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見知らぬ街

続きです。

「ここが・・・・・・!」


 馬車に揺られること数時間、わたしたちはついに港町にたどり着いた。

見知らぬ街を訪れるのはいったい何年ぶりになるのか、もう自分でも分からない。


 港町というだけあって嗅ぎ慣れない潮風の匂いが漂ってくる。

交易も盛んなようで、雰囲気の違う服装の人たちが行き交っていた。


 その往来の多さと空気感の違いに心躍る。

ナエギとコムギも・・・・・・。


「わぁ、ここが・・・・・・海・・・・・・」

「すごいな、ちょっと・・・・・・パシフィカでは見ない賑わい方だ・・・・・・」


 パシフィカ以外の街を知らない二人にとってはかなり刺激的なようだ。

そういえば・・・・・・ラヴィはどうなんだろう・・・・・・?

ラヴィもパシフィカから出たことはないのかな?


 馬車から降り、サチと二、三言交わしているラヴィの方を見る。

わたしの視線に気づいたラヴィは、こちらを見て微笑む。

その後、小走りでこちらに向かってきた。


「どうかした?」

「あ、いや・・・・・・ラヴィってパシフィカ以外の街見たことあるのかなぁって」

「ああ、それは・・・・・・」


 わたしの言葉にラヴィが少し上に視線を向けて記憶を探る。

その視線を数回左右に泳がせた後、わたしに視線を戻した。


「んーと、私の覚えている範囲では・・・・・・無い、かな? それこそ、私で研究してた二人を実の両親だと思ってたくらいだから、それ以前のことってなると・・・・・・思い出せないかな・・・・・・」

「あっ、そっか・・・・・・。なんか、その・・・・・・ごめん」

「いやいや、いいんだよ。今こうやって、コーラルたちと知らない場所に来られるの・・・・・・楽しいから」

「ふふ、そっか・・・・・・」


 ラヴィも、知らない街は初めてみたいだ。

だったら・・・・・・ここはわたしが一つ先輩ということになる。

そういうことなら先陣を切って・・・・・・。


「みなさん・・・・・・準備はいいですか? よろしければ街の中へ・・・・・・ここで立ち止まっていても往来の邪魔ですから」


 サチが慣れた様子で、わたしたちを先導する。

どうやら・・・・・・わたしの出る幕は無さそうだった。


 サチを先頭に、まるで引率される子供たちみたいになりながら街に踏み入っていく。

パシフィカと違って建物は石造りのものが多かった。


 立ち並ぶ露店には港街らしく海産物が並んでいて、どれもパシフィカで見るものよりは鮮やかに見えた。

街の中を歩くと、潮の香り以外にもどこかのお店から美味しそうな食べ物の匂いが漂ってくる。


「そういえば・・・・・・」


 もうお昼時と言ってもいい時間。

ワクワク感とかウキウキ感で忘れていた空腹が、匂いに釣られて戻ってくる。

それを周りのみんなにも知らせるように、お腹が「きゅ〜」と鳴った。


「ふふ、迎えの船が来るまではまだ時間がありますから・・・・・・ご飯にしましょうか。出発時間に関してはそんなに厳密じゃありませんから・・・・・・」


 サチがわたしの腹の虫の報告を受けて笑う。

ラヴィも辺りのお店に視線を這わせながら、その言葉に楽しみそうな表情を浮かべた。

続きます。

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