をぶらぶらさせながらボヤく。
ご飯を食べて、お風呂にも入って・・・・・・結果的にギルドに行くのはだいぶ後回しになってしまっていた。
てっきりわたしたちがお風呂から上がったらもうナエギは先に出て待っているものかと思っていたけれど・・・・・・そんなことはなかった。
まさかわたしたちを置いてどこかへ行ってしまったわけでもないだろうし・・・・・・。
「ま、待ってよう。なんにしたってここには来るはずだから」
ただ待つだけのことに退屈しているコムギとは裏腹に、ラヴィは気ままに涼んでいた。
実際、身に纏う生地が薄いのもあってほてった体に吹く風が気持ちいい。
ちょっと気を抜くと眠くなってきちゃいそうなくらいだ。
そうこうしてしばらく待っていると・・・・・・本当にわたしたちより長風呂していただけらしく、ナエギが例の二人に馴れ馴れしく肩を組まれながら出てきた。
「あっ、お兄ちゃん遅い!」
その姿を見つけるやいなやコムギが駆け寄って文句を垂れる。
ナエギは両サイドの二人に鬱陶しそうにしながら「悪かったよ・・・・・・」と言葉だけで謝った。
役者が揃ったのを見届けて、サチがすくっと立ち上がる。
そして一枚心の壁を隔てたやや冷たい表情でハンゾウたちに言った。
「それでは、次はギルドまで案内してください」
その声色にはもはや感情が滲まない。
それこそ機械的に、ただ必要事項の確認だけを目的としたもの。
たぶん・・・・・・結構サチの苦手なタイプの人だったんだろうな、と容易に察せられた。
しばらく時間をおいたせいで、ハンゾウとハンスケのどっちかは分からないけど・・・・・・風呂上がりの赤い顔でニタッと笑う。
「ええ、ええ。そりゃもちろん。ですがその後・・・・・・ちょっとこの兄ちゃん借りさしてもらいますわ」
「え、お兄ちゃんを・・・・・・?」
ハンどっちかの言葉に真っ先に反応したのはコムギ。
言葉ではあの二人に尋ねつつも、その目線はナエギに向いていた。
それにナエギは・・・・・・肩を落として苦笑いする。
「はは、どうにもそうらしくてな・・・・・・。だから、その・・・・・・悪いけどみんなはどっかで待っててくれ・・・・・・」
「う・・・・・・別に、それ自体はいいけどさ・・・・・・。ほんとに大丈夫? お兄ちゃんなんか・・・・・・何、騙されてない・・・・・・?」
「さぁな、もーさっぱり。けどまぁ、これに関してはもう協力するって言っちゃって・・・・・・。なんかそこそこ時間はかかるらしいけど・・・・・・」
ナエギはコムギの言葉に曖昧に答える。
コムギは終始どこか疑わしげな表情をしていたけど、ナエギ自身本当にまだ詳しいことは分からないらしく、その疑念の眼差しに困った顔をするばかりだった。
内容もよく分からないうちにそういう提案を受けるなよとは思うけど・・・・・・まぁ色々あったのだろう・・・・・・。
「どうする、ラヴィ?」
一応、このことについてラヴィにも確認してみる。
ラヴィはため息をつきながら「まぁ仕方ないよね・・・・・・」と答えた。
「よしよし! これでお嬢さん方への確認も取れました、と! なら後は・・・・・・あっしらの最後の務めを果たさせていただきやしょう。ほら、ハンスケ!」
「へぇ、ただいま!」
どういうわけか、やたらノリノリでハンゾウたちがわたしたちの前まで躍り出る。
やっと肩組みから解放されたナエギは額の汗を拭き拭き一息ついていた。
ハンゾウが「しっかり着いて来い」と自分の背中を親指で指す。
「そいじゃ可愛いらしいお嬢さん方、なぁに心配は要りやせん! あっしらがしっかりその“ぎるど”に届けてやりますよ」
「そう遠くもねぇから、俺たちに任せてくだせぇ!」
そうして・・・・・・なんだか頼もしさとかよりは不信感の方が大きい道案内が始まった。
続きます。




