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246話 国外①

 大雪山拠点で会議が開かれた。定例会議だ。別に事件が起こったわけではない。


 各拠点もそれなりに回っているようで、お互いに遊びに行ったり遊びに来たり。

 まぁそれが出来るのもテレポリングかエリアテレポートのおかげなのだが。



 会議ではまず問題点が無いかの確認だ。と言っても問題が発生した場合はリアルタイムで連絡が入り動く手筈になっているので、定例会議まで持ち込む事はない。

 早期発見早期対処だ。



 それからブックマークの共有を行う。新規ブックマーク先を報告して、必要そうな先は血盟主の共有ブックマークにする。



 その後は、雑談にはいる。

 ゲーム内では種族もレベルも異なるので、一緒に行動する事が少ない。なので、この定期会議はいわば『定期オフ会』のような感じだった。



「そう言えば最近ゲーム内に外国の人見かけますね、あれ、日本人じゃないと思うんですが日本国内に居る外国人さんかな?」


「ああ、チャットがカタコトのやつ、たまに見かけるな」



 そうなんだ?

 俺はゲーム中はチャット欄まで見る余裕がない。ゲームキャラを街の中で立たせた状態でようやくチャット欄を読める。


 と言っても知り合いはリアル念話を使うので、知らんやつのチャットまではほぼほぼ読まない。




「隕石落下前に帰国出来なかった人かなぁ」


「元から日本に住んでた人かも知れませんね」


「金のあるやつは帰国出来ただろうけど、出稼ぎ連中は日本にいるしかないからな」


「その人達もLAFを始めたって事ですか?」



 今は自衛隊が各地にパソコンを設置してエルフ化活動をしているからな。日本に住んでる外国人もLAFをやっても不思議じゃない。



「んー……、国内だけじゃないかも知れませんよ」



 ゆうごが何か考え込みながら言葉を探している。タウさんはピンときたように頷いた。



「ああ、なるほど」


「元々LAFは海外からの接続も可能でしたから。ただ、接続があまりに不安定なので海外サーバーを経由した日本鯖へのログインは少なかったですね」


「ああ、あれか。荒らしに来たやつらがラグで固まって逆にボコられてるやつな」


「ジャパンサーバーでサービス開始直後はよく海外からの荒らしが出ていましたね」



 そうなんか、全然知らんかった。



「カオるん、たまに絡まれて殺されてたじゃないか、覚えてないん?」


「ん?ああ、あれは俺が最初に踏んだせいかと思ってた」



 皆が一斉に笑い出した。



「わはははは、そりゃないわ」

「いくらカオさんでもプレイヤーは踏まないでしょw」

「わからないわよwカオるんだもの。踏むわよ」


「カオるん、あれは海外プレイヤーがジャパンサーバーを荒らしに来ていたんですよ」


「あいつらも可哀想になw ボコった相手に気づかれてないとはなw」


「カオさんは大物すぎです」


「凄い!お父さん、流石だね!」


「うちのクランマスターですからね」



 マルク、春ちゃん、やめて……。照れるべきか恥ずかしがるべきか。とりあえず下を向いておこう。

 ひとしきり笑った後にゆうごが話を続けた。



「最近見かけるようになったのは海外経由っぽいんですよ。動作にラグがあるしチャットも固まりがちです」


「LAFの情報が海外に漏れてるって事か?」


「日本から漏れたのか、それとも海外LAFでも異世界に転移した人が戻ってきたのか」


「そっか。向こうに異世界戻りがいてもおかしくない」


「でもそれと日本鯖に来る事とは別じゃない? 異世界戻りが居てLAFを拡めているのなら自分の国ですればいいのだし」


「そうなんです。それが気になってます」


「そうですね。自国ではなく何故、日本に……」


「あれ? ちょっと待ってくれ。小型基地を設置してようやく国内でも繋がるようになったとこじゃないか。国内でもまだ通じないところが残ってるのに何で海外から来れるんだ?」



 一瞬皆が静まった。



「……恐らく特殊な通信とかを使っているのでしょうね」



 特殊な通信?なんじゃそれ。



「衛星とかを利用したものでしょうか」


「自衛隊あたりは使用していそうですね」


「……海外とか、どうなっているんでしょうね。今回の災害で打撃を受けたのは日本だけではないはず」


「逆に災害を受けていない国を探す方が大変だなぁ。運良く免れた小さい国もあるかもしれないがどうだろな」


「輸入に全く頼らず生きていた国は、何とか生き残っていけるのかなぁ」


「ゾンビ化とかって日本だけか?」


「そうでした、それもありましたね。どうなんでしょうね、知りたいような知りたくないような……」



 俺は災害前からスマホもパソコンも使いこなしてなかったからよくわからないが、職場で海外のマップを見てたやつがいたな。

 なんだったかな、名前……。あ、ググールだ、ググールマップン。



「衛星とかよくわからねぇけど、ググールマップンとかで他の国を見れないのか?」


「ググールかぁ」


「ダメですね。隕石のせいなのか、それともその後の災害のせいかわからないですけど、上からの画像は見れないです、個人では無理ですが自衛隊ならどうだろう」




 そんな話で定例会議は終わった。

 俺はトマコに帰還した後、ゲームに荒らしが居るかも知れない旨を拠点内に通達してもらった。


『喧嘩厳禁。仲良くね』




 その数日後だった。

 自衛隊からタウさんへ連絡が来たのだ。大雪山拠点に集合がかかった。



「これ、なに会議? 緊急?」


「緊急……ではないみたいだぞ?」



 本部の会議室には皆集まっていた。俺とミレさんが少し遅れた。



「すみません、先日定例会議を開いたばかりですが、念話で済ますより集まった方が早いかと」



 タウさんの注釈で始まった会議の内容は、先日の会議で少しでた衛星通信の話だった。


 自衛隊からの連絡で、衛星アンテナの接続が復活したそうだ。


 それにより、LAFジャパンに海外勢が流れ込む可能性が高い、との事だった。

 LAFやエルフの事も別に国内では普通に情報は出回っている。国内のどこかにいた外国人から、そいつの国へ情報が流れても不思議じゃない。



「問題はいくつかあります。まずは海外勢によりLAFのサーバーが重くなる可能性、当然揉めたりの荒事も増えるでしょう」



 うわぁ、気の荒いやつらが増えるのか。トマコ拠点のゲーム室に標語を貼ったばかりだ。

『喧嘩厳禁 仲良くね』


 標語を変えるか。

『先手必勝 逃げるが勝ち』うんうん、それに変更しよう。あ、あと、

『踏んだら負け』



「鯖が重くなると落ちる危険があります」



 会議には茨城からキングジムも来ていた。



「とりあえずの措置として、マースサーバーは国内以外からの接続が出来ないようにしました。他の3サーバーは今まで通りです」


「ジムさん、大雪山サーバーはどうなっていますか?」



 ああ、なんか道内にサーバーを新設中とか言ってたな。



「はい、ほぼ完成していますが、接続はしていません。現在テスト中です。タウさんから言われてそこを大雪山サーバーとしてマースと繋ぐ予定です。出来れば外国勢が来る前に完成させたかったのですが、通信が繋がってしまった以上、大雪山は一旦ストップしています」


「引き続きストップの状態で様子見をお願いします」



「衛星通信が繋がると他に何か問題があるんか?」


「私達に直近の問題はLAFだけですね。ゲーム以外は、問題とは言えないのですが海外の情報が見え始めました」



 海外の情報……、隕石落下からの大災害。日本だけでないだろうあの大災害が、どこの国を襲ったのか。



「酷いですね。ネットで入ってくる情報は、まだネットが繋がる程度の被害でしかなかった国です。ネットも繋げられない、それくらい酷い国も多いそうです」



 タウさんは自衛隊から見せられたそうだ。上空から写した写真を。



「世界地図が、変わりますね……」



 ひと言言ったきり口をつぐんだ。日本だって形が変わったよな。太平洋沿岸部が削られて細くなったと言ってた。九州地方がどうなったのかも知らない。


 世界を上空から見たと言う事は、日本も上から見たのだろうか。



「ネットの書き込みは個人からのhelpがほとんどのようです。海外は政府が機能しているのかも不明ですね。まぁ、日本も似たようなものですが。自衛隊や警察、消防が機能してくれているので日本はまだ保っていられる感じですね」



 だろうな、海外では大金持ちのみがシェルターで助かってる、それ以外は生き残りが物資を奪い合ってるイメージだ。勿論、世界中がそうだとは言わない。



「自衛隊では、こちらで掴んだ半ゾンビの情報も海外へと流すそうです。先日呼ばれてそれについての了承を求められました。皆さんに相談する前に私の一存で了承しました。申し訳ありません」


「いや、どうせどっかから漏れてるだろ?今更だよ」


「そうよ、それに私達にはその情報を止める権利はないわ」


「そうです。別にそれを海外に流したからと言って僕らに不利になるわけではありませんから」



「ありがとうございます。ですが問題がもうひとつ。海外からここ北海道の拠点を狙ってくるやつがいるかもしれない。母国の為に何をするかわからない、その危険があります」


「ああ、隣の国かぁ。拉致好きだもんなー」


「はい。それで各拠点に自衛隊の部隊を配備したいと言われました」


「別にどっちでもいいけど。札幌に来たければ来れば?部屋はあるわよ」


「と言うか既に地元の駐屯地とも仲良くやってますしね、今更です」


「どうせアイツら、あ、自衛隊じゃなくて人攫いの方な、来るときゃ来るんだ。俺らはテレポで逃げられるが家族にはスクロールを持たせとくしかないな」


「身内にリアステが表示してない人が居たら、その人達を率先してカオまみれにしようぜ」



 え、何、俺まみれ???



「鑑定スキルがあればいいんですが、LAFにはなかったんですよね」


「カオるん、鑑定スクロールないの?」


「無い。解析スクロールはある。モンスターの解析、弱点とか出る。でも手持ち少ないんだよ。ゲームじゃ使わなかったからなぁ」


「魔法はないですか? 鑑定魔法」


「無いなー。………それっぽいのだと、かなり違うけどディテクションかな。隠れてる敵を見つける」

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