92話 おや?どちらの国から?⑦
-------------(タウロ視点)-------------
「ええと、まぁ、それで今後も検証を続けるためにもシェルターの通信を使わせてもらいたいのです」
「勿論です!ぜひともうちの通信を使ってください。シェルターではなく元からLAFジャパンのサーバーです。何なら通信だけでなくうちのゲーム部屋も使っちゃってください。その代わりと言っては何ですが、僕らも砂漠に入れてもらえませんか?」
「ええ、それは勿論。マースサーバーの? ええとジュピターや他のサーバーでも血盟を立ち上げて検証をしていただけるとありがたいのですが」
それ聞いたLAF社員達は顔を突き合わせて相談をしていた。
LAFジャパン東京サーバーには5人の社員が残っていた。
あの災害に出社していた者達だった。ひとりは先程ジュピターサーバーの自衛隊の血盟に加入した桂木君だ。他に4人。
災害後に彼らはシェルターと化した職場に篭り、仕事のような遊びのような日々を送っていたそうだ。
彼らは元から職場に泊まりがちであり、独り住まいのアパートには溜まった洗濯をしに戻るくらいだったので特に不満はなかったようだ。
宿直用の狭い部屋に交代で寝泊まりし、自宅に戻る者はいなかったと言う。
ここには簡易ではあるがシャワールームもあり、食事はシェルター内でも近場の他企業に頼み込んで食堂を一緒に使わせてもらっているという。
「それにしても驚きだよな。俺たちも行きたかったぜ!異世界!」
「俺たちこそ異世界に行くべきじゃないか? 神さまよぉ」
「あの、俺、血盟に加入したいです。マスサバにキャラ(DE)ありますから! あ、俺、佐藤っていいます。キャラ名はキングジムです、ヨロですー」
おや?と思った。『キングジム』と言う名前に聞き覚えがある。
「もしかしてGMさんですか?マースサーバーの」
GMと言うのは、ゲームマネージャーの事だ。運営しているゲーム会社の社員がゲーム内で不備、バグなどがないかを、ゲームキャラを作成してゲーム内の見回りを行っている。LAFではゲームマネージャーと言われていたが、ジェネラルマネージャーとかゲームマスターなどと呼ぶ人もいる。
変な場所でバグに嵌って動けなくなったプレイヤーが助けて貰ったと口にしていた名前が『キングジム』だったと記憶している。
「そうです。最近は、ああ、災害前ですが、週一くらいしかログインしてなかったんですけど。災害後はヒマでログインしっぱなしです。と言ってもずっとアジト放置ですがねw」
「そのキャラはどちらかの血盟に加入していますか? もしも血盟未加入ならば、今、うちに加入をしていただけますが」
「あぁぁ、加入しちゃってますぅ。くっそぅ、俺のばかばかばか」
「あ、そんなら俺の未加入キャラ、おねしゃすわ。申請依頼出しますー。因みにナイトなんす。剣王子で……」
「恥ずい名前じゃのうw」
「ほっとけ」
「承認しました。剣王子さん」
「あざます」
「あ、一応念のため、ステータスと声に出して言ってもらえますか?」
「ああ、はい。ステータス。!!!!ふぁって何じゃこれぇっ!」
剣王子さんが突然大きな声をあげた。
「何ですか!どうしたんすか!」
「まさかまさか…」
「ふざけないでくださいよ?」
まさかと思うが、ステータスが出たのだろうか?
「出ました?」
「オッドロイター。出た、つか出てる、ステータス!」
剣王子さんが空中を睨みながら宙で手を動かしている。ああ、ステータスが出たのですね。
他の社員や自衛隊員が剣王子の前面の空中を見ているが、他人には見えない。
先程、ジュピターサーバーの『陸自の砂漠』に加入した桂木君が叫び出した。
「ステータス!ステータスオープン! おい、俺には何も現れないぞ? お前、みんなをひっかけようとしてないか?」
「これ見えるの俺…、本人だけなのか」
「おい、何でお前だけに出るんだよ!俺には出てこないぞ」
「何が見えるんだああああああ、俺も試してぇぞぉぉぉ」
「待て、落ち着け皆よ。血盟ペナの時間をゼロに設定変更してやる」
そう言うと別のパソコン画面が裏画面にと展開されて、彼が何やらを打ち込んでいた。
「ああ、なるほど。書き換えるのか」
ミレさんには分かったようだった。システムの書き換えだろうか?結盟脱退のペナルティ時間を調節しているのだろう。
「ほいほいっと。ペナゼロになったぞー」
「今入ってる結盟を抜けてー、そして地球の砂漠へ、申請っと。おねしゃす!!!」
キングジムさんからの結盟加入申請を承認した。
「うおぉぉぉお! スッテーーーーータッスッ! ぐふっ、ぐふふふふふふふふ」
「チックショー! ジムにも出たのかあっ」
「キングと呼びたまえ、ジムではなくキング(ジム)様と。出た。ツルちゃん、フレ登録しようぜ」
ツルちゃん? ああ、剣王子の事か。キングジムと剣王子が向かい合って空中で何かを操作した後、お互いに堅い握手をしていた。
「なんだよ、ふたりともドヤ顔しやがって! 田浦さん、ステータスが出るのはマスサバだけなんすか?」
「え、あいえ、自衛隊のお三人はジュピターサーバーですが三人ともステータスは表示されてますよ」
「じゃ、何で俺には出ないんだ……ステ画面……」
「桂木ちゃん、気を落とすな?」
「くっそぉ、上から見下ろしやがって」
「ゲームとリアルステータスの関係はまだ謎の部分が殆どです。ただ何かしらの繋がりはあるはずです」
「そうですね、我々もジュピターサバで今後もログインをしていきます。……ただ、この件はやはり上に話して指示を仰ごうと思います」
やはりそうなるか。自衛隊という職業柄、上官への報告は必須だろう。
「一応、話す相手は選ぶつもりではありますが、一番上まで全て筒抜けになる事が予想されます」
「まぁそうなるでしょうね。私どもの事も隠すのは無理でしょうね」
「ええ、下手に隠して敵対するよりも、出来る限り有効な関係に持っていく所存ではあります」
「でも俺らは無理強いされたら逃げるぜ? なぁ、タウさん」
ミレさんがいつものふざけた物言いではなく真顔で自衛隊員を見た。




