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280話 番外編 ナヒョウエ③

 いやぁ、驚いたのなんの。まさかの鞄が異世界転移勇者、もとい勇鞄。


 とは言えその後の検証結果、ゲーム内でのドロップはその鞄には入れられなかった。

 つまり、ゲーム内でのアイテムは持ち出せないって事だ。



「残念! せっかくゲーム内の魔法書を持ち出せると思ったのにな」


「そうですねぇ」


 

 しかし、俺は思う。

 もしもナヒョウエが異世界と繋がっているとしたら。魔法書やダンジョンアイテムが取り寄せられるのでは?

 そしてそれをマルクの鞄に入れて持ち出せないかな。



「なるほど、カオるんの言うとおりですね」


「カオるん、偉いぞ」



 ミレさんに褒められたのでちょっと言いづらくなったのだが、ここはハッキリと言っておこう。



「たぶんだけど、現在ナヒョウエはあまり稼働していないぞ? あ、あっちの世界の話な。てのもさぁ、ダンジョンバナナが普通に冒険者により売買されるようになったから、ナヒョウエの販売活動はあまりしなくなってた」



 自分が店長でも店員でもなくなったのもあるし、あっちゃん達もナヒョウエに力を入れてなかったからなぁ。

 ここ数年は年に1〜2度行くくらいじゃないか?



「つまり、ナヒョウエを通して彼方の世界と連絡を取るのは難しいと。しかし可能性が無いわけではない。やる価値はあります」



 タウさんの言葉皆がうんうんと頷いた。



「まずは『連絡をとる』を目標に、その保管倉庫へ手紙を入れてみませんか?」



 おおぉう?なるほど?


 リアルで用意した手紙をマルクの収納鞄へ、そしてゲームイン。マルクがナヒョウエへ入り収納鞄を開けると手紙がある。

 その手紙を保管倉庫へ。



 ふむふむ、そう言う事か。

 そしてうまくすれば、もしかして彼方へ手紙が届くかも知れない?


 そして、まずはマルクに手紙を入れた。




『お元気ですか。マルクです。お父さんも一緒です。この手紙がアリサに届く事を祈ってます』




 うん。返事は来ないね。

 マルクがナヒョウエを覗くと手紙は保管倉庫に入ったままだ。


 ナヒョウエは王都だし、皆はムゥナの街だ。用がなければ王都には行かないだろう。

 気長に待とうと話しつつも、やはり気になってマルクに確認をしてもらう日々が続いた。



 そんな時、ゴンちゃんから朗報を貰った。


 ゲームの店舗は、商品が売り切れると連絡メールが来るシステムらしい。

 俺はそんなシステムがあったのも知らなかった。



「もしも、そのシステムが異世界にも対応するとしたら、ナヒョウエの商品を全部買いして空にしてみませんか?」



 あっちにも同じシステムが対応するのかはわからないが、もしかしたら共同経営者である誰かが気がついてくれないだろうか。


 店内のバナナを全部買う。商品カウンターの中の品もだ。


 ゲーム内のマルクの元にも『商品売り切れのお知らせ』が来た。

 果たして、異世界へもお知らせは届くのか?





 ナヒョウエの商品が空になってから3日。


 何と、商品の補充がされた!

 勿論マルクではない。という事は、異世界からの補充?



 皆が見守る中、マルクが保管箱を開けると手紙が無くなっていた!だが、向こうからのリアクションは無かった。

 もしかしたら手紙の返事が……とか思っていたのだ。



 気を落とさず新たな手紙を入れつつ、また商品を全部買い。ダンジョンフルーツが山盛りだ。それだけでもありがたい。


 こないだの手紙は堅苦しかったからな。不審がられたかもしれん。今回は皆でひと言ずつ書いた。



『もしもしー!僕マルクだよ!アリサ、ダン、あつ子おばさん!誰か読んでくれてる?届いてる?』


『俺です、俺、俺。鹿野香……カオです。無事に地球に戻りました。みんな、元気か?』


『タウロです。皆さんお変わりありませんか?こちらはそれなりに大変です』


『カンタです。息子と無事会えました!今も一緒です。そっちは皆さん元気でお過ごしですか?』


『ミレイユだ。いや、地球が激オコで大変よ。そっちはどお?』


『アネだけど。地球が異世界染みてきてるのよ。どうなってるのかしら。そっちは普通に、異世界?やだ、私ってば何言ってるのかしら。カオるんに感化されたのかしら、いやねぇ』


『ゆうごです。婆ちゃんと会えました。元気です』





 アリサから返事が来た!


 次の商品補充と共に、保管倉庫にはアリサからの手紙が入っていた。



『良かった!よかった! 元気そうで良かった、お父さんとちゃんと会えて良かった!お父さんとマルクが一緒で良かった』



 アリサからの手紙は『良かった』の文字で埋め尽くされていた。そして紙がゴワついていたのは涙がいっぱい落ちたのだろう。

 読みながらマルクも俺も泣いてしまった。アリサ、置いていってごめんな。




 それから立て続けに手紙が入り始めた。


 あっちゃんから、山さんから、パラさんからリンさんからも。

 ユイちゃんやキックやレモンさん、やまと屋の皆からもだ。


 あっちゃんからは相変わらず怒られる文面で始まり、心配する文で埋め尽くされて最後も心配で締められていた。

 どんだけ俺って頼りなく思われていたんだよ。読みながら泣き笑いになった。




 ゲーム内のナヒョウエの保管倉庫で、頻繁に手紙のやり取りが行われた。

 個人宛であったり、皆宛であったり。


 皆宛の手紙には、お互いの状況をみっちりと書き連ねた。

 あ、俺は書いた後に誤字脱字のチェックをキヨカにしてもらった。結構赤ペンの修正が入り落ち込んだ。


 タウさんは、パラさんへ魔法書を融通してもらえないか頼んでいた。パラさんから即レスが来たそうだ。



『とりあえず欲しい物を書き出してみてくれ。ダンジョンドロップは何が出るかわからない、ある物はすぐに送る。他は出次第だ』



 流石パラさんだ。きっとリンさんやキック達も一緒にダンジョンに潜ってくれているんだろうなぁ。



「お返しに送れる物が無いのが心苦しいですね」


「そうですね。あちらならB2でセボンもマッツも買い放題でしょうから。僕らの元にある物も今はあちらの方が豊富にあるでしょうね」


「大丈夫だよ。パラさん達は見返りなんて気にしてない。もしも逆なら? もしもこっちが物資豊富な世の中だったら見返りなんて考えずに送るだろ?」


「そうですね、その通りです。有り難いと言う気持ちでお受けしましょう」

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