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次の依頼は・・・・・・?

続きです。

 あれからさらに数ヶ月後、わたしたちは正式なパーティとしていくつかの依頼をこなした。

簡単なのも、ちょっと重めなのも・・・・・・風変わりなやつもあって、どこかの珍しいトカゲの卵を孵化させるって依頼もあった。

面白そうだったのと報酬が美味しかったので引き受けたけど・・・・・・渡された卵がわたしが中に二人は収まりそうな大きさでびっくりしちゃった。

けど、サチの手も借りてなんとか孵すことができた。

大変は大変だったけど・・・・・・やっぱり楽しかった、と思う。


 さて、そうして数々の依頼をこなし、たくさんの時間を重ねてきたわたしたち。

その姿は誰にも文句のつけようのない、ちゃんとしたパーティだった。

そして今日・・・・・・ある依頼がわたしたちのところに舞い込んできた。

いや、依頼というか正確には・・・・・・。


「しばらくパシフィカに留まってハンドレッド先生とやり取りしていましたが、遂に学祖様がコーラルさんを正式に真理の庭に招待したいとおっしゃったそうです」


 まだ依頼を受けに行く前の朝、その時は丁度たまたまナエギとコムギもパンの差し入れに来てくれていて、ラヴィとわたしの家に四人が揃っていた朝。

サチがそんな知らせを持ってやって来た。


「えっと・・・・・・招待、って・・・・・・?」


 受け取ってからさっそく食べ始めていたパンを齧るのを中断して、サチに詳細を求める。

急いでここまでやって来たと見えるサチに、ラヴィはとりあえず飲み物を渡す。

それを一息で飲み干してから、サチは再び話し始めた。


「羽化、の件について・・・・・・学祖様がコーラルさんを“特別な例”として判断しました。ですから、実際に真理の庭まで来てもらって・・・・・・会って話がしたいということらしいです」

「それはまたずいぶん・・・・・・急、だねぇ・・・・・・」


 ラヴィがサチの話を聞きながら、顎に手をやる。

何かを勘繰っているようだったが、結局のところ情報が少なすぎるのでこれといった考えは浮かばなかったようだ。


「ねぇ、お兄ちゃん・・・・・・真理の庭って・・・・・・」

「ああ、有名な学術組織・・・・・・で、アナライザーを対象とした教育機関でもある。学祖ってことは・・・・・・たぶん本校だぞ。五賢人が直接運営してるっていう・・・・・・」

「その通りです!」


 ナエギの言葉にサチが頷く。


「コーラルさん・・・・・・と、ついでにはなりますがその他みなさんも・・・・・・その本校から招待が来ています。まぁ、その・・・・・・もちろん招待ですから、断ることはできるのですが・・・・・・私としてはできれば来ていただければと・・・・・・」


 わたしとしては、まぁ別に構わない。

けどコムギたちはパン屋もあるし、ラヴィもこの招待についてどう考えるか分からない。

意見を求めるように、その他のみなさんに視線を向ける。


「俺たちは、まぁ・・・・・・パン屋は休業すればいいしな・・・・・・」

「うん、そだね・・・・・・」


 ナエギとコムギはまぁ「行くなら行く」というスタンスらしい。

そしてラヴィは・・・・・・。


「その前に・・・・・・その学祖様は、私のコーラルを具体的にどうするつもりなの?」


 ラヴィの眉間に、少し怪訝そうな溝が生まれる。


「私・・・・・・は、実は少し前から真理の庭については少なからず不信感を抱いていてね・・・・・・。コーラルの身の安全は保証できる?」


 ラヴィは鋭い眼差しをサチに向ける。

かつて協力した仲間と言えど、ここは譲れないのだろう。

けど、無理もない。


 ラヴィがわたしに語ってくれた、ラヴィ自身忘れていた過去。

アーティフィシャル・コード計画・・・・・・おそらくわたしたちの居た孤児院とも関係のあるその負の計画によって生み出されたのが現在のラヴィ・パラドクスという存在なのだから。


 サチはラヴィの心中を探るように目を凝らす。

アナライザーゆえに、おそらくそうすることで“見える”のだろう。

しかしラヴィは・・・・・・。


「やめた方がいいよ。たぶん、サチは知らない方がいいことかも知れない・・・・・・」

「それは・・・・・・」


 サチとて、そこまで心の弱い少女ではないだろう。

シュルームの故郷への行いについても、彼女はきちんと受け止めたのだから。

しかし、ラヴィの眼差しに気圧されるようにして・・・・・・その瞳を閉じ、表情を変えた。


「分かりました。けど・・・・・・今回の招待については、本当に会ってみたいだけみたいです。しばらくの間、特例的にみなさんを学生として受け入れて・・・・・・それでほとんどの時間は自由にしてもらって構わないということです。アナライザーなら誰もが受けたがる五賢人の授業を自由に受けられるんですよ? これは・・・・・・みなさんにとっても貴重な体験だと思いますが・・・・・・」

「授業、ねぇ・・・・・・」


 アナライザーなら垂涎ものの体験なのだろうけど、正直冒険者としては・・・・・・そんなに・・・・・・。


 わたしの微妙なリアクションを見てか、サチが別のカードを切る。


「学食、美味しいですよ・・・・・・」

「プルーム超え?」

「うっ、それは・・・・・・ですね・・・・・・」


 サチも認めるプルームの料理の美味しさ、自分のことでもないのに誇らしくなる。

ともかく、そのカードは通用しないみたいだ。


 まぁラヴィはわたしが行きたいってごねれば行くって言うだろうし、わたしを攻略対象に絞ったのは流石だ。


「え、えっと・・・・・・じゃあ、その・・・・・・わ、私と一緒に・・・・・・えと、遊びます? 向こうで・・・・・・?」


 自分でも自信無さげに、一押しとしては弱い手札を切るサチ。

けれど、わたしにとってそれは以外と・・・・・・。


「いいじゃん、楽しそう」

「えっ・・・・・・!?」

「自分で言ったんじゃん! そこで驚かないでよ〜・・・・・・」


 冒険者にとって小難しい授業は餌にならないが、でもそこに友達の姿があるなら話は別だ。

授業は興味ないけど、サチには興味あるんだから。


「ね、ラヴィ・・・・・・。わたしはいいと思うよ? たまにはこういうのもさ、楽しそうじゃん!」

「ん〜・・・・・・でも、楽しそうで引き受けた依頼で痛い目見たばっかりだからなぁ・・・・・・」


 ラヴィが言ってるのは例の卵孵化の依頼のことだ。

バカでかい卵を三日三晩つきっきりで温めるのは、正直貰えた高額報酬でもちょっと足りないと感じるくらいには大変だった。

まぁわたしたちが設備も何もない素人だったからっていうのも一因だけど。


「あっ、それと・・・・・・招待って言ってもあくまで頼んでいるのはこちらですから・・・・・・相応の報酬も・・・・・・」

「それを早く言いたまえよ! お金を貰って? 学生体験? 断る理由が無いじゃないか!」


 ラヴィが堕ちた。

一撃で。


 あなたのコーラルの心配はもうおしまいですか・・・・・・と思わないでもないが、まぁ実際は色々考慮を重ねた結果受け入れているのだろう。

そういえばわたしが卵孵化やりたいってごねてる時もその目は終始報酬金額に向いていた・・・・・・気がしないでもないな。


 そんなこんなで・・・・・・。

晴れて、わたしたちの引き受ける次の依頼が決まった。

続きます。

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