222話 ゾンビとは④
俺たちは苫小牧拠点のゲーム部屋でLAFをやっていた。
カンさんの作った小型基地のおかげで茨城のサーバーともスルスルと繋がるようになったからだ。
拠点の仲間達もゲーム部屋に集まっていた。それぞれがレベル上げをしていたはずなのだが、気がつくと『闇の荒地』には、苫小牧拠点の仲間達が集まり、ゾンビに追われたり、追いかけたりして楽しんでいた。
「経験値は美味しくないかもしれないが、ドロップは良いからな」
「そうだな。コイン、魔石、それと強化スクロールも出てる」
「ホントだ。いつの間に……」
「パーティ狩りだと、誰かが出すと全員にドロップが入るからな。昔、俺が始めた頃は、ドロップは敵に打撃を与えたプレイヤーに出るか、地面に落ちるかだったんだ。だからWIZはドロップもほぼ無かったなぁ。途中で仕様が変わったんだよ」
「そうなんですね。確かに強い者ばかりがドロップを貰えるのはパーティの意味がないですね」
「うん、経験値もさ、打撃の割合で計算されてたみたいで、WIZは経験値もあまり貰えなかったんだよな」
「酷い……。なんでWIZにそんなに冷たいの」
マルクがちょっと涙目になってた。スマン、夢を壊しちまったか?
そんな感じの日々が続いた。
拠点の作業や訓練(何の訓練か、俺は知らん。生活魔法体操とは別と言ってた)、それからゲームでのレベル上げとスキル習得。
レベル45を超えてセカンドを育成し始めていた。
何故か皆、セカンドはウィズをとっている。エルフの育成は45までならさほど苦労をしなかったと思うが、ウィズは辛いぞ?
特に45クエストがな。
「えっ?知ってる?」
知っててウィズを選ぶとは、皆、Mだな。
「お父さん、えむってなぁに?」
「ん?ああ、ええーと……、アルファベットのMで、ま、ま…魔法使いのMだ! そうだ、魔法使いの事だぞ?」
遅れてトマコ拠点メンバーになった者達も着々とエルフ45をクリアしてウィズを育成していた。
強制はダメだぞ?ファーストのエルフは強制だが、その先は自由だからな?
「大丈夫ですよ、カオさん、俺ら猛者揃いですから」
笑い飛ばしていた河島達だが、それでもそこそこ苦労はしていた。うん、ウィズは弱っぴキャラだからな。けど楽しいから苦労ではない、そうだ。
それならいい。世の中がこんなで辛い事だらけだからな、ゲームくらい楽しくなくちゃ。
カンさんは相変わらず作業部屋で『小型基地』を作っている。それでも朝晩の食事は一緒に摂っていた。
そんなある日、タウさんから茨城へ集合の連絡が来た。茨城の病院拠点の棚橋ドクターから連絡があったそうだ。
「ゾンビウイルスのワクチンが出来たんでしょうか?」
「そうだと……いいな」
俺達は茨城の洞窟拠点本部へテレポートした。今回はカンさんにも招集がかかった。
本部に集まったのは、タウさん、ミレさん、アネさん、ゆうご、カンさん、俺、マルク、キヨカだ。
「皆さんの近況をお聞きしたいところですが、まずは今回招集した件についてお話しを、ドクターからお願いします」
本部には棚橋ドクターも居た。
「ええと、ゾンビの感染源やワクチンについては申し訳ないですが、まだです。今回集まっていただいたのは、感染後の話です」
「感染後、まさか、死んだ……とか、ですか?」
ゆうごの言葉にヒヤっとした。俺の『清掃』後に死んだとか………えぇぇぇぇ。俺の責任……。
「あ、違います。生きてます」
棚橋ドクターが慌ててたが、俺を見た事が気になった。何だよ、言ってくれよ。
だが、棚橋ドクターより先にミレさんが口を開いた。
「感染後? なんだ?実は完治してなく、またゾンビになったとかじゃないよな?」
うっ、そう言う事か。俺の清掃では綺麗に出来なかったって事か。俺がしょんぼりした事に気がついたミレさんが慌て言い直した。
「あ、いや、完治後にまた感染したのか? そうだよな、インフルエンザもワンシーズンに2回かかった社員がいたぞ?」
「それはA型とかB型で、元々別のウイルスよね………えっ、まさかゾンビウイルスにもA型B型があるの?」
「ゾンビA型、ゾンビB型……」
「皆さん、落ち着いて。棚橋ドクターの話を最後まで聞いてください」
タウさんの仕切りで場が静まった。
「あのですね、ゾンビウイルスに感染中だった黄色点滅者ですが、カオさんの『清掃』後に黄色の点灯に戻りました。現在も1時間おきに確認中でちゃんと点灯しています」
うんうん?じゃあ、治ったって事だよな?何が問題なんだ?
「彼ら彼女らが生活魔法を使えるようになりました」
うん?別に問題ないだろ?
生活魔法はリアルステータスに関係なく、使えるようになる者は出てたよな?
特に洞窟拠点には結構居たはず。
ゾンビが生活魔法を使ってたらビックリする。
「あ、自分、綺麗好きなんで…」とゾンビが水出して手を洗ってるとこを想像しちまった。ないないない。
が、点滅者は完治して普通……の人間に戻ったんだよな?生活魔法が使えても別にいいよな?
「清掃から3日後、全員に生活魔法が発現しました。健康体での入院は退屈だろうと、3日目の夕方に屋上で『生活魔法体操』をやっていただいたところ、全員の手のひらから水がボトボトと。屋上が水浸しに……あ、それはどうでもいいか」
「ドクターから連絡を頂き、北海道のサンバさんにも急ぎ連絡をいたしました。あちらの駐屯地でお預かりしていただいてる点滅清掃者がいましたからね。……向こうでも同じ現象が見られたそうです」
「点滅者は、つまり、完治すると生活魔法が使えるって事か?」
「一度人間をやめたって事だろうか」
「カオるん、それだと俺らも人間じゃなくなるぞ?俺らも生活魔法使えるからな」
「あ、そっか」
「でも! カオさんの言う事はあながち間違ってない気がします! 『旧世代の人間』から進化した『新世代の人間』へって事じゃないですか? だって僕ら異世界から戻ってもこの力やスキルがあって、もう前の自分じゃないですよね」
「そうですね。私達は明らかに人間離れしている。その私達が点滅者が生活魔法を使えた事で化け物扱いはおかしい」
そもそもが、『そこから』だよな。
俺達は地球が無くなりかけた寸前に神様のような謎の存在、まぁ『神様』でいいか、その神様に異世界へ飛ばされた。
スキルや力を貰って、その世界でも生きていけるようにと。
けど、地球が終わらない(よくわからない何かがあったとかなんとか)で、俺らはまた神様に地球に戻してもらえた。
俺達は、力を失っていなかった。
だからこそ、この大変な状態の地球でやってこれた。
「カオるんっ!ちゃんと口に出して話してくださいっ!」
うわ、ビックリした。タウさんに怒られた。




