撃沈の帰り道
続きです。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
少し気まずい感じになりながら、帰り道を歩く。
日没はまぁ遠いが、例の一件で今日はもう何かをする感じでもなくなってしまった。
あの後、その場に居た全員で色々と後片付けをして、わたしは替えの下着や衣服をギルドからもらった。
もちろんタダで譲ってもらえたものだからその品質は上等じゃないけど、普段から使っているものも安物なので肌触りとかにそう差異は無い。
まぁそれでもやっぱり慣れない感じがするから、帰ったら早く取り替えたいけど。
汚れた衣服は水で流して絞ったのを袋に入れてある。
手に伝わるその確かな重さが、わたしの失態を色濃く想起させた。
「ま、まぁ・・・・・・しょうがないって。ほら、色々と・・・・・・さ、やっぱり・・・・・・あれは運が悪かっただけっていうか・・・・・・。コーラルは頑張ったよ」
「うん、ごめん・・・・・・」
あまりにも明らかに言葉数が少なくなっているわたしを、ラヴィが身振り手振りを交えて必死にフォローしてくれる。
ただ、その気遣いが今はちゃんと受け止められなかった。
結局、わたしが我慢できなかったせいで最後の面接はなぁなぁで終わってしまった。
ハロスは後片付けのときもずっと手伝ってくれたけど、全ての処理が済むとそこから再開って風にはまぁならなくて・・・・・・。
次の予定とかを取り付けるでもなく流れ解散だ。
ハロス。
あの人は、絶対よかった。
あんな風な人が仲間になってくれるなら、これ以上頼もしいことはなかっただろう。
「はぁ・・・・・・わたしのせいだ・・・・・・」
わたしのせいで面接は完遂されず、そうでなくてもあの失態ではハロスからの印象も最悪だろう。
どこで間違えたか・・・・・・を辿り出すと、今日の行いの全てが誤りだったような気さえしてくる。
もう恥ずかしいとかそういう段階は超えたけど、そうなると今度は失敗の重大さが重くのしかかってくる。
「もう・・・・・・だからそれならコーラルのせいじゃないって。そんな気にしてもしょうがないよ。う〜ん・・・・・・」
ラヴィがいつまでもいじけた様子のわたしに頭を悩ませる。
こういう自分の幼稚さがまたラヴィを困らせてしまっていることは分かりつつも、でもそれを修正できずにいた。
しかしそこで、ラヴィが何かを思いついたようでハッと顔を上げる。
「そうだ! コーラル、気分転換しよう! こういうときは何か別のことをして気を紛らわせるに限る!」
「気分、転換・・・・・・?」
わたしが首を傾けると、ラヴィは自信を湛えた笑みを浮かべ「そ、気分転換」と頷いた。
「そういえばコーラルはまだ行ったことがなかったなって・・・・・・。ほら、前にさ・・・・・・パン買ってきたところあるじゃん。あそこ変な・・・・・・じゃなくて、面白いものいっぱいあるから、興味あるやつ全部買って! で、全部食べる! どう?」
「えっと・・・・・・ヤケ買いってこと・・・・・・?」
「同時にヤケ食いでもある!!」
「え、ええ・・・・・・」
それってなんか、普通にあんまよくないことなんじゃ・・・・・・。
けれど、ラヴィ自身なんだかちょっと楽しそうな感じで、それに引っ張られてわたしもちょっと嬉しくなった。
なんだ、簡単じゃん。
わたしってちょろい。
「ふっ、それ・・・・・・ラヴィが買いたいだけなんじゃないの?」
「うーん、まぁ・・・・・・半分くらいはそうかな?」
行き先が家からパン屋に変わる。
と言っても歩く道は同じ、大通りから外れて住居の並ぶ方へ歩いていく。
喧騒は遠のき、空気の匂いが変わる。
どこかの水路を流れる水の音と、近所の人の世間話。
少し疲れたわたしたちは、日常の場所に戻って来た。
続きます。




