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面接待機

続きです。

 ギルド。

なんだか随分久しぶりな気のするシープ・ネムネムの案内で普段は立ち入ることのできない受付カウンターの向こう側へやって来ていた。


 既にだいぶ賑わっているギルド。

狭い通路を忙しそうにギルド職員が行き来している。

それを職場見学のような気分で眺めながらシープの後に続いた。


「ではオジョーサン方、こちらへ・・・・・・」


 いくつかの扉を通り過ぎた後、簡素なドアの前でシープが立ち止まる。

シープがジャンプしてノブにつかまると、自分の体重を利用して器用にドアを開いてみせた。

別にわたしたちに開けさせてもよかっただろうに。


「ここは・・・・・・」


 開かれたドアの内側へ、他の人たちの邪魔にならないように早々に滑り込む。

小さな窓から光の差し込む埃っぽい簡素な部屋。

隅に置かれた棚には必要なんだか不要なんだか全然分からない書類が山積みにされていた。


 その部屋の中央には一つの長机と、四つの椅子。

わたしとラヴィとシープと・・・・・・そして志願者ってことなんだろう・・・・・・。


「ではでは、到着次第候補者の方も来ますのでお二人は・・・・・・まぁしばらくお待ちください」

「あ・・・・・・うん」


 なんだか思ったより色々なことの説明とかがなく先に進んでしまっている感じがあって多少置いてきぼりになりながら椅子に腰掛ける。

隣のラヴィに縋るように視線を送ると「どうしようね」とラヴィも困ったように笑った。


 シープは机脇の椅子に座るでもなく、一度部屋を出て行ってしまう。

どうしたのだろうと思っているうちにすぐ戻ってきて、わたしとラヴィの前に簡素なカップに入った飲料を置いた。


「あ、ありがとう・・・・・・」

「いえいえ、緊張されてるようでしたので。そんなガチガチでは志願者の方々も不安でしょーから。オジョーサン方の実績はホンモノなんですから、もっと肩の力を抜いて」

「うぅ・・・・・・シープはいい子だね・・・・・・」

「ちょっと! 撫でないで・・・・・・撫でるな! シツレーですよ!!」


 とりあえずいつものように怒られてなんとか調子を取り戻す。

とはいえ平静とは程遠い。

机の下で脚は落ち着きなく動き、とにかくなんだかじっとしていられなくてカップを触ったり手を離したり、チビチビ口をつけては一旦置こうとしてけれども置き終わる前にもう一度口に運んだりした。

頭の中は何かを考えているようでその実散漫、冷静になると夢のように支離滅裂で筋が通っていない。


「うぅ・・・・・・」


 慣れない環境に耐えかねて机に突っ伏そうとするが、まだ誰が入って来たわけでもないのにそういうのを見られているような気がしてできなかった。


「はは、随分落ち着きないね・・・・・・」


 そう言うラヴィは無策な自覚がありながらだいぶ落ち着き払っている。

ラヴィは基本的にどんな時も落ち着いていて、パニックにならない。

こういう資質はどうしたら身につくのだろうかと考えるが、少なくともそれを考えたところで今この瞬間がどうにかなるわけもなかった。


 いっそ今日はこのまま何かの間違いで誰もこの場所を訪れなければいいのにとも思ってしまう。

しかし誰もやって来ていない今現在も既に胃が締め付けられるような思いをしているから関係ないかもしれなかった。


 手持ち無沙汰な手のひらがまたカップに逃げる。

そうして緊張を誤魔化すように口をつけると・・・・・・そこで初めて既にカップが空になってしまっていることに気づいた。


「あ・・・・・・」

「はぁ・・・・・・しょーがありませんね。全く・・・・・・いつまで経ってもジシンってつかないものなんですねぇ・・・・・・」


 シープはわたしの空のカップを持って椅子から飛び降り、また部屋の外へ出て行く。

そしてやっぱりすぐ戻って来て、再び満たされたカップをわたしの前に置いて座った。


「あ、ごめんなさい・・・・・・。ありがとう・・・・・・」


 シープに礼を言いながら、喉も渇いていないのに温かい液体を喉に流し込む。

緊張のせいか、元々詳しくないせいか、今自分が飲んでいるものも何らかのお茶であるらしいこと以外分からなかった。


「コーラル・・・・・・その、結構長丁場になると思うから、あんまり飲みすぎないようにね・・・・・・?」

「あ、うん・・・・・・そう、だね・・・・・・」


 ラヴィの言葉にそう受け答えながら、早速またカップに口をつけてしまう。

そして結局四杯目を半分くらいまで飲んだあたりで・・・・・・最初の志願者がやって来た。

続きます。

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