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96話 新しい砂漠

 -------------(ゆうご視点)-------------


 タウさんから自衛隊やLAF社員とのやり取りを聞いて、考えた。


 ステータスが表示される条件は何なのか。



 整理してみる。


 初めからステータスが表示されていたのは『異世界帰り』の面々だ。僕ら6人と自衛隊3人。

 タウさん、ミレさん、カンさん、アネさん、カオさん、僕。

 自衛隊はハマヤさん、フジさん、サンバさん。



 次に表示されたのは、『異世界』では一般人(WIZとして修行中)のマルク。マルクは一般人とは言え、異世界から地球に転移をしてきた。



 この時点では、『異世界』に関わった者にのみ、リアルステータスが現れるのでは?と思っていた。



 しかしその後、不思議な現象が起こった。


 ステータスが無いにも関わらず、ブックマークが出来た茨城拠点のふたり。カンさんの息子の翔太君とミレさんの姪の真琴ちゃんだ。

 いつの間にかマルクから貰ったスクロールでテレポートをしていたそうだ。



 そして次が、こちらのメンバーふたり。

 北野大地と北海太郎だ。どちらも最初はリアルステータスは表示されていなかったのに、ある日突然に表示されるようになった。


 何故、急に出るようになったのか。


 その情報によりタウさんらの洞窟拠点に居るメンバーの家族達もステータスが表示される事がわかった。



 ステータスが表示出来る一般人は全員が『地球の砂漠』のメンバーである。


 僕は、盟主が『異世界戻り』限定なのでは?と考えているが、他の血盟に加入した者がいないのでそこは不明だ。



 そして茨城シェルターの自衛隊員。彼ら3人も『異世界帰り』だ。

彼らは別々に血盟を立ち上げた。『陸自の砂漠』『海自の砂漠』『空自の砂漠』だ。


 陸自の砂漠に加入した一般人(LAFの社員だが)は、最初はステータス表示が無かった。しかしタウさんの地球の砂漠にログインした途端にステータスが表示された。


 脱退してもステータスは消えず、血盟欄のみブランクになった。そして陸自の砂漠に加入すると血盟が表示された。



 ここで重要なのは、リアルステータスは一度表示されるとその後に血盟を脱退しても『ステータスが消えない』と言う事だ。


 血盟はステータスから消えてしまうが、一番大事なアイテムボックスは残る。つまり今僕が『地球の砂漠』を脱退しても、血盟欄がブランクになるだけで、アイテム、マップ、フレンドは消えない……と、思われる。



 そう、LAF社員の残り4名は地球の砂漠に加入してステータスが表示された。うち、ひとりは自分で立ち上げた血盟ではステータス表示は無かった。



 とにかく『異世界』がキーワードなのは確かだ。



 では異世界と地球の違いは何だ?


 人間は基本一緒に思える。たぶん神様は『似た』構造を持つ人類の世界を選んで転移させてくれた気がする。


 こちらと違うのは、『異世界』には魔物が居て魔法が存在する。地球に無いものだ。


『魔物』『魔法』……。


 魔……、目には見えないが魔素のようなモノが関係しているのだろうか?


 つまり、『異世界』は魔素で溢れている、『異世界』に10年居た俺たちは魔素にさらされていた。


 『魔素』の染み込んだ身体で帰還したのでステータスが表示された?

 もちろん、その『ステータス』自体が神様が関わった何かではあるのだが、それはもう次元の違う話なので紐解かない。



 カオさんのエリアテレポートを経験する事でステータス表示されたのは、カオさんが使った魔法から『魔素』を浴びたからか?

 しかし3人だけで、その後他の者はステータス表示は起こらなかったと聞いた。その3人と他の隊員とは『魔素』量で何かが異なるのかもしれない。


 例えば、魔素を吸いやすい、魔素を溜め込みやすい体質を持っているとか、もしくは、どこかで魔素を浴びた事がある……。地球にも、実は魔素が発生する場所がある?

 まぁ推測に過ぎない、全く根拠の無い想像だ。


 

 茨城の拠点メンバーが早い段階で全員にステータスが表示されたのも、洞窟内の『魔素』に因るものかもしれないな。


 カオさんはライトやらの魔法を使いまくっているだろう。それにカンさんタウさんもMCNやDIKのスキルを洞窟に使っていると言っていた。洞窟拠点は魔素に溢れている?


 なるほど、それに比べてこちらの北海道組は『魔素』が殆ど無い。俺の近くに居る事が多かった大地が影響を受けたのもわかる。もしかしたら婆ちゃんもステータスが出るのか?



 想像ではあるが、ステータス表示の条件は以下の3つが予想される。


①異世界で魔素を浴びた経験

②異世界戻り組が持ち込んだ魔素の多い場所

③魔素が貯まる時間


 これらが絡み合っているのかもしれない。

 神様はその取っ掛かりとして『ゲーム』内の血盟を設置してくれたのか。


 『魔素』持ちの血盟に加入する事で、『魔素』が流れ込みやすくなる?いや、ちょっとこのあたりはよくわからない。だが発動の取っ掛かりではあると思う。



 とすると、タウさんらとの合流がまだ先になりそうなら、僕は僕で『血盟』を通して僕の『魔素』を受け取れる者に渡しておくべきかも知れない。




 大学の友人達に異世界の話はした。信じたかどうかは関係ない。

 ゲームアカウントを取得してもらいレベル上げもやってもらってる。が、パソコンが数台しかなく交代で使っている上に通信状態も良くない。


 もしも皆がテータスを出せたら、と考えていた。

 自分で血盟を立ち上げよう。




 タウさんから了承を得た。『地球の砂漠』から脱退した。


 立ち上げた血盟の名は『北の砂漠』。


 大地も地球の砂漠を抜けて北の砂漠へ加入した。ただし、北海太郎には頼み込んで地球の砂漠に残ってもらった。

 北海道と茨城、遠く離れた地でスマホの電波は悪い。連絡係として地球の砂漠に残ってもらいたかったのだ。


 もちろん、自分が残れたら残りたかった。しかし、『異世界帰り』の自分が作る血盟でもしもステータスが発生するのなら、血盟主として血盟員を広げて行かねばと思ったのだ。


 現在は血盟脱退ペナが0時間になっているので、このタイミングに僕は脱退、血盟を立ち上げた。


 この話を持ちかけたサークルの仲間(一緒に行動している避難仲間だ)には、タウさんに相談の上、一度地球の砂漠に入り脱退をしてから僕の血盟に加入をしてもらった。


 10名に試してもらったが、ステータスが表示されたのは1名のみだった。『地球の砂漠』ではなく、やはりどれだけ『魔素』に触れているかが大きなポイントであると思われる。

 その1名も僕や大地と比較的親しいひとりだったからだ。



 現在ステータスが表示されているのは、『地球の砂漠』に残ってくれている北海太郎。

 僕が立ち上げた『北の砂漠』では盟主である(ゆうご)と北野大地、山本圭吾の3人。


 サークル仲間の残り9人はステータス表示がないままだ。しかし今後表示される可能性はある。



 スクロールの在庫を考えるとそうそうテレポートのお試しは出来ない。だがブックマークはステータスが無い者にも積極的にしていってもらう。


 ここ函館山のグループでは、4名とは言えフレンド登録やパーティ登録も出来て、アイテムボックスもある。自分が持っているポーションやスクロール、食糧を分けて保管する。


 水が引いた麓へ降りて少しずつでも移動が出来る。ブックマークしてまた次の日移動を続ける。


 人が居る、店がある、避難所がある、医者がいる場所へ移動出来る。

自分だけで無く複数人で。


 ただ、婆ぁちゃんやご近所に住んでいる小さな子を連れての移動が出来ない。

 やはりカオさんに来てもらいエリアテレポートを使うくらいしか方法が思いつかない。


 僕らが下の街を散策して何とか移動出来る方法を見つけられればいいのだけど。



 僕はアイテムボックスに馬がある。ゲームでそんなに必要と思えなかったので一頭しか持っていない。

 だが、馬に引かせる何かを探してくれば、麓まで降りれれば後はそれに婆ぁちゃん達を乗せて運べるかも。


 こんな時、何で僕はWIZじゃないんだと後悔する。

ゲームの時はダークエルフである事を誇りに思っていた。ダークエルフは身が軽いのに攻撃力が高かった。モンスターを倒すのには最適だったんだ。

 そう、ゲームでの効率を考えると最高の職だった。


 けど、現実の災害には役に立たない。誰かを救うのに向かない。

 モンスターを倒せても仲間を救うのには役に立たないんだ。


 婆ぁちゃんを救えない。両親が死んだ後、ずっと俺を救ってくれてきた婆ぁちゃんを救えない。何で僕はダークエルフなんだよ。


 カオさんのようにWIZだったら良かったのに。

 魔法が使えて、ヒールが使えて、周りごとテレポートできて、サモンがあってサモンに荷車を引かせられて。

 WIZだったら良かった。


 こんな世界を想像してなかった。ゲームだから誰かを救うなんて考えてなかった。モンスターを倒せれば良かったんだ。


 でも今は婆ぁちゃんを救いたいんだ。



「大丈夫か?」



 大地に声をかけられた。


 子供の頃からの友達の北野大地は、嘘みたいな本名『北野大地』で、小学生の頃にいつもみんなにイジられていた。


『北の大地』って北海道の事を指す言い方らしいけど、北海道に住んでいる北野大地なんてと言われても、大地はいつも笑って流していた。


 そもそも大地のお父さんは広島県出身だし、大地が3歳の時にたまたま北海道へ転勤してきたのだから『北の大地』とは関係ない。

 でも大地はそんな事どうでもいいみたいだ。


 僕はヒョロリとして背はそれなりに高くなったけど運動とかは苦手で小学生の頃からゲームばかりしていたインドア派だ。

 大地は背も高いがガッシリしていて運動好きで、ホッケーやスノボやサッカーもやってた。

 いつも坂をランニングしていた。


 僕らは趣味は全く違うけど、仲が良かった。

 僕は婆ぁちゃんと二人暮らしだが、大地のとこは両親と兄弟姉妹の7人家族だ。婆ぁちゃんとふたりでよくご飯に呼ばれていた。


 あの日、隕石落下の日、大地の兄さん以外は家にいた。それが幸いして津波を逃れた。ただ大地の兄さんは海外赴任をしていて連絡は全く取れないらしい。



「あ、ごめん。大地、何だっけ?」


「大丈夫か? ええと、パソコンが空いてたら使いたいと思ってさ。レベル上げにつきあってくれよ」


「うん、わかった」


 僕の部屋へ。

 大地はノート型パソコンを抱えていた。


 ゲームを立ち上げるが本当に繋がりが良くない。

 クルクルと真ん中に渦が巻いている。繋がるまで早くても10分くらいはかかる。


 災害前は普通に繋がったのにな。



「そうだ、消防会館の食料がだいぶ減ってきたって言ってた」


「そうか。あとで補充しとく」


「ゆうごのソレ凄いよなぁ」


「アイテムボックス?」


「ああ。俺も行きたかったぜ、異世界」


「でも今はステータス出たんだろ? アイテムボックスも使えるよな?」


「使えるけどカラじゃなぁw」


「あるだけましw」


「うん、そうなんだけど。やっぱお前のボックスの中身を知るとなぁ。羨ましいぜ」


「あ、何か飲む? スタガ」


「おねしゃす。甘いやつで」


 僕はアイテムボックスから甘そうな飲み物とついでにスイーツも出す。自分には塩っぱい物にした。セボンのポテチ。



「在庫、大丈夫か? どのくらい保つ?」


「……うーん、セボン10店舗分と、マツチヨ10店舗分だからかなり保つと思う」


「マツチヨが想像つかんが、ハセダワストアみたいなもんか?」


「ちょっと違う気もするけど、まぁそんなもんかな」


「どんなだよw」


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